化学発光(かがくはっこう)または、ケミルミネセンス(Chemiluminescence)とは、化学反応によって励起された分子が基底状態に戻る際、エネルギーを光として放出する現象である[1]。この中で分子単独が励起状態を形成するものを直接発光と呼び、系内に存在する蛍光物質等へエネルギー移動し、蛍光物質の発光が観測されるものを間接化学発光と呼ぶ。
代表的な化学発光を示す有機化合物の例としてルミノール、ロフィン、ルシゲニン、シュウ酸エステルがある。前者3つは直接発光であり、後者は間接化学発光である。シュウ酸エステルの化学発光は過シュウ酸エステル化学発光と呼ばれている。
反応物AとB、励起状態の中間体?、生成物、そして発光の関係は次の反応式で表される。[A] + [B] → [?] → [生成物] + 光
たとえば、適切な触媒の存在があるとして、[A]がルミノール、[B]が過酸化水素とすると反応式は次のようになる。ルミノール + H2O2 → 3-APA[?] → 3-APA + 光
ただし、
3-APAは3-アミノフタル酸
3-APA[?]は、励起状態であり蛍光を発してエネルギーが低い状態になる。
励起状態[?]のエネルギー低下は光の放出の原因となる。理論上、一つの光子は反応物の分子ごと、またはモルあたりの光子のアボガドロ定数ごとに放出されなければならない。実際には、非酵素反応での量子効率(QC)はめったに1%を上回らない。 鉄または銅[2]または補助酸化剤[3]の存在下の塩基性溶液中のルミノールは過酸化水素によって発光する[1]。ルミノール+ H2O2 → 3-APA[?] → 3-APA + hν (3-APA…3-アミノフタル酸) 量子効率QCは1%である。この反応はルミノール反応といい、実験室では演示実験に用いられる[2][3]。 サイリュームでは、サリチル酸ナトリウムのような触媒の存在下、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素とが反応することによって蛍光染料(dye)が励起され発光する。これは最も効率的な化学発光として知られている。量子効率は15%まで上がる[4]。シュウ酸ジフェニル+ H2O2 + dye → フェノール + 2CO2 + dye[?] 励起された蛍光染料が基底状態になるとき光が放出され、その色は染料に依存する[5]。 色感光薬 塩化オキサリルは上記の例と同じように酸化時に蛍光染料を発光させる。塩化オキサリルは蛍光染料の存在下、非水溶媒(たとえばジクロロメタン)中の過酸化水素で処理することで発光が得られる。蛍光色および強さ、そして発光時間は蛍光染料の種類に依存する。
目次
1 液相反応
1.1 ルミノール
1.2 サイリューム
1.3 塩化オキサリル
1.4 Ru(bipy)32+
1.5 TMAE
1.6 ピロガロール
1.7 酸素
1.8 ルシゲニン
1.9 マンガン
1.10 その他
2 気相反応
2.1 炭素を主体とする燃焼における火炎
3 その他
4 脚注
4.1 出典
5 関連項目
液相反応
ルミノール
サイリューム 緑と青色のサイリューム
青9,10-ジフェニルアントラセン
緑9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン
黄緑テトラセン
黄1-クロロ-9, 10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン
橙5,12-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、ルブレン、ローダミン6G
赤ローダミンB
塩化オキサリル