グランドピアノ
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.mw-parser-output .pathnavbox{clear:both;border:1px outset #eef;padding:0.3em 0.6em;margin:0 0 0.5em 0;background-color:#eef;font-size:90%}.mw-parser-output .pathnavbox ul{list-style:none none;margin-top:0;margin-bottom:0}.mw-parser-output .pathnavbox>ul{margin:0}.mw-parser-output .pathnavbox ul li{margin:0}ピアノ > グランドピアノ大屋根を閉じた状態のベーゼンドルファー製グランドピアノ1920年代のシードマイヤー製グランドピアノの鍵盤、フレーム(鉄骨)、弦

グランドピアノ(: Grand piano)は、ピアノの一種。グランドピアノのボディ(胴体)は(他にもいろいろあるが特に)弦を保持するフレーム(鉄骨)と響板から構成され、3本の脚の上に水平に置かれている。これらを合わせると全高は約1メートルに達する。グランドピアノの形状はチェンバロが規範となっている。

曲線状のボディ形状が鳥の翼に似ているため、ドイツ語では翼を意味する「Flugel(フリューゲル)」と呼ばれる。フランス語では「piano a queue」(しっぽのあるピアノ)と呼ばれる。英語のGrandは「壮大な、豪華な」という意味である。

ボディの端から鍵盤、アクション、ピン板がある。側板の上部は開閉できる大屋根で覆われており、大屋根を開けることで音を上方にうまく逃がすことができる。グランドピアノの下側は、18世紀のかなり初期の楽器を例外として、通常は開放されている。ペダルが取り付けられている構造体は「リラ lyre」と呼ばれる(同名の古代ギリシアの竪琴と形状が似ているため)。

アップライトピアノが空間や費用面での理由から主に家庭や学校で使われる場面が多いのに対して、音の持続性があり一般的に違いを付けた演奏ができるグランドピアノは熱心に取り組むアマチュア奏者やプロの演奏家のための楽器である。コンサートホールには複数のメーカーのグランドピアノが常設されていることが多く、学校でも音楽室・講堂・ホールや、音響的には難があるものの全校の学生が集まって式典等を行う場を兼ねる体育館のステージ上などにおいてはグランドピアノが設置してあるケースは多い。
構成要素
構造の概略図詳細は「ピアノ#構造」を参照



ボディ

ボディは支柱とともにグランドピアノの全ての構成要素を支える。外側の輪郭、いわゆる「リム(外枠)」は今日はほぼ例外なく長い硬材の層をのりで貼り合わせ、プレス加工により作られる。高級な楽器では、カエデの合板が好まれる。この製造法は1878年のC・F・セオドア・スタインウェイの発明に遡る。グランドピアノのボディが個々の部品から組み立てられる前は、湾曲したS字形の厚板の製造に最も苦心した。ベーゼンドルファーの大型グランドピアノは今日でも合板ではなく無垢材で内リムが作られている。

グランドピアノのボディの底部にある支柱は太く、かんながけされた、溝付きの、ほぞ継ぎされた角材から作られ、以下の役割を果たしている。

脚柱とリラの取り付け

響板と鋳造フレームのための台

グランドピアノの輪郭の形状の保持

一部の製造業者では、響板の働き(曲率、勾配、調律の安定性)はリムの輪郭の精密な形状の保持に依存している。その他の製造業者では、響板は調節可能なリムの輪郭によって曲げられている(例: メイソン・アンド・ハムリン)。

棚板は鍵盤を含むアクションを支え、溝(英語版)付き木材で作られる。棚板の後ろにはダムと呼ばれる板が横に渡されており、その上部にダンパーが位置する。ダムは演奏機構と音響システムを分けている。

グランドピアノの蓋は開けることができ、もし必要であれば外すこともできる。以前はボディはシェラックを使って入念に仕上げられていた。米国では、サテンブラック仕上げの塗装が一般的である。

現在ヨーロッパとアジアにおいて製造されたピアノのボディの目に見える部分は大抵ポリエステル仕上げがなされている。色は大抵艶のある黒色だが、白色や無色(ワニス仕上げ)の場合もある。何層ものポリエステルラッカー仕上げ、特にポリエステル層の磨きは専門的な仕事である。この作業は可燃性の研削屑が生じるため危険であり、専門設備を備えた作業場でのみ行うことができる。

通常はリムと支柱が完成した後に音響システム(鋳造フレームと響板)が組込まれる。一部の製造業者(例えばグロトリアン・シュタインヴェーク)はまず支柱と音響システムを組み立て、次に音響システムの周りにリムを作る。
鋳鉄フレームスタインウェイ製コンサートグランドピアノD-274の鋳鉄フレーム

鋳鉄フレームはグランドピアノ内部の支持要素である。フレームは弦による15万から25万ニュートン重量キログラム換算で1.5から2.5万キログラム重に相当)の張力を支える。以前はもっぱら砂型鋳造だったが、近年は真空鋳造によっても生産されている。真空成形されたフレームはよい表面状態のこともあれば、望ましい表面品質を得るために手作業で修正が必要なこともある。鋳鉄フレームの材料は1840年代以降歴史的にねずみ鋳鉄であったが、個々の製造業者は19世紀末以降はねずみ鋳鉄よりもはるかに高い圧力負荷と曲げ負荷を持つ特殊な鋳造組成を用いることもある。

歴史的に、純木製フレームが鋳鉄フレームの前に使われた。従来よりも大規模なオーディトリアムのために弦の張力が上がり、ハンマーや弦が太くなると、ハンマーの柄をブリッジするために鋼製クランプが使われるようになった。その後、1820年頃から、弦の張力の一部を棒鋼がピン板と弦プレートにボルトで固定されるようになった。次に、一体成形の鋳鉄フレームが登場した。1859年にヘンリー・スタインウェイ・Jr.、1869年にその兄弟のセオドアが、交差弦とピン板のカバーを考案し、今日でも通用するグランドピアノのフレームの設計原理を練り上げた。

今日、新たなグランドピアノおよびフレームを設計するために、CAD有限要素法といった最新ツールが広く使われている。ファツィオリが顕著な例であり、その他中国(海倫〔ハイルン〕)韓国(セジュン)、日本(カワイヤマハ)の会社もソフトウェアを使っている。
響板「響板」も参照

楽器の音の特徴に大きく寄与する響板は弦の下、響板支えの上に格納される。響板はブリッジ(駒)によって伝達された弦の振動を吸収し、音として周囲に発する。

響板は厚さ約10ミリメートルのトウヒ属(スプルース)材から成り、中心に向かって湾曲(むくり)している。その曲がりは一方では底面に接着された響棒によって安定化され、他方では外力によって形作られる。響板に関して、ピアノ職人はいわゆる駒圧や響板の曲率、低・中・高音における参照弦の変位を測定する。変位の範囲は低音の2ミリメートルから高音の約1ミリメートルに大体なる。今日の響板はより良い振動のために周辺部が最大6ミリメートル程削られる(スタインウェイ家のポール・ビルヒューバーが特許を取得した「横隔膜響板」[1])。

スプルース材で作られた響板は経年劣化する。スタインウェイや多くのアメリカのピアノ製造業者は、今日の響板の一般的な平均寿命は約50年であると述べており、50年経つとしばしば交換を勧められる。しかしながら、ヨーロッパのピアノ製造業者は古い響板の修復・復元を好むことが多い。そのうえ、響板は温度の安定性や何にもまして比較的均一な湿度を使用上の必要条件とする。理想的には、響板は約50%の相対湿度の環境に置かれるべきである。グランドピアノまたはアップライトピアノの響板は、冬に湿度が許容範囲をはるかに下回ることがある現代住宅では割れることがある。40%の最低湿度が保てないならば、響板を保護するために加湿器の使用が望ましい。グランドピアノは地下またはガレージに決して保管してはならない。こういった場所に置かれたピアノの響板は水をたっぷり含み、次に温度が上がるとしばしば割れる。プロはこれに備えるため中古ピアノを購入する時は木材水分計を使用する。

個々の製造業者は熱帯環境での響板割れを防ぐために響棒がボルトで固定された特殊な響板も提供している(ブリュートナーは標準、スタインウェイはオプション)。

密に育った、狭く均一な木目を持つ響板用のオウシュウトウヒ(スプルース)材はヨーロッパではアルプスの高地、しばしばイタリアのヴァル・ディ・フィエンメ(17世紀には既にクレモナのバイオリン職人が木材を調達していた)、その他チェコなど東欧原産である。米国の供給元は、1920年代からアパラチア産のカナダトウヒ(英語版)の供給が枯渇して以降は、カナダおよびアラスカ産のシトカトウヒ(英語版)を加工している。

現在はスプルース材だけでなく他の材料も使われる。例えば板ガラス製[2]炭素繊維強化プラスチック製(「フェニックス」システム。フォイリッヒシュタイングレーバーがオプションで提供)の響板がある。
ピン板

ピン板は、リムへのインサートまたはフレーム下の隠れたユニットとしてボディの前部に位置している。ピン板にはチューニングピンが打ち込まれており、チューニングピンには弦が巻き付けられている。ピン板は積層硬材(ヨーロッパブナカエデ)で作られている。現代グランドピアノでは、ピン板は鋳鉄フレームによって覆われている。これによって印象が良くなる。チューニングピンの保持力と始動トルクは非常に高くなければならないため、ピン板は重要な要素である。ピン板におけるチューニングピンの締付けトルクの不具合は、不十分な調律安定性と楽器の不具合の原因となり、チューニングピンの交換には高額な修理が必要となる。グランドピアノの製造方式に依存して、弦を緩めるだけでなく、骨組構造を取り外さなければならないことも時々ある。
鍵盤ドレミファソラシド

オクターブ毎に7つの幹音(英語版)とそれらの間に5つの半音(派生音)があり、合わせると12の鍵がある。幹音(C-D-E-F-G-A-H)は普通は長鍵(普通は白色。鍵盤の下・手前側)上にある。白鍵の表面はかつては象牙製であったが、現在は合成樹脂製で占められている。象牙素材は割れ、欠け、剥離、変色が起こりやすい。5つの短鍵(普通は黒色。鍵盤の上・奥側)は高品質モデルでは今でも黒檀で作られている。現代グランドピアノは大抵88鍵(最低音A0、最高音C8、音域7?オクターブ)を持つ。オーストラリアのスチュアート&サンズ(英語版)は102鍵のグランドピアノを製造している[3]


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