クワ科 (学名 Moraceae) は、バラ目に属する被子植物の科の一つ。約40属、1000種以上(半分以上がイチジク属)あり、特に熱帯と亜熱帯に多い。 木本または一部草本で、よく知られる種ではクワ、イチジク、熱帯果樹のパンノキ、パラミツ(ジャックフルーツ)、観葉植物にされるインドゴムノキやガジュマルなどがある。花は小さい単性花で、穂状花序または頭状花序を作り、果実は集合果となるものが多い。特にイチジク属は特徴的な壷状の花序(隠頭花序)を作り、全体が1個の果実のように見える。 熱帯アフリカ産のミリキア属の2種(特にミリキア・エクスケルサ Milicia excelsa、シノニム: Chlorophora excelsa)はイロコの名で知られ、船舶・橋・車両・建築・床・つき板・桶といった様々な用途に用いられる耐久性の大きな材が得られる[1]。また中南米産のBrosimum 果実を食用として利用できる種が多い。日本で最も流通し有名なものはイチジクである。クワ属の実も一般に食用にでき、世界各地で食用にされる。日本でも養蚕地や山間地では子供のおやつなどとしてよく食べられていたという。ほかの種は熱帯のものが多く日本ではあまりなじみがない。 クワは樹皮、葉、果実などがそれぞれ漢方の薬となっている。 東南アジアやアフリカに分布するウパスノキ クワ属の葉はカイコ(Bombyx mori)という蛾の幼虫の餌として利用される。カイコは家畜化された昆虫であり、脚の力が弱く自力で木に登り葉を食べることができないので、人が葉を毟って飼育場に敷き詰めてやる必要がある。このため養蚕地のクワの樹は人が葉を採取しやすいように台刈萌芽で低く仕立てられた独特の樹形になっていることが多い。カイコの幼虫はクワの葉を食べて成長すると、繭を作り蛹に変態する。糸を取る場合はここで繭を茹でてから糸を取り出す。極細い繭糸数十本をより合わせて生糸にし、さらに生糸をアルカリ処理などをしたものを絹と呼ぶ。繭の中のカイコの蛹は茹でられたときに死んでしまうので、魚や家畜の飼料としたり人が食べたりした。カイコの蛹を食べる文化は日本の長野県をはじめ、アジア各地でみられる。 本科のコウゾ属の繊維は和紙の原料の一つであり、樹皮から繊維を取って利用する。コウゾから取れる繊維は木綿 (ゆう)や太布と呼ばれ布としても利用される。海外でも同じような製品があり、南太平洋のポリネシアなどで作られる布はタパ(tapa)と呼ばれる。 かつてはアサ科(アサ、ホップ、カナムグラなど)も含めていたが、現在は別の科とすることが多い。クロンキスト体系ではイラクサ目とし、APG植物分類体系ではイラクサ科、アサ科などとともにバラ目に入れている。 6連に分類される[5]
形態
Artocarpus lancifoliusの果実と種子
生態
人間との関わり
木材
食用
クワ科を代表する果物であるイチジク
クワの実もよく食用にされる
パンノキ
コウゾ属を炒めたタイ料理
薬用・毒
周囲に草も生えない樹として描かれるウパスノキ
飼料
カイコの一齢幼虫は黒い
クワの葉を食べるカイコの幼虫
極細の繭糸数十本をより合わせて生糸にする工程
生糸を紡ぐ日本の女性
群馬県にあった官営の富岡製糸場
絹
繊維
繊維を溶かした水溶液を何度も掬う和紙作り
ウミガメが描かれたタパ
タパ作りで歯を使い樹皮をむいているところ
観賞(Dorstenia
分類
下位分類
パンノキ連 tribe Artocarpeae
パンノキ属 Artocarpus
50種から60種程度含み、パンノキなど果実を食用にできるものが多い。形態学的特徴によって2亜属?4亜属に分けられる。
Artocarpus hirsutusの果実
Batocarpus
和名未定の属である。3?4種が中南米に知られる。
Clarisia
和名未定の属である。中南米に3種が知られる。
Hullettia
和名未定の属である。
Parartocarpus
和名未定の属である。南太平洋に2種が知られる。
Prainea - 4種
和名未定の属である。
Treculia - 3種
和名未定の属である。アフリカ大陸やマダガスカルに3種が知られる。T. africanaは「アフリカパンノキ」と呼ばれ、種子を食用とする。
Treculia africanaのイラスト
T. africanaの樹形
クワ連 tribe Moreae
Bagassa - 1種
和名未定の属。南米の熱帯雨林に分布するBagassa guianensis(和名未定)一種だけが知られる単型の属である。B. guianensisは樹高45m、胸高直径2mに達する大型種で雌雄異株。ゴムが取れるという。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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