コククジラ
保全状況評価[1][2][3]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
ワシントン条約附属書I
分類
コククジラ(克鯨[7]、学名: Eschrichtius robustus)は、哺乳綱偶蹄目[注釈 1]コククジラ科[注釈 2]コククジラ属に分類されるヒゲクジラである。本種はかつては北半球の広範囲に分布したが、北大西洋では18世紀に絶滅し、北太平洋においてもアジア系個体群も一度は絶滅したか、または少数が生存しているという状況にある[8][9]。
名称スパイホッピング
日本語では、別名として「コクジラ」[注釈 3]という表記が存在し、これらは「クジラとしては小柄」である点に由来するともされている[7]。
また、古くには「稚児鯨[注釈 4]」「青鷺[注釈 5]」「シャレ」「シロサキ」などの呼称もみられ、捕鯨業者は「外見上の特徴」や「油の色」から「青鷺」と「シャレ」と「シロサキ」を使い分けて区分していたとされる[10][11]。
韓国語では、民間伝承における超自然的な描写や、浅瀬でスパイホッピングなどの浮き沈みを繰り返す様から「鬼神鯨」または「幽霊鯨」という意味の呼称である「????」が通名として用いられている[12][13]。
英語では、捕鯨時代には「悪魔の魚[注釈 6]」とも呼ばれたが、これは人間による捕殺に抵抗し、とくに子供を守ろうとする母鯨が激しく暴れたことに由来するとされる[14]。
18世紀までは北大西洋にも本種が生存しており、本種を指す英語での表記として「Scrag Whale」や「Scragg Whale」というものがみられた。 コククジラの系統については長らく議論されてきた。 上方へと湾曲した吻の形状からセミクジラ科と近縁であるとする意見も出される一方、祖先的な形態を留める事からケトテリウム科と近縁であるとする説もある[15]。しかしSINEを使用した遺伝子解析においては、ナガスクジラ内の3系統と挿入パターンの矛盾が見られる。これは、祖先多系[注釈 7]を保った状態のまま、急激に四つの系統に分化した事を示している[注釈 8][16]。 これらのことから、コククジラの分類は見直される可能性が示唆され、2019年の分子系統解析では完全にナガスクジラ科に内包されることが明らかになった[注釈 9][17]。 なお、比較的に知名度の高い近縁種としてアキシマクジラ(英語版
分類
形態ブリーチング
上記の通り、本種はヒゲクジラ類としては比較的に小柄な部類であり、成獣は体長が12 - 15メートル、体重12 - 40トン[5][18]になる。
背鰭はないが、背から尾柄の背面にかけて複数の隆起がある[5][18]。腹面に平行に入る細い溝(畝)はないが、下顎に2 - 4本の溝がある[6]。体色は灰黒色で、不規則に灰色の斑紋が入る[5]。皮膚の表面には、フジツボ類やクジラジラミ類が着床している個体が多い[6]。
ヒゲクジラ類としては例外的に下顎よりも上顎の方が長い[6]が、一方で採餌様式から下顎も発達している[19]。口の中のクジラヒゲは左右に140 - 180枚ずつ存在する[5][6]。
(人間の概念に当てはめれば)ほとんどの個体が「右利き」であり、採餌時に体を右側に傾けるために右側のクジラヒゲがより摩耗して短くなっている事例が多く、またそれに影響されて、フジツボなどの寄生生物の付着量も体の左右側のどちらか一方に偏向している傾向にある[20][21]。
後述の北米沿岸に存在する「レジデント」は、より長距離の回遊を行う個体よりも概して小柄であり、また、頭骨や尾びれも小型化している[22]。
生態採餌方法の構図波打ち際や干潟などの浅瀬を好み、陸上からも頻繁に観察できる(ヌートカ湾)。磯で採餌する個体(ヤクイナ岬)。
本種は現生のヒゲクジラ類では特に底生生物の採餌に特化しており、本種の沿岸性の強さの理由の一つにもなっている。