クワ
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この項目では、植物について説明しています。その他の用法については「くわ」をご覧ください。

クワ属
ログワ(Morus alba)
分類

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:真正双子葉類 Eudicots
階級なし:バラ類 Rosids
:バラ目 Rosales
:クワ科 Moraceae
:クワ属 Morus

英名
Mulberry



本文参照

クワ(桑)は、クワ科クワ属の総称。ヤマグワ、シマグワなど品種が多い。カイコの餌として古来重要な作物であり、また果樹としても利用される。土留色はこの植物の実の色を指すこともある。
特徴収穫されたマグワの白い果実(イランホラーサーンにて)

クワの名の由来は、カイコの「食う葉」が縮まったとも、「蚕葉(こは)」の読みが転訛したともいわれている[1]。山に自生するヤマグワなどの種類があり、別名カイバともよばれている[2]。果実は人気のベリーの仲間で、庭に植えられるマルベリー(: Mulberry)があるほか、クワの果実は地方により俗にドドメともよばれている[2]

クワ科クワ属は、北半球暖帯もしくは温帯地域に10数種が分布する[3]中国北部から朝鮮半島にかけての原産といわれ、日本へは古代に渡来したと考えられている[1]。日本には、北海道から九州まで全国に分布する[2]。養蚕のために広く栽培されるほか[4]、かつて盛んだった時期の名残で、放置されて野生化したものが土手や畑のわきなどでも見られる[5][2]

落葉性の高木または低木で、高さは5メートル (m) から大きいものは10メートル以上に達するが[5]、ほとんどは灌木[3]、栽培するものは低木仕立てが多い[6]。幹の目通り直径は、約50センチメートル (cm) になり[1]、樹皮は灰色を帯びる。は有柄で互生[6]、葉身は薄く、表面はつやのある濃い緑色でざらつく[7][5]葉縁にはあらい鋸歯がある。葉の形は変化が大きく、切れ込みのない葉や、切れ込みがあるもの葉などさまざまである[6][7]。大きい木では葉の形はハート形に近い楕円形だが、若い木では葉に多くの切れ込みが入る場合が多い[5]。葉には直径25 - 100マイクロメートル (μm) ほどのプラント・オパールが不均一に分布する[8]

花期は春(4月ごろ)[1][2]。雌雄異株または同株[6]花弁のない淡黄緑色の小を穂状に下げて開花する[2]。花序は新枝の下部にあって[6]、雄花は枝の先端から房状に雄花序が垂れ下がり、雌花は枝の基部(下部)の方に集合してつく[5]。雌花の雌しべ花柱は長さ2 - 2.5センチメートル (cm) で、先が浅く2裂する[9]。花柱はヤマグワでは明らかで、果実になっても花柱の残りがついている[6]

果実は5 - 6月ごろ結実し[1]、緑から黄、赤と変化し、初夏に黒紫色に熟す[2][5]。果実は多くの花が集まった集合果で[9]キイチゴのような、柔らかい粒が集まった形で、やや長くなる。粒のひとつひとつは、萼が肥厚して種子を包み込んだ偽果である[9]。熟した赤黒い果実は、甘くて生でも食べられる[6]。果実は人間はもとより、野鳥にとっての重要な飼料になる[3]。果実には子嚢菌門チャワンタケ亜門ビョウタケ目キンカクキン科に属するキツネノヤリタケ( ⇒Scleromitrula shiraiana)、キツネノワン( ⇒Ciboria shiraiana)が寄生することがあり(クワ菌核病)、感染して落下した果実から子実体が生える。

実をつけたクワの木

クワの実。そのままでも甘酸っぱくて美味。ジャム・果実酒などにも。

主な種類

クワは変種や、品種が多い[9]

ログワ(ロソウ)(Morus lhou)

ハマグワ (Morus australis f. maritima)

ヤマグワ(Morus bombycis)

ナガミグワ(Morus laevigata)

ケグワ(Morus tiliaefolia)

オガサワラグワ(Morus boninensis)

テンジクグワ(Morus serrata)ヒマラヤマルベリー

レッドマルベリー(Morus rubra)

カラヤマグワ(Morus alba)ホワイトマルベリー(Morus alba)

クロミグワ(Morus nigra)ブラックマルベリー

ブラックマルベリー(Morus mesozygia)アフリカマルベリー

登録品種としてポップベリー、ララベリーがある。

日本全土に自生するヤマグワは、養蚕のために栽培される種であり、多数の栽培品種がある[6]。中国から伝来したマグワとの雑種もあり、種はさまざまである[6]。日本の養蚕では一之瀬一瀬桑)という品種が普及した。この品種は、明治31年ごろ山梨県西八代郡上野村川浦(現在の同県同郡市川三郷町)で一瀬益吉が、中巨摩郡忍村(現在の中央市)の桑苗業者から購入した桑苗(品種鼠返し)のうちから、本来の鼠返しとは異った性状良好なる個体を発見し、これを原苗としたものである。このほか日本では、ノグワ(野桑)、オガサワラグワ(小笠原桑)、シマグワ(島桑)など、南西日本の分布に由来することから名づけられた種がある[10]。シマグワは別名をリュウキュウグワ(琉球桑)ともいい、台湾の大部分に分布する系統に由来する[10]。伊豆諸島に生育するクワ属もシマグワとして珍重される[9]

中国には原産で栽培種でもあるマグワ(真桑)やロソウ(魯桑)があるほか、中国北東部・朝鮮北部・モンゴルにかけて分布するモウコグワ(蒙古桑)や、その変種で葉の両面に著しく毛が多いオニグワ(鬼桑)とよばれる種がある[11]
ヤマグワヤマグワ

ヤマグワ(山桑[12]学名:Morus australis, Morus bombycis)は、クワ科クワ属の落葉高木。養蚕に使われるクワに対する、山野に自生するクワという意味でよばれている[13]。中国植物名(漢名)は鶏桑(けいそう)という[4]。学名の一つである Morus bombycis は、カイコの学名である Bombyx に由来する[13]。日本、南千島樺太、朝鮮半島、中国、ベトナムミャンマーヒマラヤに分布する[14]。日本では北海道から九州まで、各地の山野に自然分布する[12]

自然の状態では樹高10メートル (m) 、幹径では60センチメートル (cm) まで生長する[3][12]。枝振りはややまとまりがなく、横に広がる傾向がある[15]樹皮は茶褐色や灰褐色で、若い木は滑らかだが後に縦方向に不規則な筋が入り裂ける[14][15]。一年枝は褐色でほぼ無毛である[15]は長さ8 - 20 cm、葉縁に鋸歯がある卵形や広卵形であるが、1 - 3裂して不整な裂片を持つものも多くあり、基部は円形あるいは浅い心形で、さまざまな形がある[3][12]

開花期は4 - 5月[15]。ほとんどが雌雄異株であるが、ときに雌雄同株[14][12]。花は小さくて目立たず、花後(6 - 7月)につく果実は1 cmほどの集合果で「ドドメ」などとよばれており、はじめ赤色であるが夏に熟すと黒紫色になり、食用にされる[3][12]。完熟果実を食べると唇や舌が紫色に染まり、昔は子供たちのおやつによく食べていた[3]

冬芽は卵形で褐色をしており、芽鱗の縁は色が淡い[15]。枝先の仮頂芽と互生する側芽はほぼ同じ大きさである[15]。葉痕は円形や半円形で、維管束痕は多数が輪状に並ぶ[15]。冬芽や枝の樹皮はサルの冬の食糧で、かじり取られた跡が見られることがある[15]

養蚕用に栽培されることも多い[14]。日本では一般には養蚕には用いられていない種であるが、栽培桑の生育不良で飼料不足となるときに用いられた[13]。霜害に強く、栽培桑が被害を受けたときに備えて養蚕地帯では霜害が割合的に少ない山地に植えて置き、栽培桑の緊急時の予備とした[3]。しかし、ヤマグワの葉質は栽培桑よりも硬いため、カイコの成長が遅くなり、飼料としては性質は劣る[3]北海道では、栽培種のクワの生育が困難だったため、開拓初期に各地でさまざまな試行錯誤が行われ、ヤマグワを用いて養蚕が行われた時もあった[16]

若芽や若葉を採取して、よく茹でてから水にさらして、おひたし、和え物、煮物などにして食べられる[12]。黒紫色に熟した「桑の実」は、甘くて美味しいと評されていて、一度にたくさん採れるのでジャムをつくることもできる[12]。焼酎を使った果実酒は、強壮薬としての作用があるといわれる[12]
国指定文化財

日本では以下が、天然記念物として国の文化財の指定を受けている。

薄根の大クワ群馬県沼田市

羽吉の大クワ〔新潟県佐渡市

マグワ

マグワ(真桑)は養蚕に使われるクワで、名称はヤマグワに対するものである[13]


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