この項目では、コウイカ目の一種 Sepia esculentaについて説明しています。コウイカ目の総称としてのコウイカについては「コウイカ目」をご覧ください。
コウイカ
コウイカ
保全状況評価
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
Sepia hoyley Ortmann, 1888
和名
コウイカ
英名
golden cuttlefish
コウイカ Sepia esculenta(甲烏賊) は十腕形上目(イカ類)コウイカ目に属する頭足類の一種である。日本近海において最も普通のコウイカ類で[1]、水産上重要である[2]。他のコウイカ類と同様に外套膜に囲まれた胴体の背側に、石灰質の甲を持つ。
和名 Sepia madokai Adam, 1939 と混同され、本種もハリイカと呼ばれることがある[4]。逆にハリイカ S. madokai の方はコウイカモドキとも呼ばれる[5][6]。ハリイカは胴の先端に硬い甲殻の針(棘)が突き出ているためだとされる[7]。その他、スミイカ(墨烏賊)やマイカ(真烏賊)と呼ばれることも多い[1][8][7]。「スミイカ」は墨袋(墨汁嚢)が発達しているためだとされる[7]。「マイカ」は混称で、その地域の主流のイカを意味しており[9]、地域によりスルメイカ[9]やケンサキイカ[9]、シリヤケイカ[10]もこの名で呼ばれることがある。河野 (1973) では、「コウイカ」を「胴の中に舟形をした骨があるイカの総称」とし、本種を「マイカ(真烏賊)」、別名に甲があるため「甲イカ」としている[7]。また、東京では大型のものをモンゴウ(紋甲)と呼び、関西ではホシイカ(星烏賊)というとある[7]。現在は「モンゴウイカ」はカミナリイカやトラフコウイカ、また輸入されるヨーロッパコウイカの市場名だとされることが多い[11][12][13]。「ホシイカ」は灰褐色の背面に白色斑点が散在しているためであるという[7]。また 河野 (1973) では「カミナリイカ」や「シリヤケ」、「シリクサリ」という地方もあるとする[7]が、現在これらはカミナリイカ Sepia lycidas Gray, 1849 およびシリヤケイカ Sepiella japonica Sasaki, 1929 と別種に当てられており、混同されている。
分類を分けることも多い)と遊泳性で石灰質の甲を持たないツツイカ類に二分され、そのうちの前者に属している。また、コウイカ科は Voss (1977)、Khromov et al. (1998)、Young et al. (1998) などに基づけば、甲の形状等の形態形質により3属に分けられ[14][15]、うち最大のコウイカ属 Sepia に属している。コウイカ属はヨーロッパ近海に棲息しているヨーロッパコウイカ Sepia officinalis Linnaeus, 1758 をタイプ種とするが、最近の分子系統の結果ではヨーロッパコウイカは本種コウイカやトラフコウイカ Sepia pharaonis Ehrenberg, 1831 といったアジアに産するコウイカ類とは近縁でなく、むしろシリヤケイカ Sepiella japonica Sasaki, 1929 に近いことが判っており[14]、属は系統を反映しておらず未整理である。
また、歴史的にコウイカ属は複数の亜属や種群に分けられてきた。Naef (1923) は本種をタイプ種に Platysepia 属を設立したが、Khromov et al. (1998) はコウイカ属を6つの種群 (species complex) に分け、本種をその中の Acanthosepion 種群に置いた[15]。奥谷・田川・堀川 (1987) や 奥谷 (2015)、 ⇒WoRMSでは、Platysepia 亜属に置かれている。
OrtmannはSepia hoyley Ortmann, 1888 という種を設立したが、Sasaki (1929) によればこれは自身の所有している本種の若い標本と非常によく似ており、本種と同一種であると考えられる[3]。 Hoyle (1885), Annals and Magazine of Natural History, 5, 16, p. 188 にて、Sepia esculenta Hoyle, 1885 として記載された[15][16]。タイプ産地は日本の横浜市場である[16][15]。シンタイプがロンドン自然史博物館にあり、1個体の雄(1889.4.24.69、外套長160 mm)と1個体の雌(1889.4.24.70、外套長143 mm)である[15]。
原記載