ケニング
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「ケニング」のその他の用法については「ケニング (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ケニング(古ノルド語: kenning 英語発音: [?k?n??] アイスランド語発音: [c??n?i?k])は、具体的な名詞の一単語の代わりに比喩的な複合語をあえて使う修辞技法の一つで、迂言法の一種とされる。ケニングの技法は、古ノルド語およびアイスランド語と強く結びついている。関連の深いもう一つの修辞技法であるヘイティと並んで、長きに渡ってアイスランド詩(リームルなど)を特徴づける要素であり続けた。

ケニングは基底語と決定素の2つの部分からなる。例えば、「剣」を意味する"iss raudra randa"「赤い盾のつらら」というケニングの基底語はiss(つらら)であり、決定素はr?nd(盾)である。そのケニングが指すもの、人、場所などを、指示物(referent)と呼ぶ(上記の例では指示物は剣である)。ケニングを訳す場合、ひとまとまりの複合語として訳出する場合が多いが、実際の古ノルド語詩においては一般的な語順とは異なる場合もあるし、構成要素が必ずしも隣り合っているわけでもない。

もともとは古ノルド語およびアイスランド語の技法を指したが、最近では類似した古英語の修辞技法も同様にケニングと呼ばれる。
語源

古ノルド語のkenningは、kenna(「知る」の意)の派生した形である。現代の北ゲルマン語群では、アイスランド語 kenna、スウェーデン語 kanna、デンマーク語 kende、ノルウェー語ニーノシュク kjennaなどの語形が残っているほか、西ゲルマン語群同根語として、歴史的には古英語 cennan、古フリジア語 kenna、kanna、古ザクセン語 (ant)kennian、古高ドイツ語 (ir-、in-、pi-)chennanなどがあり、いずれもゲルマン祖語 *kunnananの使役形*kannjananから派生したものとされる。これらは、現代英語のknowやラテン語のcogniti?、ギリシア語のgnosisと同様に、根源的には印欧祖語の*?neh?に遡ることができる[1]
構造

古ノルド語のケニングは、最も単純な形式のものでは、核となる名詞である基底語(: base-word)と、基底語に意味を付与し修飾する決定素(: determinant)の2つの語からなる。決定素が名詞の場合、語形変化せず基底語の前について複合語を形成する場合と、属格を取り基底語に前置/後置されて属格句の形を取る場合がある。「船」を意味するケニングの例として、複合語のものではgjalfr-marr(海-馬)、属格句のものではbaru fakr(波の馬)などの表現がある。属格句となる場合、基底語と決定素の間にほかの語が置かれ、2要素が離れることがある[2]

また、ケニングが指し示しているが言明されない名詞のことを指示物(: referent)という。上記の2例は、いずれも「船」を指示物とするケニングである。

古ノルド語詩では、ケニングの構成要素(基底語と決定素)として、一般的な名詞だけでなく、ヘイティ(古ノルド語: heiti)と呼ばれる詩語を用いることもできる。上記の例では、散文で馬を指す一般的な語であるhestrと区別された詩的な語彙素であるmarrやfakrが用いられている。
複雑なケニング

スカルド詩人は、基底語または決定素として、別のケニングを使うような複雑なケニングも使用した。例えば"grennir gunn-mas"「戦カモメに餌をやるもの」というケニングでは、"gunn-mas"「戦カモメ」自体がワタリガラスを指すケニングであり、つまり「ワタリガラスに餌をやるもの」すなわち戦士を指す。このようにあるケニングに別のケニングが埋め込まれているとき、この表現全体を二重ケニング(古ノルド語: tvikent、トウィケント、二重修飾)という[3]

あるケニングの決定素が別のケニングであるとき、決定素となっているケニングはしばしば、語形変化せずに前置されて複合語を形成する。例えば、"mog-fellandi mellu"「女巨人の子殺し」は、「女巨人の子らを殺すもの」=「巨人たちを殺すもの」すなわちトール神を指すケニングである。

3つ以上の要素からなる表現は、拡張(古ノルド語: rekit)と呼ばれる[4]スノッリ・ストゥルルソンは、5要素からなるケニングを詩的許容の範疇としているが、これ以上の極端な構成については戒めている[5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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