この項目では、アミノ酸のグリシンについて説明しています。その他のグリシンについては「グリシン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
Glycine
別称Aminoethanoic acid
Aminoacetic acid
識別情報
略称Gly, G
CAS登録番号56-40-6
233 °C (分解)
水への溶解度25 g/100 mL
溶解度エタノール、ピリジンに可溶。エーテルには不溶。
酸解離定数 pKa2.34 (カルボキシル基), 9.6 (アミノ基)[2]
危険性
半数致死量 LD502600 mg/kg (マウス;経口)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
グリシン開裂、1はテトラヒドロ葉酸、2は5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸テトラヒドロ葉酸(THF)による代謝とビタミンB12によるTHFの再生産、de:Folsaure=葉酸、DHF=ジヒドロ葉酸、THF=テトラヒドロ葉酸、Vit.B12=ビタミンB12、Methyl-Vit.B12=メチルコバラミン、Methionin=メチオニン、Methionin Syntase=5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、Homocystein=ホモシステイン、N5-Methyl-THF=5-メチルテトラヒドロ葉酸、N5,N10-Methylene-THF=5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、N10-Formyl-THF=10-ホルミルテトラヒドロ葉酸、dUMP=デオキシウリジン一リン酸、NADPH、DNA
グリシン(英: glycine)とは、2-アミノ酢酸の事であり、地球生物のDNAに規定されている20種類のアミノ酸の中の1つでもある。アミノ酸の構造の側鎖が –H で不斉炭素を持たないため、生体を構成する α-アミノ酸の中では唯一、 D-, L- の立体異性体が無い。非極性側鎖アミノ酸に分類される。
多くの種類のタンパク質ではグリシンはわずかしか含まれていないが、ゼラチンやエラスチンといった、動物性タンパク質のうちコラーゲンと呼ばれるものに多く(全体の3分の1くらい)含まれる。
1820年にフランス人化学者アンリ・ブラコノーによりゼラチンから単離された。甘かったことからギリシャ語で甘いを意味する glykys に因んで glycocoll と名付けられ、後に glycine に改名された。 グリシンは糖原性アミノ酸の1つである。 グリシン開裂系はテトラヒドロ葉酸により以下の反応でグリシンを開裂する[3]。テトラヒドロ葉酸 + グリシン + NAD+ = 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸+ NH3 + CO2 + NADH + H+ グリシン開裂系とは別に、グリシンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ)(EC 2.1.2.1)の働きにより、可逆的にグリシンをL-セリンに相互に変換し、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に変換する反応が触媒される[4][5]。5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸+ グリシン + H2O = テトラヒドロ葉酸 + L-セリン [6] グリシン開裂系とセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼによる2つの反応を複合すると以下の反応式が示される。また、その全容は図の通りである。2 グリシン + NAD + + H 2 O ⟶ {\displaystyle {\ce {+ NAD+ + H2O ->}}} セリン + CO 2 + NH 3 + NADH + H + {\displaystyle {\ce {+ CO2 + NH3 + NADH + H+}}} グリシンが仮に脱アミノ化を受けるとグリコール酸が生成し、酸化を受けるとグリオキシル酸が生成するが、グリオキシル酸はヒトではエチレングリコールからシュウ酸に代謝される際の中間体で、酸化を受けると有害なシュウ酸が生成される[7][8]。その反応を回避する観点から、グリシンの代謝は重要な意義がある。 グリシンは様々な生体物質の原料として利用されている。一部を以下に示す。
生合成・代謝
生体内での利用
コラーゲン
コラーゲンタンパク質のペプチド鎖を構成するアミノ酸は、―(グリシン)―(アミノ酸X)―(アミノ酸Y)―と、グリシンが3残基ごとに繰り返す一次構造を有する。この配列は、コラーゲン様配列と呼ばれ、コラーゲンタンパク質の特徴である。
ポルフィリン
動物においてはグリシンおよびスクシニルCoAからアミノレブリン酸合成酵素(EC 2.3.1.37
グルタチオン
グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンが、この順番でペプチド結合したトリペプチドである。