グローバル資本主義
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グローバル資本主義(グローバルしほんしゅぎ)は、国家間の障壁を取り除き、自由化を推し進めた資本主義のグローバル化のこと。新自由主義を世界規模へ適用したとも言われる[1]
概要

グローバル資本主義の特徴の一つは、資本の自由移動である[2]ブラックマンデーは、投機を目的とする巨額の資金がキャピタル・ゲインを求めて世界中を駆け巡り、投下される国の経済を左右している現状を示した。銀行窓販等で集められた資金を、ミューチュアル・ファンドヘッジファンドが運用している。大銀行・大生保との関係では資本市場の独占も指摘される。

もう一つの特徴は、より多くのリターンを求める投資家と、より安く良いものを求める消費者の期待に応えるべく[1]、上場企業が賃金をはじめ徹底したコストダウンを図り、結果として非先進国を含め世界中に生産・販売網を展開している点である。国内では労働規制緩和も伴って非正規雇用労働者の増大が問題化している。上場企業には、国民国家の国内総生産 (GDP) を軽く超える多国籍企業が存在し、市場を獲得するために国境を越えて資金と物資を自由に動かしている。

このようなグローバル資本主義を規制することのできる、同等にグローバルな国際機関は世界貿易機関を除けば、事実上存在しない[2][1]
歴史?資本主義からグローバル資本主義へ

19世紀末に金本位制が広く採用され、国際金融市場の為替取引を容易にし、預金通貨の需要を生んだ。1907年恐慌の前後に巨額の資本が大西洋を横断するようになった。世界恐慌までに生じたバブルは、そうした資金が呼び水となっていた。第二次世界大戦後、マーシャル・プランが戦中の停滞を打ち破った。ブレトン・ウッズ協定ユーロカレンシーの登場により管理通貨制度へ変わってゆくと、ユーロ債市場が盛況となった。グローバル資本主義はオイルショックで本格的なものとなった。

1973年に産油国が石油輸出国機構(OPEC)を組織して、原油価格を引き上げたことに始まる(当時1バレル1.90ドルから9.76ドルへ[3])。ついでイランイラクの政変にあわせさらに値上げされ、石油産油国の黒字はにわかに巨額化しはじめる一方、石油輸入国では多額の赤字を補填するための資金調達に奔走し始める。オイルマネーの還流を望む西欧諸国政府の思惑もあり、ユーロダラーの発明とともに金融法の極めて少ないオフショア市場が各地で発達していく。

オフショア市場へ流れる国際金融資本を自国へ取り戻すため、各国は税制その他の優遇措置をとりはじめるが、結果として国際金融資本(オフショア資本)の移動の自由度および匿名性をさらに高めることとなった[2][4]。1980年代には、マーガレット・サッチャーロナルド・レーガンの「小さな政府」政策により[5]、経済への規制緩和が進められ、1983年以降、度重なる危機はあったものの、グローバル経済は長期にわたり事実上切れ目のない拡大を続け、真にグローバルと呼べるまでに成長した。本格化したグローバル資本主義は1987年のブラックマンデーをものともせずに成長した。そして米ソ冷戦終結後、特にソ連が崩壊した1991年以後に、一強と化したアメリカ合衆国流の市場原理主義新自由主義が、世界各国へ導入された。それは、投資家の利益を図るため世界の市場経済の一極化と単一化を計り、国際通貨基金 (IMF) などの国際機関が関わって推し進められた。

今日では、さまざまな国の為替レート、金利、株価、原油価格などが密接につながっている。
グローバル資本主義への反発「反グローバリゼーション」も参照

反発する者は、新自由主義(無規制で弱肉強食の市場経済)の経済が、非正規雇用労働者(プレカリアート)を世界的・爆発的に増大させ、挙げ句の果てには主権国家体制(民主主義国家のみならず、権威主義国家や社会主義を建前とする一党独裁国家も含め)をも従属させながら世界を席巻している点を覇権主義的であり缺陥として非難している(→反グローバリゼーション)。

米国は、コンピュータOSマイクロソフト)やスマートフォンAppleなど)、Web検索エンジン (GoogleYahoo!)、金融業(ゴールドマン・サックス)、飲食業(スターバックスコカ・コーラマクドナルドなど)、ネット通信販売業(Amazon.com)、決済手段(VisaMasterCard)、鉱工業、農業、技術標準、果てはファッション(リーバイスGAPナイキなど)など、あらゆる面で世界の市場の支配と一極化を目指している。そのため、アメリカ風の政治・経済・社会を他国に無理やり強制し、結果的に貧富の拡大や環境破壊など様々な問題を引き起こしたのではないかと言われている。

世界中どこでもマクドナルドケンタッキーコカコーラファンタWindowsが見られる光景は結局アメリカ国内で見られる文化を他国に輸出しているに過ぎず、「グローバリズム」ならぬ「"アメリカニズム"」であり、「グローバルスタンダード」ならぬ「アメリカンスタンダード」でしかないと考えられている[誰?]。地域固有の文化を淘汰する傾向が多いため、左派(社会主義者)のみならず、右派(ナショナリスト)からも批判されている。

民間レベルではグローバル資本主義のもとで過酷な労働環境に置かれている世界の労働者に焦点を当て、告発する動きも盛んになってきている[6][7]。ごく一部の国を除いて総資本主義化した21世紀の世界の流れに対する反発は、経済の低迷に苦しむ国を中心に強まってきている[8]

2000年代以降は、世界のグローバル資本主義化の反動で、南米では反新自由主義の左派政権の誕生が相次いでいる。また、技術面でも非アメリカとオープン・リベラルへの志向が高まり、欧州やアジア・南米各国での相次ぐ政府のLinuxの推進や、ESA(欧州宇宙機関)と日本を含む各国による新GPS「ガリレオ計画」の推進などがある。中南米諸国の社会主義への方向転換は漸進的で、数年に一度の選挙による再度の方向転換も有り得る穏健なものであり、20世紀に発生した革命のような多数の犠牲者を生み出す急進的なものではない。また、社会主義を建前とする中華人民共和国ベトナムは、今や我々の生活に欠かせなくなった物の生産を担っており、グローバル資本主義の重要な担い手になっている。

ただ、グローバル資本主義化は資本の本性から出てきたもので必然的であり、これに対する対案はグローバル社会主義しかないという主張がマルクス主義者の側からなされる。


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