ゲーム依存症
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ゲーム症/ゲーム障害(げーむしょう、げーむしょうがい、Gaming disorder / Video game addiction)とは、普段の生活が破綻するほどの、持続的かつ反復的なゲームへののめり込みを指す。[1][2][3][4][5][6] 医学用語としてのゲーム症/障害に加えて、一般的にはゲーム依存症(ゲームいそんしょう、ゲームいぞんしょう)の語も広く使われる。

WHO(世界保健機関)のICD-11(国際疾病分類 第11版)における「ゲーム」とはデジタルゲームまたはビデオゲームを指し、インターネットを使用したオンラインによるものも、オフラインによるものも含まれる[7]

ネット上で不特定多数の者とプレイできるオンラインゲームに関しては、「インターネットゲーム障害」としてアメリカ精神医学会(APA)DSM-5(2013年)ですでに記述されている。ただしこの「インターネットゲーム障害」は今後の研究のための病態であり、公式の精神疾患として採用するためには証拠が不十分と判定されたもので、今後の研究が推奨される病態として基準が示されたものである[8]
名称

WHOによる分類ICD-11の訳語に関して、2018年の日本精神神経学会による草案ではGaming disorderに対応する用語を「ゲーム症<障害>」している。[2]

医学用語としては「依存(Dependence)」ではなく「嗜癖(Addiction)」に相当する。一方でゲーム依存という語も広く使われており、一般向けの分かりやすい語として使用を否定されるものではない。[10]

俗称の「ゲーム中毒(ゲームちゅうどく)」は不適切である。医学的には「中毒(Intoxication)」とは物質(アルコール、カフェイン、大麻、幻覚薬、オピオイドなど)摂取後に生じる可逆的な物質特異的症候群を指す。[11]
ICD(WHO)による分類

WHO(世界保健機関)では、2018年6月に公表され、2019年5月に採択された疾病分類ICD-11で、初めて「ゲーム症(障害)(Gaming disorder)」が登場した[7][12]。分類としては「物質使用症(障害)群または嗜癖行動症(障害)群(Disorders due to substance use or addictive behaviours)- 嗜癖行動症(障害)群(Disorders due to addictive behaviours)」カテゴリおよび「衝動制御症群(Impulse control disorders)」中である。

ICD-11には「ゲーム症(障害) Gaming disorder」の下位分類として以下の3つが記述されている[7]

「ゲーム症(障害)、主にオンライン(Gaming disorder, predominantly online)」

「ゲーム症(障害)、主にオフライン(Gaming disorder, predominantly offline)」

「ゲーム症(障害)、特定不能(Gaming disorder, unspecified)」

ICD-11の記述

記述(Description)

ゲーム症(障害)は、持続的または反復的なゲーム行動(「デジタルゲーム」または「ビデオゲーム」、それはオンラインすなわちインターネット上、またはオフラインかもしれない)の様式(パターン)によって特徴づけられる。
ゲームをすることに対する制御の障害(例:開始、頻度、強度、持続時間、終了、状況)。

ゲームに没頭することへの優先順位が高まり、他の生活上の利益や日常の活動よりもゲームをすることが優先される。

否定的な(マイナスの)結果が生じているにもかかわらず、ゲームの使用が持続、またはエスカレートする。

その行動様式は、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど十分に重篤なものである。

ゲーム行動の様式は、持続的または一時的そして反復的かもしれない。

ゲーム行動および他の特徴は、診断するために通常少なくとも12ヶ月の間にわたって明らかである。しかし、すべての診断要件が満たされ症状が重度であれば、必要な期間は短縮するかもしれない。

除外

危険なゲーム行動(Hazardous gaming)

双極症 I 型 <双極 I 型障害>(Bipolar type I disorder)

双極症 II 型 <双極 II 型障害>(Bipolar type II disorder)

除外診断に挙げられている危険なゲーム行動(Hazardous gaming)とは、オンラインまたはオフラインのいずれかのゲーム行動の様式を指し、個人または周囲の他人に有害な身体的または精神的健康影響のリスクを相当に増加させるもので、リスクの増加は、ゲームの頻度、これらの活動に費やされた時間の長さ、他の活動や優先順位の無視、ゲームやその文脈に関連する危険な行動、ゲームの悪影響、またはこれらの組み合わせである。ゲーム行動の様式は、個人や他の人への危害の増加の危険性に対する認識にもかかわらず、しばしば持続する[13]
ICD-11「嗜癖行動症(障害)」

ICD-11には嗜癖行動症(障害)(Disorders due to addictive behaviours)カテゴリに以下の4つが分類されている[7]

ギャンブル症(障害)(Gambling disorder)」

「ゲーム症(障害)(Gaming disorder)」

「嗜癖行動症(障害)、他の特定される(Other specified disorders due to addictive behaviours)」

「嗜癖行動症(障害)、特定不能(Disorders due to addictive behaviours, unspecified)」

ゲーム症(障害)オンラインQ&A

[14]

ゲーム症(障害)とは何ですか?

ゲーム症(障害)は、国際疾病分類 第11版(ICD-11) 改定草案で、ゲームをすることに対する制御の障害によって特徴づけられるゲーム行動の様式(「デジタルゲーム」または「ビデオゲーム」)として定義されており、他の趣味や日常的な活動よりもゲームに没頭することへの優先順位が高まり、他の活動よりもゲームをすることが優先されます。そして否定的な(マイナスの)結果が生じているにもかかわらず、ゲームの使用が持続、またはエスカレートします。ゲーム症(障害)が診断されるためには、その行動様式が、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど重大でなければならず、通常少なくとも12ヶ月間にわたって明らかです。

国際疾病分類とは何ですか?

国際疾病分類(ICD)は、世界的な健康動向と統計の識別の基礎であり、病気や健康状態を報告するための国際基準です。これは、世界中の医療従事者が条件を診断するために、また研究者が条件を分類するために使用されます。ICDに疾患を含めることは、国が公衆衛生戦略を計画し、疾患の傾向を監視する際に考慮する事項です。WHOはICDの更新に取り組んでいます。国際疾病分類(ICD-11)の第11回改訂版は、2018年中頃に公開予定です。

なぜICD-11にゲーム症(障害)が含まれているのですか?

ICD-11にゲーム症(障害)を含める決定は、入手可能な証拠のレビューに基づいており、ICD-11開発過程でWHOが行った技術協議のプロセスに関与した様々な学問分野および地域の専門家の合意を反映しています。ICD-11にゲーム症(障害)を含めることは、世界の多くの地域でゲーム症(障害)の特徴と同じ健康状態の人々のための治療プログラムの開発に続き、医療従事者のリスクへの関心が高まる結果となり、したがって予防および治療に関連します。

ゲームに参加するすべての人々は、ゲーム症(障害)を開発することに心配する必要がありますか?

研究によれば、ゲーム症(障害)は、デジタルゲームやビデオゲームの活動に携わる人のほんの一部にしか影響しません。しかし、ゲームに参加する人は、ゲーム活動に費やす時間、特に他の日々の活動を除外するときに、ゲームの振る舞いのパターンに起因する彼らの肉体的または心理的な健康や社会的機能の変化に注意を払う必要があります。
DSM-5(APA)による分類

アメリカ精神医学会(APA)が出版し、世界的に使用されている診断基準「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版(2013年)」では、第 III 部「新しい尺度とモデル」の第4章「今後の研究のための病態(Conditions for Further Study)」で「インターネットゲーム障害(Internet Gaming Disorder)」が取り上げられており、この障害は“ 明らかな公衆衛生上の重要性をもつ ” とされている[1]

以下に提案された基準案を示す。この基準案は、公式の精神疾患診断として採用するための証拠が不十分であると判定されたもので、臨床において用いるためのものではない点に注意が必要である。
インターネットゲーム障害の基準案

[1]

臨床的に意味のある機能障害や苦痛を引き起こす持続的かつ反復的な、しばしば他のプレイヤーとともにゲームをするためのインターネットの使用で、以下の5つ(またはそれ以上)が、12カ月の期間内のどこかで起こることによって示される。
インターネットゲームへのとらわれ(過去のゲームに関する活動のことを考えるか、次のゲームを楽しみに待つ;インターネットゲームが日々の生活の中での主要な活動になる)注:この障害は、ギャンブル障害に含まれるインターネットギャンブルとは異なる。

インターネットゲームが取り去られた際の離脱症状(これらの症状は、典型的には、いらいら、不安、または悲しさによって特徴づけられるが、薬理学的な離脱の生理学的徴候はない)

耐性、すなわちインターネットゲームに費やす時間が増大していくことの必要性

インターネットゲームにかかわることを制御する試みの不成功があること

インターネットゲームの結果として生じる、インターネットゲーム以外の過去の趣味や娯楽への興味の喪失

心理社会的な問題を知っているにもかかわらず、過度にインターネットゲームの使用を続ける

家族、治療者、または他者に対して、インターネットゲームの使用の程度について嘘をついたことがある

否定的な気分(例:無力感、罪責感、不安)を避けるため、あるいは和らげるためにインターネットゲームを使用する

インターネットゲームへの参加のために、大事な交友関係、仕事、教育や雇用の機会を危うくした、また失ったことがある

注:この障害には、ギャンブルではないインターネットゲームのみが含まれる。ビジネスあるいは専門領域に関する必要性のある活動のためのインターネット使用は含まれないし、他の娯楽的あるいは社会的なインターネット使用を含めることを意図したものではない。同様に、性的なインターネットサイトは除外される。?現在の重症度を特定せよ

インターネットゲーム障害は、普段の活動の破綻の程度により、軽度、中等度、または重度とされうる。重症度の低い人は症状の数が少なく、生活上の破綻も少ないかもしれない。重度のインターネットゲーム障害をもつ人は、より多くの時間をコンピュータ上で過ごすであろうし、よりひどく、交友関係や、職歴もしくは学業面での機会を失うであろう。
経緯

2011年7月にネット依存治療研究部門(TIAR)を開設した独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの樋口進はゲーム障害等への研究費の拡大を提言しWHO(世界保健機関)のMental Health and Substance Abuse (MSD)部門に所属していたVladimir Poznyakに直談判し3回の会議を開催、国際連合安全保障理事会常任理事国アメリカ合衆国の反対なども有ったが事務局長のテドロス・アダノムに世界の約 80 の学会から収載支持の手紙を送る等のロビー活動を経てICD-11の草稿にゲーム依存(gaming disorder)が収載[15][16][17][18]


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