グレート・アクセラレーション
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グレート・アクセラレーション(: Great Acceleration)は、人類の活動によって社会経済や地球環境の変動が急増している現象を指す。日本語では大加速[1]や大加速化[2]、人類活動の巨大な加速[3]とも呼ばれる。

社会経済システムと地球システムの各12の指標が、20世紀後半から急速に上昇傾向にあるという仮説にもとづいている[4]。開始時期は第二次世界大戦後で一致しており、年代については1945年、1950年代など諸説がある[3]地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)が刊行した『グローバル変動と地球システム - 逼迫する地球環境』(2004年)という書籍で発表されて使われるようになった[5]

グレート・アクセラレーションは、地球における人間活動の限界を定めたプラネタリー・バウンダリーとともに人新世の根拠となっている。人新世とは、人類の活動が地質学的なレベルで地球に影響を及ぼしているために提案されている地質年代である[6]。生物の絶滅など影響が広範におよぶ点から、巨大隕石の落下など過去の自然災害との類似も指摘されている[7]
社会経済システムの指標1750年から2010年にかけての社会経済システムの変化。

人口国内総生産(実質GDP)、対外直接投資都市人口一次エネルギーの使用、化学肥料の使用、巨大ダム水利用製紙交通遠隔通信海外旅行となる[4]
人口

人口が10億人になったのは19世紀初頭であり、20億人になるには約125年後の1935年までかかった。その後急速になり、25年後の1960年には30億人に達し、年間2.2%の増加率となった[8]。原因としては乳幼児死亡率の低下が大きく、平均余命が延びたことが挙げられる[注釈 1]。欧米の感染症対策がアジアやアフリカの主な地域で普及したのは1950年代以降からで、平均余命の地域格差が縮まっていった[10]

人口が30億人だった時点では、環境問題は社会的・経済的な問題からは別個のものとして考えられていた。その後の人口増加と大量生産や貿易によって、化石燃料の使用、工業的な肥料生産、肉食の増加による家畜の増加、フロンの使用、漁獲量の増加が続いた。2050年までに人口は90億人に達し、世界経済の規模は2050年までに3倍になると予想されている[注釈 2][3]
国内総生産(実質GDP)

1950年から1973年にかけて世界のGDPは年4.9%、1人あたりGDPは年2.9%、輸出量は年7%増加した[11]。経済成長の世界的な分岐は16世紀から起きており、1500年から1820年までの世界のGDPは2400億ドルから6950億ドルに増え、ヨーロッパが中心だった(後述[12]
対外直接投資(FDI)

FDIは1980年代中頃から増加ペースが上昇し、特に1993年以降に急増した。世界のFDI流出額は1992年の約2000億ドルから2000年には約1兆1500億ドルとなった。原因は、経済協力開発機構(OECD)での合併と買収(M&A)の増加と、欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)などの地域統合にある。中南米では、民営化の進展とともにFDIが増え、アジアでは1997年から1998年に起きたアジア金融危機ののちにM&Aが増えた。1990年代以降のFDIによって多国籍企業(MNEs)の役割が大きくなっている[13]
都市人口

人類の都市への集中は続いており、2007年から2008年にかけて都市人口が全人口の50%を初めて超えた[14]。2050年には都市人口が70億人に達すると予想される。21世紀においては、10日につき都市人口が100万人増加するペースともいわれ、アジアやアフリカにおける農村から都市への移住が中心となっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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