コクワガタ
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この項目では、昆虫のコクワガタについて説明しています。オオバコ科の植物については「クワガタソウ」をご覧ください。

コクワガタ
コクワガタの成虫♂(2007年6月)
分類

:動物界 Animalia
:節足動物門 Arthropoda
:昆虫綱 Insecta
:コウチュウ目 Coleoptera
亜目:カブトムシ亜目 Polyphaga
上科:コガネムシ上科 Scarabaeoidea
:クワガタムシ科
Lucanidae
:クワガタ属
Dorcus
亜属:コクワガタ亜属
subgen. Macrodorcus
:コクワガタ
D. rectus

学名
Dorcus (Macrodorcus) rectus
(Motschulsky1857)
樹液に集まるコクワガタ♂45ミリ(撮影:東京 5月)

コクワガタ(小鍬形、Dorcus rectus)は、コウチュウ目クワガタムシ科クワガタ属コクワガタ亜属の1で、5亜種に分類されている。日本クワガタムシでは最普通種である[1]

種小名のrectus とは「真っすぐの」という意味である。
形態

日本産クワガタムシの最普通種[1]。「小さなクワガタ」という意味の和名だが、日本のクワガタムシの中では中型程度である[1]

体長は♂30 - 58.1mm、♀が20 - 38mm。

他のクワガタ属と同様に体は上下に平たく、黒い体色をしているが、赤褐色を帯びるものもいる。オオクワガタヒラタクワガタに比べると体幅が狭く細いが、頭盾はヒラタクワガタより幅広い。

オスの大顎はオオクワガタやヒラタクワガタに比べて細長く、前方に伸びる。大アゴの中央から前方1/3くらいの位置に内歯(内側のトゲ)を1対だけ有し、先端にもとても小さい内歯を1対持つ。小さなオスではこれらの歯は消失する。オスの頭部背面、前胸背板、上翅は全体に密で浅い艶消しがあり光沢は弱い。内歯が全て消失した小型個体はかつて「ヒメクワガタ」の和名を与えられ別種と考えられていた。

メスの場合は前胸背板にやや強い光沢を持ち、上翅の縦縞は平行となる。同じコクワガタ亜属のスジクワガタ D. striatipennis やネブトクワガタなどとよく似ていて混同されることもあるが、オスの大アゴに歯が1つしかないこと、前翅に線がないことなどで区別できる。またネブトクワガタは本種とは大きく生態が異なり、幼虫は主としてシロアリが食害した腐植質を餌とする。
分布

日本・朝鮮半島中国台湾

東アジアに広く分布し、日本でも北海道から九州まで全国に分布する。
生態

個体数は他種のクワガタムシよりも多く、見かける機会は最も多いと言える。主にクヌギコナラなどで構成される雑木林や里山、森林・山間部沿いの河川敷のヤナギアキニレ林に生息している。平地性のクワガタムシの代表格であるが、本種は他のクワガタムシの少なくなるブナ・ミズナラ帯などの高標高地にも生息しており、圧倒的な生息数・環境への適応力を誇る。森林だけでなく、街路樹や公園の樹木などの都市部の小規模な緑地でも見られることがあり、付近のマンションやビルの外灯に向かって飛んで来ることも珍しくない。ノコギリクワガタと並び、日本のクワガタムシの中では最もなじみ深い種類である。木を蹴ると落ちて来て擬死をするので、採集も容易である。

 野外では、成虫は5月から10月中旬ごろまで活動し、おもにクヌギ・コナラ・アベマキカシ・ヤナギ・ハルニレアキニレアカメガシワシラカシオニグルミニセアカシアなど多様な広葉樹の樹液に集まり、樹液以外にも熟した果実などに集まることもある。樹液を出す樹木の少ない山間部などでは、メスがヒメオオクワガタアカアシクワガタの様に樹皮を削り、自ら樹液を出す行動を取ることもある。他にも朽木の中に潜んでいたり、夜間に灯火に飛来したりする。特に越冬明けの春から初夏に飛来することが多い。夜行性だが、オオクワガタやヒラタクワガタほど徹底している訳ではなく、昼間にも活動する。樹液の他には、産卵木である広葉樹の朽木の上や、木の洞や樹液の出ている木の根元や土中でも見つけられることがある。コクワガタ♂45 mm (撮影:東京 5月)

幼虫は広葉樹の朽木に穿孔し、その材を食べて成長する。クスノキのような殺虫成分を持たなければ食樹の樹種は問わない。クスノキであっても腐朽の進行により殺虫成分が減衰していれば、しばしば穿孔している。稀ではあるが針葉樹であるマツの朽木から発見される例もある。野生下では孵化から化にまる1年かかるのが普通であるが、寒冷な環境では1年かかることもある。蛹の期間は約3週間。羽化した成虫の成熟には1か月を要するが、夏から秋に羽化した場合、そのまま越冬して翌年春に活動を開始する場合が多い。

一旦野外活動を開始した成虫は、一部の個体はその年に一生を終え、残りの個体はそのまま越冬する。しかし越冬した個体も大半は翌年夏に一生を終え、再越冬する個体は僅かである。また当期の夏を生き抜き、運良く越冬準備に入れた個体も体力的に衰えを迎え、寒さに耐えきれず越冬中に死亡するケースも少なくない。コナラの樹液にて(5月 東京)

幼虫



成虫
コクワガタ(メス)交尾するコクワガタ(撮影地:東京)
分類

本種は5亜種分類されている。八丈島屋久島三島村トカラ列島にそれぞれ別亜種が知られており、どちらも原名亜種よりも赤色が濃い。
コクワガタ・原名亜種
Dorcus rectus rectus (Motschulsky, 1857)北海道本州四国九州から五島列島など、朝鮮半島・中国・台湾。♂30 - 58.1mm、♀20 - 38mm。体色は黒色から黒褐色。
ハチジョウコクワガタ
D. r. miekoae (Yosida, 1991)八丈島。オス23 - 49 mm、メス23 - 28 mm。大型個体では内歯より少し上の部分の幅が広い。
ヤクシマコクワガタ
D. r. yakushimaensis Tsuchiya, 2003屋久島種子島馬毛島甑島列島。オス21.5 - 50 mm、メス21.5 - 30 mm。赤褐色で光沢が弱い。
ミシマコクワガタ
D. r. mishimaensis Tsuchiya, 2003三島村男女群島口永良部島。オス18.5 - 49 mm、メス20.5 - 31.5 mm。全体的に ほっそりしている。コクワガタの交尾の様子(撮影地:東京 5月)
トカラコクワガタ
D. r. kobayashi (Fujita et Ichikawa, 1985)トカラ列島中之島諏訪之瀬島など)。オス23 - 50.5 mm、メス24 - 28 mm。赤褐色で光沢が強い。
近縁種

日本には、近縁種のスジクワガタとリュウキュウコクワガタが知られており、本種と同じく、幾つかの亜種に分かれる。
スジクワガタ Dorcus striatipennis
日本全土に分布している。コクワガタに似ているが、体型が若干細長く、オスの体長は平均10ミリ近く小型で、大顎の内歯がやや二股に分かれており、遺伝系統的にはオオクワガタ類よりもヒラタクワガタ類に近いとされる。和名の由来は雌や小型の雄の上翅の点刻が列状につながって並んでいるためであるが、大型の雄になるほど点刻が浅くなり不明瞭となる。体長は14 - 39 mm。


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