この項目「コクセター群」は翻訳されたばかりのものです。不自然あるいは曖昧な表現などが含まれる可能性があり、このままでは読みづらいかもしれません。(原文:en:Coxeter group
03:41, 11 August 2011)数学においてコクセター群(コクセターぐん、英: Coxeter group)とは鏡映変換で表示できる抽象群のことである。ハロルド・スコット・マクドナルド・コクセターに因んで名づけられた。有限コクセター群は何らかのユークリッド鏡映群(たとえば一般次元正多胞体の対称変換群など)になっている。もちろん、すべてのコクセター群が有限群とは限らないし、すべてのコクセター群をユークリッド的な鏡映や対称変換として記述できるわけでもない。コクセター群は鏡映群の抽象化として導入され(Coxeter 1934)、有限コクセター群の分類は完了している(Coxeter 1935) 。
コクセター群は数学のいくつもの分野に現れる。一般次元正多胞体の対称変換群や単純リー代数のワイル群は有限コクセター群の例であり、ユークリッド平面や双曲平面の正則三角形分割 (regular tessellation) に対応する三角群や無限次元カッツ-ムーディ代数のワイル群は無限コクセター群の例である。
コクセター群に関する標準的な文献としては (Humphreys 1990) や (Davis 2007) などがある。 生成系 S をもつ群 W がコクセター群である、または組 (W, S) がコクセター系 (Coxeter system) であるとは、以下の3条件がすべて満たされるときにいう。 ただし、ms,t = ∞ は s と t の間に関係がないことを表す。これは次のように書く事もできる。 また、S = {x1, x2, ..., xn} とすれば以下のように表示できる: W = ⟨ x 1 , x 2 , … , x n ∣ x i 2 , ( x j x k ) m j , k ⟩ {\displaystyle W=\langle x_{1},x_{2},\ldots ,x_{n}\mid x_{i}^{2},\,(x_{j}x_{k})^{m_{j,k}}\rangle } ただし、i, j, k = 1, 2, ..., n かつ mi,j (i ≠ j) は 2 以上の整数か ∞ である。 (W, S) がコクセター系であるとき、生成系 S に属する元の個数 |S。をコクセター群 W の階数 (rank) といい、rank W と表す。また生成元の部分集合 J ⊆ S で生成されるコクセター群 W の部分群 WJ もコクセター群になる。このような部分群 WJ を放物型部分群という。 G が S を生成系とするコクセター群であるとき、(st)ms,t = 1 となるms,t (s, t ∈ S) を成分とする |S。次の対称行列 M = ( m s , t ) s , t ∈ S {\displaystyle M=(m_{s,t})_{s,t\in S}} をコクセター行列 (Coxeter matrix) (あるいは行列要素 ms,t を 2 変数の関数と見て、コクセターデータ)という。ただし、s ∈ S に対して ms,s = 1 である。コクセター行列が与えられたとき、コクセター図形 (Coxeter graph, Coxeter diagram) と呼ばれる図形が という手順で定まる。逆に、コクセター図形が 1 つ与えられれば、コクセター行列を復元することができ、したがってコクセター群が一つ定められる。すなわち、コクセター群を与えること、コクセター行列を与えること、コクセター図形を与えることの三者は等価である。 コクセター図形が 2 つ以上の連結成分に分かれるとき、対応するコクセター群は各連結成分に対応するコクセター群たちの直積に分解される。連結なコクセター図形あるいはそれに対応するコクセター群は既約であるという。 Sn+1 を n + 1 次対称群とする。n 個の互換 si = (i, i + 1) (i = 1, 2, 3, ..., n) をとると Sn+1 は {s1, s2, ..., sn} を生成系とするコクセター群となる。 また二面体群もコクセター群である。 コクセター群は鏡映群 鏡映群からこのようにして得られる抽象群はコクセター群であり、逆に鏡映群をコクセター群の線型表現とみなすことができる。有限コクセター群に対しては、この対応は(函手として)完全である。つまり、任意の有限コクセター群はある次元のユークリッド空間における有限鏡映群としての忠実な表現を持つ。一方、無限コクセター群は必ずしも鏡映群として表現されるとは限らない。 歴史的には (Coxeter 1934) で任意の鏡映群がコクセター群であること(すなわち任意の鏡映群に対して、基本関係が ri2 または (rirj)k で尽くされるような表示ができること)が示されており、実際この論文でコクセター群の概念が導入されている。逆に (Coxeter 1935) で有限コクセター群が必ず何らかの鏡映群として表現できることが示されており、したがってこれで有限コクセター群の分類は終了している。 有限コクセター群のコクセター-ディンキン図形
定義
S は対合からなる: s ∈ S ならば、必ず s2 = 1 が成り立つ。
組み紐関係式 (braid relation): s, t ∈ S が s ≠ t であるならば、2 以上のある整数(または ∞)ms,t で (st)ms,t = 1 となるものが取れる。
それ以外に生成元の間には関係がない。
s ∈ S ならば s-1 = s が成り立つ。
s, t ∈ S で s と t が相異なるとき、s と t には関係が無いか、関係がある場合には次が成り立つ; s と t を交互に ms,t 個並べる方法が 2 通りあるが、そのいずれも同じ元を定めるような 2 以上の整数 ms,t が存在する。stststst… = tstststs… (両辺とも因数の数は ms,t 個)
生成元はそれ以外に関係式を持たない。
各生成元 s ∈ S に対応して、|S。個の頂点を打つ。
ms,t = 2 ならば何もしない。
ms,t ≥ 3 ならば s, t に対応する頂点を辺で結び、辺に ms,t の値を記す。
例
鏡映群との関係詳細は「鏡映群」を参照
有限コクセター群有限コクセター群のコクセター図形
分類
具体的には、有限コクセター群は階数をひとつのパラメータとする三つの無限族 An, BCn, Dn と二次元で一つのパラメータを持つ族 I2(p) がひとつ、さらに六つの例外群 E6, E7, E8, F4 H3, H4 のいずれかとなる。
ワイル群詳細は「ワイル群」を参照
有限コクセター群は全てではないにしろほとんどがワイル群であり、逆にすべてのワイル群はコクセター群として実現できる。ワイル群となるのは無限族 An, BCn, Dn の各群と例外群 E6, E7, E8, F4 および I2(6)(ワイル群の記法でいうところの G2)であり、ワイル群とならないのは例外群の H3, H4 および無限族 I2(p)(ただし、この中に別のワイル群と一致するものがあるが、それを除く。具体的には I 2 ( 3 ) ≅ A 2 , I 2 ( 4 ) ≅ B C 2 , I 2 ( 6 ) ≅ G 2 {\displaystyle I_{2}(3)\cong A_{2},\quad I_{2}(4)\cong BC_{2},\quad I_{2}(6)\cong G_{2}}
が除外される)。
このことは、有限群の場合に限ってコクセター図形と(無向)ディンキン図形とを比較することによって示される。きちんと言えば、コクセター=ディンキン図形はディンキン図形から辺の向きを忘れて、二重辺は 4 でラベル付けられた辺に、三重辺は 6 でラベル付けられた辺に取り替えることによって得られる。もうひとつ留意点として、任意の有限生成コクセター群がオートマチック群 (Automatic group) であること[1]である。ディンキン図形には、辺のラベルとして 2, 3, 4, 6 しか付けられないという制限が追加されることになる。幾何的にはこれは結晶構造制限定理[訳語疑問点] (crystallographic restriction theorem) に対応しており、事実としては、空間充填(あるいは平面充填)のできない多面体(あるいは多角形)が除かれる(たとえば H3 は正十二面体あるいは双対である二十面体に対応するが、これは空間を充填することができない。また、H4 は正120胞体またはその双対である正600胞体が対応するが、これも4次元空間充填不能である。I2(p) は正 p-角形が対応するから、これも p = 3, 4, 6 の場合を除いて平面を敷き詰めることはできない(正三角形、正方形、正六角形ならば充填可能である)。
更なる留意点だが、(有向)ディンキン図形 Bn および Cn は同じワイル群を(したがってコクセター群も)生じる。これは、これらが「有向」グラフとしては異なるが、「無向」グラフとしては一致するためである。