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クワガタムシ(鍬形虫)とは、コウチュウ目・クワガタムシ科に属する昆虫のことである。雄では大顎が顕著に発達する種が多い。世界では約1500種類が知られていて、最大の種類は体長120mmに達する。カブトムシと並んで、子供から大人まで人気の高い昆虫である[要出典]。
クワガタムシの成虫は比較的飼育しやすいことから、古くからペットとしての扱いが一般化していた[要出典]が、近年では、開拓による生息地域の減少や、オオクワガタなどの採集、飼育ブームの過熱、外国産クワガタムシの輸入解禁により様々な環境問題及び社会問題が発生している[要出典]。 科名の和名であるクワガタムシとは、少なからぬ種の雄成虫が持つ巨大な大顎が、平安時代以降の武将が戦闘の際に被っていた兜についている「鍬形」に似ていることに由来する俗称
名称
英語では「Stag beetle」と表現され、stagは「雄鹿」、beetleは「甲虫」を意味し、フランス語では「Cerf-volant」と表現され、cerfは「鹿」、volantは「飛ぶ」を意味している。どちらも、クワガタムシの大顎を「鹿の角」になぞらえたものである。また、他のヨーロッパの諸言語、韓国語においても同様に「鹿の角」が由来の呼称が使われている。中国語では「鍬形蟲」と表現され、日本語に近い。 東南アジアが全体の2/3の種類が生息している分布の中心であり、熱帯アフリカがこれに準じる。東南アジア周辺のオセアニアやインド方面にも多い。ヨーロッパや北米では種類数が少ないが、南米に大型種が見当たらない。 日本列島では、39種が分布している(ヤクシマオニクワガタ
分布
本州島南方の島では、伊豆諸島の八丈島に固有種が多く、独立種ハチジョウノコギリクワガタとハチジョウコクワガタ、ハチジョウヒラタクワガタ、ハチジョウネブトクワガタの固有亜種、スジクワガタ、チビクワガタが生息している。一方八丈島以北の島は本土のものとあまり変わらず、伊豆大島から三宅島にかけてのイズミヤマクワガタ(亜種)のほかには御蔵島、神津島の極めて特殊な生態のミクラミヤマクワガタくらいで、本土のものと特に亜種が分かれず分布しているものもある。その先の小笠原諸島にはオガサワラネブトクワガタ、オガサワラチビクワガタが生息するが、大型種は見られない。対馬のクワガタムシは日本列島よりも朝鮮半島との関係が強い。朝鮮半島に広く生息するチョウセンヒラタクワガタ、キンオニクワガタのほか、ヒラタクワガタの亜種ツシマヒラタクワガタが対馬にも生息しているといった状況である。周辺の離島にもゴトウヒラタクワガタ、イキヒラタクワガタという亜種が点在している。日本付近でクワガタムシが最も栄えているのは南西諸島である。屋久島にヤクシマコクワガタ、ヤクシマスジクワガタ、ヤクシマオニクワガタ、ヤクシママダラクワガタの特産亜種亜種、その周辺の三島列島硫黄島と口之永良部島にノコギリクワガタ2亜種、トカラ列島にトカラノコギリクワガタ、トカラコクワガタの特産亜種とトカラ、ガジャジマ、ナカノシマのネブトクワガタ3亜種、奄美群島にはアマミシカクワガタやスジブトヒラタクワガタ、更には以南の奄美大島、徳之島、沖永良部島、沖縄本島、与那国島など多数の島々にマルバネクワガタ属4種2亜種やヒラタクワガタ6亜種、ミヤマクワガタ1亜種、リュウキュウノコギリクワガタ5亜種(基亜種含む)、アマミコクワガタ4亜種(基亜種含む)、ネブトクワガタ6亜種が集住している。徳之島にはヤマトサビクワガタが生息する。そのほかには大東諸島にはヒラタクワガタの亜種とダイトウマメクワガタが、硫黄島にはフィシコリスマメクワガタが生息している。 クワガタムシは、卵→幼虫→蛹→成虫という一生をおくる完全変態の昆虫である。総じてその生活を森林に依存し、幼虫は樹木をはじめとする何らかの枯死植物体を摂食して成長するため、カミキリムシ、タマムシ、ゾウムシ、キクイムシ、一部コガネムシなどとまとめて、食材性甲虫と類別されることもある。 成虫は、一般に夜行性のものが多く、灯火にも飛来するが、ルリクワガタ類やヒメオオクワガタのように、冷涼な高緯度地方や高い標高の地域に生息するものでは、日中活動するものもいる。成虫の食物は、大型種ではマルバネクワガタ属などを除くと、樹液や腐敗した果実などのように糖分とそこに繁殖した酵母菌を多く含む餌に集まる種が多い。こうした食物に集まる大型種を含む系統群(タクソン)自体が、このようなパッチ状に点在する餌資源を雌雄の出会いの場とすることで雄による雌を巡る激しい資源防衛(雌自身、或いは雌のやってくる餌場の独占)のための闘争行動を行うグループとして進化したと考えられ、これによって闘争の武器になる身体の大型化、雄の大顎の長大化といった一連の形態の進化が生じたと考えられている。さらにこうした繁殖戦略を持つクワガタムシでは、闘争による資源防衛の成功率が高くなるためには巨大な体躯が必要となるが、これを形成するのに必要な成長量が幼虫時代に確保できなかった雄でも、小柄で身軽な体を活かして餌場の周辺を資源防衛の勝者の目につかないようにうろつき、餌場の主が気がつく前にやってきた雌にアプローチして交尾に成功する性質も同時に進化した。つまり、雄の繁殖戦略自体が成長の履歴や自らの置かれた相対的な状況に応じて切り替えられるようになっているのである。これらのクワガタムシの雄が、しばしば個体によってからだの大きさに大きな変異があり、それに連動して大顎の形態にも大きな変異が生じる性質は、この行動上の繁殖戦略が形態面に反映したものと考えられている。こうした資源防衛戦略による大型化は複数のタクソンで複数回生じたと考えられており、例えば同じクワガタムシ科の中でもクワガタ属やノコギリクワガタ属などを含むタクソンと、ミヤマクワガタ属などを含むタクソンは、互いに独立にこの性質を獲得したと推測されている。このような食性のクワガタムシは飼育下では、昆虫ゼリーと言われる専用の人工餌が開発、市販されているので、これを与えるのが便利である。また、リンゴやバナナを与えてもよい。他に新芽や若枝に集まって大顎で傷をつけて出てきた汁を吸うもの、一生朽木の中で過ごし、朽木内の他の昆虫を捕食しているもの、成虫になってからの摂食活動(後食)をほとんどしないものも知られている。 幼虫は、同じコガネムシ上科に属するコガネムシ科の幼虫に似ているが、ほとんどのコガネムシ上科の幼虫では尾節に開く肛門が横に裂けて排泄時には上下に開くのに対し、クワガタムシ科の場合には肛門は縦に裂けて排泄時には左右に開き、この左右に座りだこ状の突起があるため区別できる。また、コガネムシ科の幼虫は腐植土などの比較的壊れた植物繊維質の餌を好むが、クワガタムシ科の場合には繊維質の残っている固めの餌を好む(次項参照)。幼虫期間は2年のものが多いが、飼育下では栄養素が高濃度で供給されるため、1年程度で成虫になる種類も多い。オオクワガタ、ノコギリクワガタ、ルリクワガタ類などでは夏-秋に産卵されたものは幼虫で1年目の冬を越し、翌年の秋に羽化して成虫になり、そのまま蛹室内で越冬する。低温でじっくり幼虫に餌を食べさせたほうが大型個体になりやすいと信じられている。 餌は、幼虫では木材が腐朽した朽木などの腐植質であるが、食性は大きく白色腐朽(白腐れ)材食、褐色腐朽(赤腐れ)材食、軟腐朽材食(黒腐れ)、シロアリによって生成した腐植食の4タイプに大別される。白色腐朽材食を獲得したタクソンは比較的新しく現れたものであるが、最も資源量が多いタイプの朽木を餌としており、地球上で最も繁栄しているグループである。クワガタ属やノコギリクワガタ属などが含まれるタクソンで、近年のクワガタムシ飼育ブームでも主要な対象種になっているものはこれに含まれるものが多い。古い型のクワガタムシでもキンイロクワガタ属などのように、一部この性質を獲得しているタクソンが散見される。木材粉砕物と栄養添加物を混合してビンに詰め、水蒸気で高温高圧滅菌して、その中でキノコの菌糸を純粋培養した、いわゆる菌糸ビンによる飼育の対象となるのは、この型のクワガタムシである。オオクワガタのように比較的乾燥した堅い朽ち木 幼虫の齢期は3齢までで、この段階で十分摂食して成長すると、蛹室と呼ばれる部屋を作って体色が濃くなり動かなくなる前蛹状態になり、脱皮によって蛹になる。ここから更にもう一度脱皮(羽化)して成虫になるが、羽化したての成虫には色がついておらず、特に大顎の根元や前翅は、色づき硬化するのに時間がかかる。多くの昆虫と同様、この硬化はキノン硬化と呼ばれる酵素反応で、外骨格を構成するキチンから成るシートに大量に埋め込まれたタンパク質分子が、相互にハイドロキノンと反応して架橋され、これによって物理的に硬くなると同時に褐色に着色する。同時にハイドロキノンからはメラニン色素も合成され、色はさらに濃くなる。 クワガタムシの天敵は、野生では、多くの鳥類が、成虫の捕食者としてあげられる。 幼虫はウマノオバチ、アカスジツチバチ また、生息環境破壊者という点から、またその場所に元々いない虫の放虫や常識の範囲[要出典]を超えた乱獲採集、過激[要出典]な材割り採集による生息地の環境破壊の面からも、人間は重大な天敵となっている。 頭部・胸部・腹部に分けられるのが、背面から見た場合、しばしば前胸背板が胸部に、後翅の部分が腹部に該当すると誤解されるが、前胸とは胸部の一部分であり、中胸・後胸・腹部が翅の下にあることは腹面から見ればわかる。 大顎は、クワガタムシの最大の特徴でもある。これはもともと採食器官としてほぼすべての昆虫にあるものが闘争用に発達したものである。餌場やメスの取り合いにおいて使用されると考えられている。
生態
成虫
幼虫
餌
天敵
体の構造