グンテル(グンター、ドイツ語: Gunther)は、ゲルマンの伝説に登場するブルグント人の王である。北欧の伝承ではグンナル(古ノルド語: Gunnarr)という。実在した5世紀初頭のブルグント王グンダハール(古高ドイツ語: Gundahar、ラテン語: Gundaharius)のことだが、各地でその事績が伝承された結果、むしろ物語の登場人物として知られる。
歴史上のグンダハールが君臨したのは、ブルグントがライン川を超えてローマ領ガリアに侵入した後の短い間とされる。簒奪皇帝ヨウィヌスが敗れるまでその戦役に関わり、戦後はローマと同盟を結んでライン左岸に定住した。436年、グンダハールはローマの属州ベルギカ・プリマに攻め込んだが、翌年フン族の傭兵の助力を得たローマの将軍フラウィウス・アエティウスに破られ、戦死した。
こういった史実を元に、伝説上のグンテルは、フン王アッティラの宮廷で死んだものとされた。グンテルはさまざまな伝説に登場し、中でもジークフリートとブリュンヒルトの物語への関わりは有名である。アキテーヌのワルテルの伝説にも敵として登場する。これらの伝説に主人公でない役として登場するのは後付けの設定と考えられている[1]。ブルグント人の破滅の物語においても、時代が下るにつれてグンテルの重要性は薄れていった[2]。
伝説上の人物としてのグンテルは、ラテン語、中高ドイツ語、古ノルド語、古英語の文献や、スカンディナヴィアのさまざまな図像に登場する。ドイツ語の『ニーベルンゲンの歌』、中世ラテン語の『ワルタリウス』、古ノルド語の『詩のエッダ』『ヴォルスンガ・サガ』が特に重要な文献である。グンテルは、シグルズ伝説を元にしたリヒャルト・ワーグナーの歌劇『ニーベルングの指環』においても重要な役を果たす。 ゲルマン祖語の*gunt-(戦争)と[3]、*-hari(軍隊)[4]の2つの要素からなる。 歴史上のグンダハール(Gundahar)という名前は、ラテン語のグンダハリウス(Gundaharius、Gundicharius)やギリシア語のギュンティアリオス(Γυντι?ριο?、Gyntiarios)という表記を根拠とするものである[5]。これが中世ラテン語ではグンタリウス(Guntharius)、古英語ではグースヘレ(G?dhere)、古ノルド語ではグンナル(Gunnarr)、中高ドイツ語ではグンテル(Gunther)となる[6]。 グンダハールは、実在が明らかになっている最初のブルグント王である[5]。彼が単独の王であったか、伝説にあるように兄弟との共同統治であったかははっきりしない。歴史家であるテーベのオリュンピオドロス
語源
歴史上のグンダハール
406-407年、他のゲルマン人部族とともにブルグント人の大多数がラインを渡った[8]。