コイ
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「鯉」はこの項目へ転送されています。あいみょんの楽曲については「ハルノヒ」を、プロ野球球団の通称については「広島東洋カープ」をご覧ください。

コイ
コイ(Cyprinus carpio)
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))

分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:条鰭綱 Actinopterygii
:コイ目 Cypriniformes
:コイ科 Cyprinidae
:コイ属 Cyprinus
:コイ C. carpio

学名
Cyprinus carpio
Linnaeus1758
和名
コイ(鯉)
英名
Eurasian carp

European carp
common carp
      自然分布      移入分布
コイ飼育型コイ飼育型とソウギョ(中央はニシキゴイ)

コイ(鯉、学名:Cyprinus carpio)は、コイ科に分類されるの一種である。比較的流れが緩やかなや池、用水路などにも広く生息する大型の淡水魚

コイの語源は体が肥えていることまたは味が肥えていることに由来するという[2]。別名はマゴイ、ノゴイ(後述のように体高の低いコイのグループがありノゴイはその呼称でもある)[3]
分類

2亜種が存在する。

C. c. carpio
(英語版)はヨーロッパの大半(特にドナウ川ヴォルガ川)原産である[4][5]

C. c. yilmaz (Deniz carp) はアナトリア(特にチョルム周辺)原産である。

東アジア原産の3つ目の亜種C. c. haematopterus(Amur carp)は過去に認められていたが[5]、近年の出典はこれをC. rubrofuscusの学名の下で別種として扱っている[1][6]。純粋な型のヨーロッパのコイと様々なアジアの近縁種は、計数形質(英語版)によって分類できるが、それらは異種交配できる[1][7]。ヨーロッパのコイはキンギョとも異種交配可能である[8][9]。日本においてもコイフナ(英語版)と呼ばれる雑種が確認されている[10]

名称が似ているニゴイはコイ亜科ではなくカマツカ亜科であり同科異亜科の関係である。
生態

コイは外見が同亜科異属のフナに似るがは体に対して小さい。吻はフナよりも長く伸出させることができる[2][3]。また上顎後方及び口角に1対ずつ触覚や味覚を感知する口ひげがある[2][3]。体長は約60センチメートルで、130センチメートル以上に達するものもある[2][3]。飼育されたり養殖されてきた系統の個体は体高が高く、動きも遅いが、野生の個体は体高が低く細身な体つきで、動きもわりあい速い。雌雄を外観で判断することは難しいが、体は雌のほうが大きく逆に雄の方が頭が大きい、雄のほうが体がやや細くて胸鰭が大きく角張っているなどの特徴がある[2]。また雌の胸鰭は丸型をしている。

食性は雑食性で水草貝類イトミミズなどを食べる[3]。その他、昆虫類甲殻類、他の魚の卵や小魚、米粒、トウモロコシパンカステラうどんカエルなど、口に入るものならたいていなんでも食べる。口にはないが、喉に咽頭歯という歯があり、これでタニシなどの硬い貝殻なども砕き割ってのみこむ[2][3]。さらに口は開くと下を向き、湖底の餌をついばんで食べやすくなっている。なお、コイにはがない。コイ科の特徴として、ウェーバー器官を持ち、音に敏感である。また髭には匂いや味を感じる器官が沢山集まっており、この感覚器を「味蕾」と呼ぶ[11]

産卵期はから初夏にかけてで、この時期になると大きなコイが浅瀬に集まり、バシャバシャと水音を立てながら水草に産卵・放精をおこなう。一度の産卵数は20万-60万ほどもある[2]。卵は直径約2ミリメートルで水草などに付着し、水温が20度あれば4-5日のうちに孵化する[2]。稚魚はしばらく浅場で過ごすが、成長につれ深場に移動する。

寿命は15-20年[2]。生命力は極めて強く、魚にしては長寿の部類で、まれに100年を超す個体もある。の年輪から推定された最長命記録は、岐阜県東白川村で飼われていた「花子」と呼ばれる個体の226年だが、これは信憑性が疑問視されている。長寿であることのほか、汚れた水にも対応する環境適応能力が高く、しかも水から上げてしばらく水のないところで置いていても、他の魚に比べて長時間生きられるようである。低温にも強い。

の中流や下流、などの淡水域に生息する。飼育されたコイは流れのある浅瀬でも泳ぎまわるが、野生のコイは流れのあまりない深みにひそんでおり、産卵期以外はあまり浅瀬に上がってこない。を登るということがよく言われるがこれは中国神話伝説の類に由来する言い伝えであって、普通程度の大きさのコイが滝を登ることは通常は無い。コイはジャンプが下手であり、『モジリ』という水面下まで上がって反転する行動が一般にはジャンプと誤認されていることも多い。ただし小型のコイはまれに2メートル程度の高さまでジャンプすることがあり、この場合は滝を登ることがありうるものの、格別に「滝を登る」という習性がコイにあるわけではない。
ノゴイ詳細は「ノゴイ」を参照ノゴイ(滋賀県立琵琶湖博物館の飼育個体)

漁師や釣り人などから、養殖され、放流もよく行われている体高の高いコイと、琵琶湖などの湖や四万十川のような大きな河川に見られる体高が低いコイの性質が、著しく異なることが古くから指摘されていた。後者は「ノゴイ」(野鯉)と呼ばれて前者の系統で野生繁殖しているものと区別されており、シーボルトなど従来よりこの相違に注目する研究者も多少はいた。21世紀になってコイヘルペスウイルスによる感染症の流行で捕獲しにくいノゴイの死体が多数得られたことから、これを用いて遺伝子解析した研究が2006年になって報告された[12]。それによると、外来の体高の高いコイとノゴイは種レベルに相当する遺伝子の差があることが報告され、日本列島在来の別種として新種記載の必要性も指摘されている[13]
分布
コイ本来の分布

もともとはユーラシア大陸が自然分布域だったが、移植によって世界の温帯・亜熱帯域に広く分布している[2]日本でも全国的に分布[2]コイ(大分県、飼育型)のCTスキャンモデル

日本のコイは大昔に中国から移入された(史前帰化動物)と考えられ、縄文時代の貝塚からも化石が発見されている[2]。しかし、関東平野琵琶湖に野生のコイが分布することや、古い地層から化石も発見されていることから、日本にももともと自然分布していたが中国からの移入がありそれが広まったとされる[2]シーボルトの『日本動物誌』においても、Cyprinus conirostris、Cyprinus melanotus、Cyprinus haematopterus の3種が紹介されているが[14]、学術的にさほど注目もされず今日に至っている。欧米でもドイツなどでは盛んに養殖され、食用の飼育品種も生み出されている。北大東島の異様に細長いコイ
コイによる生態系の破壊問題野生下のコイ、中津市。大陸からの外来系統と思われる。

コイは都市河川などで川をきれいにする目的で河川環境保護の一環として放流される種でもある[2]。しかし、コイの本来の生息域は大河川の下流域や大きな湖で、中小河川に放流されると他の魚の卵や稚魚を大量に捕食してしまうことがある[2]。こうした放流について、地元の固有種との交雑が起こって何万年もかけて築かれてきた固有種の絶滅を懸念する(遺伝子汚染)声もあるが[15]、当事者には全く意識されていないのが現状である[注 1]。また、ニシキゴイの放流が原因と推測されるコイヘルペスウイルスによる感染症が地元のコイに蔓延し大量死する事件もある。

また、コイは底生生物や水生植物などを根こそぎ食べてしまうという影響もある[2]

同じことは飼養種でないコイについても言える。コイは体が大きくて見栄えがするため、「コイが棲めるほどきれいな水域」というきわめて安直な趣旨で自治体レベルでダムなどに放流されることが多い。しかしコイはもともとBOD値の高い湖沼や河川を好んで住処とする種で、低酸素環境に対する高い耐性がある。これは、生物界における一般的な基準からすると、他の生物の嫌う水質の悪い水域にしか生息できないことを意味する。実際、逆に水質がよい小川の堰の内部に放流したニシキゴイが餌の問題から大量に餓死する例も報告されており[15]、「コイが棲める=きれいな水域」という図式は成立し得ないことがわかる。

市街地の汚れた河川を上から眺めれば、ボラと放流されたコイばかりが目につくということが多々ある。しかもコイは各種水生生物を貪欲に食べてしまうので、往々にして河川環境の単純化を招きかねない[15]生物多様性の観点からすれば、もともとコイがいない水域にコイを放流するのは有害ですらある。

日本では外来魚であるブラックバスの問題がたびたび引き合いに出されるが、上述したようなコイの放流はブラックバスの放流と同様の問題を抱えている。本種には低温に対する耐性や雑食性、さらに60センチメートルを超える大きさにまで育ち、大きくなると天敵がほとんどいなくなるといった特徴がある。こうした特徴はいずれも侵略的外来生物に共通するものであり、実際国際自然保護連合では、コイを世界の侵略的外来種ワースト100のうちの1種に数えている。北緯30度線以南にはもともとコイは生息していなかったが、奄美大島では繁殖した。

特にコイを食す習慣のない北アメリカでは、在来の水生生物を圧迫するまでに繁殖している。人為的放流を禁じている州もあるほどで、北アメリカ以外でも猛威を振るっている例が報告されている。アメリカ合衆国では、中国原産のコイであるハクレンコクレン五大湖周辺に進出しており、これが五大湖に流れ込んだ場合、五大湖固有の魚が駆逐される可能性が指摘されている[16]
保全状態アレクサンダー・フランシス・ライドンによるコイ。

野生種本来の分布域に生息する個体群は、河川の改修にともなう生態系の破壊や、他地方からの移入個体との交雑による遺伝子汚染による在来個体群の絶滅が危惧されており、2008年に国際自然保護連合により危急(Vulnerable)に指定されている。
文化
食材コイの栄養価の代表値

コイ(生)100 gあたりの栄養価
エネルギー531 kJ (127 kcal)

炭水化物0 g
糖類0 g
食物繊維0 g

脂肪5.6 g
飽和脂肪酸1.083 g
一価不飽和2.328 g
多価不飽和1.431 g

タンパク質17.83 g
トリプトファン0.2 g
トレオニン0.782 g
イソロイシン0.822 g
ロイシン1.449 g
リシン1.638 g
メチオニン0.528 g


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