D-グルクロン酸
図はβ体
IUPAC名
D-グルクロン酸(許容慣用名)
(2S,3S,4S,5R,6R)-3,4,5,6-Tetrahydroxyoxane-2-carboxylic acid
別称β-D-glucopyranuronic acid
識別情報
CAS登録番号6556-12-3
159-161 ℃[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
グルクロン酸(グルクロンさん、glucuronic acid)とは、グルコースに対応するウロン酸である。光学異性体のうち、天然にはD体のみが知られる。共役塩基の陰イオンであるグルクロン酸イオンは、グルクロナートと呼ばれる塩を形成する。グルクロン酸の名称はギリシア語のγλυκ??「甘い」に由来する。 グルクロン酸は、炭素数6個のグルコースの6位の炭素が酸化されて、すなわち、グルコースのヒドロキシメチル基 グルコースの炭素鎖を切らない範囲での酸化によって生合成されるカルボン酸としては、グルクロン酸の他に、グルコン酸(gluconic acid)が挙げられる。グルコン酸はグルコースの1位の炭素が酸化されて、すなわち、グルコースのアルデヒド基の部分が酸化されて、カルボキシ基に変換された構造をしたカルボン酸である。 グルクロン酸もグルコン酸も、分子内で脱水縮合して環状化し、ラクトンを形成し得る。環状化したグルクロン酸はグルクロノラクトン、環状化したグルコン酸はグルコノラクトンと呼ぶ。 グルクロン酸は、肝臓でグルコースを原料として、ウロン酸経路で合成される[3]。カルボキシ基と3位の水酸基は、分子内で自発的に脱水縮合して、グルクロノラクトンが生成する。 生体が体外へと廃棄したい脂溶性の化合物を水溶性に変換するために、脂溶性の高い化合物に、水溶性の高い小さな分子を結合させる反応を、抱合と総称する。グルクロン酸は水に対して、高度に可溶性の物質であり、抱合に利用可能な化合物の1つである。そのため動物体内において、体外へ排出したい脂溶性の高い化合物に、しばしばグルクロン酸が結合される。また、体外から入ってきた異物だけでなく、ビリルビンのような体内で生成された老廃物に対して、グルクロン酸を結合する反応も知られている。加えて、輸送し易くするために、ホルモンの中でも脂溶性の高いホルモンに、グルクロン酸が結合されたりもする。これらの過程は、グルクロン酸化、あるいは、グルクロン酸抱合と総称される。なお、グルクロン酸抱合を行った後の化合物群、つまりグルクロン酸が結合された化合物群は、グルクロニドもしくはグルクロノシド、またはグルクロン酸抱合体と総称される。水溶性が増したグルクロニドの形にして、生体内から体外へと排出される[4]。 グルクロニドを輸送するためのトランスポータとしては、cMOAT ただし、これらのトランスポータはグルクロニドだけを輸送するトランスポータではない。cMOATは、グルクロニドの他に、硫酸抱合体、グルタチオン抱合体なども輸送する[5]。MRP3は、グルクロニドの他に、グリココール酸やタウロコール酸なども輸送する[5][注釈 1]。 新生児はグルクロン酸抱合を行う能力が、成人と比べると低く、新生児に投与されたクロラムフェニコールは充分にグルクロン酸抱合が行われないため、クロラムフェニコールの毒性を増し、いわゆるグレイ症候群
構造
対応するアルドン酸
ラクトン形成
生合成
グルクロン酸抱合
グルクロニドの排出に関わるトランスポータ
グルクロン酸抱合の能力