グリーン車
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この項目では、日本国有鉄道およびJRグループ等における特別車両の名称について説明しています。

京王帝都電鉄(現:京王電鉄)で使用されていた緑色の車両塗装については「グリーン車 (京王)」をご覧ください。

JR各社のグリーン料金については「グリーン券」をご覧ください。

自動車の話題における「green car」については「低公害車」をご覧ください。

黄緑7号(慣用色名称「黄緑色」)
「グリーンマーク」の色グリーン車のマーク(N700系
 
16進表記#57B544
RGB(87, 181, 68)
マンセル値9GY 6.6/10.5
出典鉄道ジャーナル通巻217号 特集「鉄道車両 色彩の美学」

淡緑6号(慣用色名称「若葉色」)
2等級制時の一等車窓下の帯急行用のサロ165-106。窓下の淡緑色の帯が特徴(復元)。
 
16進表記#97BC94
RGB(151, 188, 148)
マンセル値10GY 7.3/4
出典鉄道ジャーナル通巻217号 特集「鉄道車両 色彩の美学」

グリーン車(グリーンしゃ、Green Car)は、日本国有鉄道(国鉄)およびその鉄道事業を継承したJRグループ各社の旅客列車や、JR以外の各鉄道会社などの車両のうち、普通車に比して乗客1人当たりの占有面積が広く、設備が豪華であるなどの理由で別途の料金がかかる特別車両の名称である。

1969年昭和44年)5月10日の国鉄運賃改定時に従来の等級制を廃止し、運賃および特急急行料金で単一運賃・料金が採用された。これにより、従前の1等座席車(3等級制時代の2等座席車)が「グリーン車」となり、従来の1等運賃と1等特急・急行料金(それぞれ2等の2倍)を支払う方式から、運賃および特急・急行料金のほかにグリーン料金(特別車両料金)を別途支払い、グリーン券(特別車両券)を購入する方式に改められた。

3等級制時の二等車および2等級制時の一等車の後身であり、車体の等級記号はイロハの「ロ」である。新幹線では十の位を「1」としている(N700系N700Sでは700系と重なるため全室車両が「7」(N700Sは「3」)、普通車との合造車が「6」をそれぞれ使用。このほか、2階建車両で「4」「7」を使用するケースもある)。扉横の車体や内ドアにはグリーン車を表す四つ葉のマーク(後述)が標記される。寝台車においては、「グリーン寝台」という区分はないものの、「A寝台」「B寝台」で区分される中では「A寝台」がこれに該当するとされる[* 1]。前史については「等級 (鉄道車両)」を参照
名称

名称の「グリーン」の由来は、2等級制時の一等車時代から側面窓下に表示されていた淡緑色(淡緑6号)の帯の色および硬券の色を基にしたとされる。同時に"四つ葉のクローバー"を模した黄緑色(黄緑7号)の「グリーンマーク」も制定された[* 2]。しかし1978年(昭和53年)の塗装規程改定により淡緑色の帯を入れることは廃止され、JR分社後の現在ではグリーンマークのみとなっている。

マークは時刻表発車標でも用いられている。これらの単色で表示する媒体の場合、葉に当たる部分を線と同色で塗色しているものが指定席、地の色と同色のものが自由席と区別している。

グリーン車 (GREEN CAR) という名称は事実上普通名称化しているが、英語の案内などでは下記にある通り等級不詳となる「GREEN CAR」ではなく、一等車という意味合いで「First Class」と表記する場合もある。しかし、グリーン車とは別に「新幹線のファーストクラス」を標榜する「グランクラス」も登場している(後述)。
車両設備山陽・九州新幹線(みずほ、さくら、つばめ、一部ひかり、こだま)N700系7000番台、8000番台のグリーン席

基本的には座席間隔(シートピッチ)が普通車のそれに比べ広い、ないしは腰掛の横幅が広い物を用いている。また、腰掛自体もジョイフルトレイン個室の類を除いて、一般にリクライニング機構を装備した回転式クロスシートを用いている。グリーン車の設備には特別二等車を源流に持つ特急(新幹線を含む)・急行用と、「並ロ」「並二」と呼ばれた一般の二等車を源流に持つ普通列車用の2系統があり、後者の設備は前者に比べて簡素で、利用料金もそれぞれ別個に設定されている。

特別席という観点から本席を先頭車に設定し、運転席後ろの仕切りをガラス張りにして「パノラマ型」にしたものや2階建て車両の上部に設定する場合もある。また、トイレの利用などで車内を通り抜けるだけの乗客がむやみに立ち入らないようにする目的から先頭車に設定されることもある。一方、編成の長い東海道・山陽新幹線では乗客が乗降時に駅ホームの端まで歩かなくてすむよう、グリーン車車両を編成中央に連結している[* 3]東北新幹線上越新幹線においてはこの2つを折衷する形で単独編成では先頭車両かその隣の車両をグリーン車としつつも、併結時には編成中央に来るような配置がとられている。
特急・急行用グリーン車(キロ180形)のリクライニングシート。手前側は背もたれをいっぱいまで倒し、側面のテーブルを引き出し、フットレストの布張りの面を表に向けた状態。

現在の特急・急行用グリーン車の源流となるのは、1950年に製造された初の特別二等車であるスロ60形である。翌1951年に製造されたスロ53形では、後の特急・急行用グリーン車の標準様式となる座席間隔(シートピッチ)1,160 mm、20 m級全室車の場合定員48人が確立された。この様式は、1986年の国鉄最末期に製造されたキロハ186形にまで踏襲されている。なお、後述する民営化後も定員や横2+1配列の登場などの点で差異のある車両は登場しているものの、シートピッチ1,160 mmの寸法は一部の例外を除いてスロ53形の登場後70年以上の長きにわたり踏襲され続けている。

1987年(昭和62年)の国鉄分割民営化後は、標準化を旨とした国鉄時代と異なり、国鉄を引き継いだJR旅客鉄道会社が線区や列車の事情に応じた設備のグリーン車を製造あるいは既存車を改造した。これにより、グリーン車の設備は一気に多様化した。それまでは2+2人掛けの4列配置が一般的であった座席配置も、観光需要の多い路線・列車を中心に2+1の3列配置が採用され、一部の路線を除いて新造・改造車ともに拡大する傾向にある。

また平成期以降、私鉄各社にもに僅か数百円の追加料金で横幅の広い2+1列のデラックス型シートに乗車できる列車が設定された。こうしたことなどから、シートピッチは広くても2+2では見劣りすると考える乗客の価値観の変化も影響していると考えられ、中には個室を設置する列車も現れた。

こうして2+1人掛けの3列配置が国鉄の民営化以降主流となっていったが、JR東日本では1993年(平成5年)に営業運転を開始した255系以降の特急形車両では、ジョイフルトレイン以外ではわずかな例外[* 4]を除き、定員確保の観点から再度国鉄時代のような2+2の配置となっている。なお、JR東日本では自社線内に限り、グリーン車を利用する場合は新幹線および一部の特急を除いて乗車距離が300 km以内のグリーン料金が他のJR各社[* 5]より240 - 1,000円安く設定されている。また、JR東海でも、最初期に登場したサロハ371形では2+1配置を採用したが、後に導入したクロ383形では2+2配置に戻されている[* 6]

新幹線では車体幅が在来線より広いこともあり、東海道新幹線開業時から基本的に2+2列の配置である。例外は、100系200系にかつて存在した1 - 4人個室と、いわゆるミニ新幹線として在来線規格で製造された400系が2+1列として設定されたのみである。なお、ミニ新幹線用として後に製造されたE3系以降は定員確保のため2+2列で配置されている。

座席についても、従来からの標準であったリクライニング機構、テーブル、フットレストのみならず、レッグレストを設置したり、特にJR民営化直後に登場した列車では各席に小型液晶テレビを設置したり、音楽を配信するオーディオ・ヴィジュアルサービスを提供したりするものまでが出現した[* 7]。また、サービス面でも、フリードリンク・菓子類や雑誌(車内誌)の提供、女性客室乗務員によるサービスなど内容の向上が見られたが、現在では経費削減のため軒並み取り止められている[1][* 8]
普通列車用113系サロ110形1200番台とサロ124形E231系サロE231形1000番台(後方にサロE230形1000番台もある)

普通列車用グリーン車については、通勤輸送に使用されるという性格上、着席すること自体がサービスとなっており、座席定員を確保するため、特急・急行用のものと異なった発展を遂げた。設備としては、特急用の普通車レベルが標準であり、定員は60人前後である。また、座席は、特急用普通車の設備向上に伴って変遷してきた。中には余剰となった特急・急行用車両のグリーン車を転用したり、グレードアップの目的でそれら並みの設備を持って新製されたものもあるが、定員が少ないため早期に淘汰の対象となっている。

1950年代以前の二等車には、転換クロスシートのものと座席間隔を大きくとったボックスシートのものがあったが、1960年代以降には回転クロスシートが一般的となった。1973年には、グリーン車の設備向上を狙って急行形並みの設備を持ったサロ113形が新製されたが、定員の減少のため乗客の評判が悪く、早期の転出(京阪神地区へ)を余儀なくされている[* 9]。その反省から、定員を60人に増やし簡易リクライニングシートを装備したサロ110形1200番台1976年から製造され、以後の標準形となった。

1980年代以降、グリーン車が連結されている東海道本線横須賀線では、通勤ラッシュ時を中心に乗車定員を上回る乗車が見られ、グリーン車でありながら乗客の立席乗車が恒常化していたため、さらなる座席定員増加を狙って、国鉄分割民営化後の1989年(平成元年)からは、2階建て構造で製造されている。この先駆けとなったのは、サロ212・213形およびサロ124・125形である。これにより、座席定員は1.5倍の90人に増加され、これ以降製造される車両の標準形となっている。

首都圏以外では、1988年に登場した瀬戸大橋線の快速「マリンライナー」にもグリーン車が連結されている。ただ、マリンライナーは快速列車ではあるものの、本州 - 四国間の都市間輸送、東海道・山陽新幹線や四国内の特急列車と連携した長距離輸送といった使命も兼ねていることから、首都圏の快速・普通列車グリーン車とは性格がまったく異なる。そのため、快適性や眺望性などといった特急・急行用グリーン車に求められる点も重視され、座席も自由席ではなく指定席となっている。
グリーン個室

サフィール踊り子」(JR東日本E261系電車)、かつての新幹線100系電車や「成田エクスプレス」(JR東日本253系電車)等には、個室グリーン席があり、個室単位で座席が販売される。JRに乗入れる私鉄特急車両についても等級が設定され、「スペーシア日光」(東武100系電車)の個室はグリーン個室に相当する設備とされた。「コンパートメント席」も参照
その他のグリーン車

上記のほか、1970年代から1980年代にかけて国鉄・JRに登場したお座敷列車(畳敷きの和風車両)、欧風列車などのいわゆるジョイフルトレインも大半がグリーン車として設定されていた。2000年代以降のジョイフルトレインでは普通車に設定、或いはグリーン車から格下げした車両が増えているが、一部例外もある。

また、一般用の列車においても、和風車両などをグリーン席として指定した事例がある。例えば、1985年(昭和60年)から1989年(平成元年)まで食堂車を改造した和風車両に「だんらん」の愛称を与え、エル特急「雷鳥」に連結された。
運行状況
特急・急行列車E3系のグリーン車

特急列車の場合、新幹線を含めて比較的利用度の高い列車には1両は連結されているが、国鉄末期には利用度の少ない特急ではグリーン車の連結を省く例も多くなった[* 10]。しかし、グリーン車の利用が可能な「フルムーン夫婦グリーンパス」や「ナイスミディパス」などの特別企画乗車券が発行されるようになると、1両の半分程度(概ね10席から20席程度)のグリーン室を再び設置する例も出てきた。

また、急行列車でも、かつては比較的利用度の高い列車には昼行・夜行ともに連結されていたが、2003年(平成15年)に昼行急行列車のグリーン車は消滅し、2012年(平成24年)3月17日ダイヤ改正以降では定期列車としては運行を終了した。

特急列車の場合は原則的に座席指定席制であり、急行列車でも特別二等車以来の伝統から座席指定席制が多かったが、1996年(平成8年)まで急行列車であった「東海」など一部の急行列車には座席指定を行わない自由席のグリーン車を連結する事例も見られた。2022年時点で定期列車における新幹線・特急列車での自由席グリーン車の設定はない[* 11]が、例外的に臨時列車では全席自由席とするケースがある(この場合、車掌が車内で検札時に発売[2])。


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