ゲームブック
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ゲームブック (Gamebook) は、読者の選択によってストーリーの展開と結末が変わるように作られ、ゲームとして遊ばれることを目的としているである。「アドベンチャーゲームブック」・「アドベンチャーブック」とも呼ばれる。

迷路なぞなぞなど「遊び」の要素を含んだ書籍(主に児童書)も「ゲームブック」と呼ばれるが、本項で解説するものはこれと本質的に異なるものである。ただし、これら児童書の中でも読者によるストーリー分岐を取り入れたものは、単純ながらも本項で解説するような「ゲームブック」の要素を持ち合わせている。
概要

本文は数十から数百個のパラグラフ(段落)に分けられており、各パラグラフには順に番号が付いている。読者はそれらのパラグラフを頭から順番に読むのではなく、パラグラフの末尾で指定された番号のパラグラフを次に読む。パラグラフ番号の代わりにページ数をそのまま利用し、1ページを1パラグラフとして扱うゲームブックもある。いずれも次に読むべきパラグラフは1つに限らず、多くは複数の行き先が存在する。それらはプレイヤーによる任意選択ができたり、後述するランダム要素によって決められたり、以前に行った選択や判定の結果が影響して決まる。このような方法によって、多様に変化するストーリーを実現している。

多くの場合、読者は物語の主人公の立場となって困難に立ち向かい、ロールプレイングゲームアドベンチャーゲームを本の形式で楽しめる。主人公に名前を付けられているものもあるが、二人称(「あなた」)が主人公となることも多い。複数の結末が用意されており、1つ以上のグッドエンディング(勝利)と複数のゲームオーバー・バッドエンド(敗北)がある点はコンピュータRPGサウンドノベルなどと同じである。

また、作品によっては戦闘の勝敗などにランダム要素が取り入れられており、サイコロ等の乱数生成手段が使用される。一部の作品ではサイコロの目や数字などが各ページの隅に印刷されており、ページを適当に開けたときにそのページに印刷されている数字によって次の行動が指定され、サイコロを使わずプレイできるようになっている。
文体

文体は、読者に対して語りかけるようなもの(二人称体)が多くを占める。一人称の作品もあるがプレイヤーへの指示などは二人称である。
歴史
原型

ゲームブックの原型については諸説あるが、その初期の代表的な作品の1つに、バンタム・ブックスの『きみならどうする?』(Choose Your Own Adventure, 1979年?1998年) シリーズがある。このシリーズは、日本では、『タイムトンネルの冒険』『サハラさばく気球旅行』など6冊が、1980年学研より翻訳出版された。これらの作品にはランダムな戦闘や所持品などの概念は含まれておらず、パラグラフの選択のみによって物語が進められていく、単純な形式である。

テーブルトークRPGのソロシナリオとしては、リック・ルーミスにより1976年に発表された、トンネルズ&トロールズの「Buffalo Castle」が最初の作品とされている。続いて1977年に発表された“Deathtrap Equalizer”は、日本では『デストラップ』の訳題で、1989年社会思想社より刊行された。
誕生後

本格的なゲームブックの歴史は1982年イギリスペンギン・ブックスより発行されたスティーブ・ジャクソンイアン・リビングストン共著『火吹山の魔法使い』(The Warlock of Firetop Mountain)で始まる。

1980年ダンジョンズ&ドラゴンズをはじめとするテーブルトークRPGのイギリスにおける流行の担い手だったジャクソンとリビングストンは、テーブルトークRPGの入門書をペンギン・ブックスに提案した。初期の計画ではテーブルトークRPGの遊び方やファンタジー世界への導入のためのマニュアルに過ぎなかったが、作成する内にファンタジーの世界そのものを本の中に収め、1冊の本の中でTRPGを楽しめるものへと変わっていった。ひとりひとりの読者が冒険の主人公になること、パラグラフ選択という手法、サイコロによる戦闘など、ゲームブックの典型的要素はこのころに固まったとされる。そうして作られたのが『火吹山の魔法使い』である。

それ以前にも、パラグラフ選択だけでサイコロなどを用いない単純なゲームブックは存在した。また、テーブルトークRPGの1人プレイ用シナリオなどもあった。中でも先に言及された『トンネルズ&トロールズ』のソロ・アドベンチャー群はテーブルトークRPGの自由度を紙媒体において巧みに表現した佳作と言えた。そして『火吹山の魔法使い』は、この種の書籍でゲーム性と物語性を巧みに調和させ、かつ商業的に類を見ない規模で成功を収めた嚆矢と言えるだろう。同書はベストセラーとなり数多くの国で翻訳・出版され、さらには「ファイティング・ファンタジー」シリーズや「ソーサリー」4部作へと発展した。また、いくつもの出版社がこれに追随し、「ローンウルフ」「ゴールデンドラゴンファンタジー」「グレイルクエスト(ドラゴンファンタジー)」「ブラッド・ソード」など、何種類ものシリーズが登場した。

中でも、イギリスで1983年より刊行された「ソーサリー」4部作は、全巻合計でのパラグラフ数が約2000に及ぶ超大作である。「バルサスの要塞」より発展した読者が魔法使いとなって呪文を暗記し唱えるシステムや、「今後○○のときには100を引いたパラグラフに進む」など、選択肢にないパラグラフへの移動も取り入れた最初の作品である。

しかしその後、ゲームブックというジャンルは次第に衰退していった。ゲームブックの仕組みが一見単純なせいか多くの作品が作られたが、「ソーサリー」を超える作品が出ずマンネリ化したり、あるいは熟練者を狙った新作ではシステムが複雑すぎて新規読者に受け入れられなくなったことが衰退の原因ともいわれている。また、ファンの興味がコンピュータゲームに移ったという説もある。いずれにせよ、人気を博したシリーズのほとんどが姿を消してゆき、1990年代前半にはブームが終わったことは明らかだった。元祖とも言うべき「ファイティング・ファンタジー」シリーズは発行を続けていたが、1995年に59巻を発行した後、60巻「Bloodbones」を未刊として残したまま姿を消した(社会思想社・日本語訳版は、第33巻「天空要塞アーロック」が最終巻となった)。根強いファンを持つ「ローンウルフ」シリーズが最後まで残ったが、1998年の第28巻で終了した。

2002年にイギリスのアイコン・ブックスが新ブランド「ウィザード・ブックス」を立ち上げて『火吹山の魔法使い』を復刊した。同社はその後も「ファイティング・ファンタジー」シリーズで人気の高いものを選んで復刊した。さらに、前述の「Bloodbones」や完全新作の「Eye of the Dragon」をも刊行している。また日本においても『火吹山の魔法使い』『バルサスの要塞』『ソーサリー』『ドルアーガの塔』などが復刻されたほか、『魔人竜生誕』などの(復刊ではない)完全な新作が発表されている。
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この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2013年3月)

1980年代(ブームの到来)

黎明期においては、1984年7月、コンピューター雑誌『マイコンBASICマガジン』において、手塚一郎により「ペーパーアドベンチャー」としてゲームブックの形式が紹介される。これは、雑誌の数ページを利用して、短いパラグラフを詰め込んだミニゲームブックというべきものだった。紙幅の制約もあり、パラグラフにはごく簡単な状況説明と選択肢だけが書かれた単純なものだったが、前例を見ないこのコーナーは人気を博し、その後、読者投稿作品も掲載された。

同年9月、朝日ソノラマより『ハローチャレンジャーブック』シリーズが刊行開始。これが日本における初のゲームブック単行本である。第1弾は高橋昌也執筆の『出発!スターへの道』(表紙カバーイラスト:平野俊弘)。

同年12月に日本語版『火吹山の魔法使い』が社会思想社より発行されて直ちにベストセラーとなり、翌1985年には『ソーサリー』4部作の日本語訳が東京創元社より創元推理文庫(レーベル名では「スーパーアドベンチャーゲームシリーズ」)として発売され、ゲームブックブームの火付け役となった。

1980年代には二見書房富士見書房ホビージャパンなどの出版社がそれぞれシリーズを刊行するという一大ブームになっていた。

1986年には社会思想社よりゲームブック雑誌「ウォーロック」が翻訳・創刊された。


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