グルーミング_(性犯罪)
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性犯罪・性的虐待の文脈におけるグルーミング[注釈 1]、チャイルド・グルーミング(英:Child grooming)とは、性交猥褻行為などの性的虐待を目的として、未成年の子どもと親しくなり、信頼など感情的なつながりを築き、手なずけ、時にはその家族とも感情的なつながりを築き、子どもの性的虐待への抵抗・妨害を低下させる行為である[1][2][3][4][5][6][7]。性的グルーミング、性的手なずけとも[8]
概要

未成年者へのグルーミングは、児童虐待の一形態である。リヴァプール・ジョン・ムーア大学のミシェル・マクマナスは、グルーミングに共通する側面は、加害者が信頼とラポール(感情的な親密さ)を築くことによって、被害者を操作するということであるとしている[9]。加害者は「特別なご褒美」や「愛の告白」等の物心両面から被害児童を可愛がり、信頼や愛情を得てから、命令、脅しなどを用いて弱みを巧みに掌握し、支配し、操作し、コントロールし[10]、性関係へと持ち込んでいく。目白大学教授(心理学)の齋藤梓は、子どもへの性暴力において最も典型的な手段であると述べている[11]。性的虐待は多くの場合、性的接触が長期にわたって進行していくという点で、性暴力と異なる[12]。マクマナスは、性的、恋愛的、経済的、または犯罪やテロ目的で行われる場合があるとしている[9]

アメリカで生まれた用語で、アメリカの家族以外による児童性的虐待の捜査の現場では、非暴力的な手法を用いるチャイルド・マレスター(児童性加害者)の行動パターンは、「誘惑(性的誘惑、Seduction)」と呼ばれていたが、現在では代わって、グルーミングという用語が定着している[13]。グルーミング(英:grooming)という言葉には、動物の毛づくろい・外観の手入れ、女性の身支度、特定の目的のための準備といった意味がある[14][15]。現在は親などによる家庭内の性的虐待で使われることも多い。グルーミングという用語は、国際法においては定義されていない[16]

顔見知りの子どもに性的虐待を行う者の多くは、時に暴力的な行為も行うが、発覚を避けるために、主に誘惑やグルーミングのプロセスを通じて被害者を支配する傾向がある[17]。顔見知りによる性加害は、暴力を用いると早期に発見され、明るみに出る可能性が高まる[18]。グルーミングを用いると、被害者の協力と継続的なつながりが持てる可能性が高まり、犯罪者にとって非常に重要なことであるが、犯罪が明るみに出る可能性が低くなるのである[18]FBI捜査官・犯罪コンサルタントのケネス・ラニングは、経験から言って、最も執拗で多くの罪を犯す危険な性犯罪者の多くは、主にグルーミングを行い、被害児童を誘惑し、暴力を用いることはほとんどないと述べている[19]。にもかかわらず、非暴力的な手法であるグルーミングが関与する事件は、処罰が軽い傾向がある[19]。ラニングは、グルーミングは長期的な誘惑のテクニックというよりも、短期的な誘惑として使われることが多いとしている[13]。被害は女子に限られず、男子も同様にある[20][21]

オンライン、対面、その他のコミュニケーション手段など、さまざまな場面で行われる可能性がある[22]。近年では、SNSなどのオンラインでのグルーミングも知られるようになっており[11]、児童性的虐待コンテンツ(児童ポルノ)を含むオンライン性的虐待でも、対面とほぼ同様の経過を辿ることがわかっている[10]。グルーミングされた子どもは心理的な被害を受け、性的活動やその他の形での搾取に従事するよう強要されることがある[23]

グルーミングは、未成年者を児童人身売買児童売春、インターネット上の性的人身取引(英語版)・インターネット上の性的虐待[24]、児童性的虐待コンテンツ(児童ポルノ)制作などの様々な違法ビジネスに誘い込むために利用される[25][26][27]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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