「クローン」のその他の用法については「クローン (曖昧さ回避)」をご覧ください。
「クーロン」、作成技術である「クローニング」、あるいは消化器疾患の「クローン病」とは異なります。
クローン(英語: clone)は、同一の起源を持ち、なおかつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団。もとはギリシア語で植物の小枝の集まりを意味するκλ?ν kl?n から。1903年、ハーバート・ウェッバー
(英語版)が、栄養生殖によって増殖した個体集団を指す生物学用語として“clone” という語を考案した。本来の意味は挿し木である。クローンとはすなわち、分子・DNA・細胞・生体などのコピーである。
分子クローン - DNAなど生体分子を複製して得られるコピーの分子のこと。
遺伝子クローン(DNAクローン) - 1つのDNAからDNAクローニング
これらは生物学実験や検査において、不可欠な技術である。クローンを作成することをクローニングと言う。
天然のクローンセイヨウタンポポの群落。おそらく1つのクローンである。
無性生殖は、原則としてクローンを作る。
単細胞生物の細胞分裂は当然クローンとなる。有性生殖をするまで、群落は1つのクローンである。
体細胞クローンは、年齢の異なる一卵性双生児を作る、という見方もできる[1]。
植物では栄養生殖がある。匍匐茎をのばして増殖する植物は、往々にして群落を形成するが、それらは同一のクローンから構成される。竹林、リンネソウはその例である。
一部の生物、特に三倍体の生物は、マクロには通常どおり種子や胞子を作っているようでも、減数分裂・融合を経ない無融合生殖を行い、子はクローンとなる。セイヨウタンポポが有名で、広大な範囲(アメリカのいくつもの州など)に渡るクローンを形成することもある。無融合生殖によるクローンは動植物を問わず見られる。ヤマコウバシは日本には雌株しか存在せず、一つの株のクローンであることが明らかとなっている[2]。
カビでは、体細胞分裂により生殖子を作る無性生殖が広く行なわれており、クローンの子孫が生まれる。分生子を作る子嚢菌や不完全菌、胞子嚢胞子を作る接合菌類である。
アリなど、有性生殖もする個体が単為生殖している場合は、通常、減数分裂を経ており、クローンではない。
カニの一種キンチャクガニは、左右のはさみにイソギンチャクをつけて、防御などに用いるが、このイソギンチャクが片方だけ失われると、カニはイソギンチャクを2つに引き裂く。引き裂かれたイソギンチャクは、クローンとなり、数日で元の大きさになる。これは、ある動物が別の動物の無性生殖を促す唯一の事例である[3]。 クローンは、遺伝的には均質であり、遺伝子という観点からは群落というよりはむしろ1つの個体であると言え、リチャード・ドーキンスなどはクローンを1つの巨大生物にたとえている。 天然にクローンを作る種では、進化により、それに応じた適応が生まれていると考えられる。具体的には、他のクローン個体に対する利他主義や、真社会性の進化が見られると予想される。雌が単為生殖により集団を作るアブラムシ類では真社会性のものが発見されているし、ヒドロ虫類など、無性生殖による群体を作るものには、分業が見られる例も多い。 適応という観点からは、親は自分のクローンのみを生めば、最も効率よく繁殖できることになる。しかしクローンでは遺伝的多様性が得られないため、単一の要因(伝染病、寄生虫など)により大きな被害を受ける可能性がある。このことが、クローンのみによる繁殖を行う種が少ないことの一因である。歴史的には、広くクローンで栽培されていたグロス・ミチェル品種のバナナが、パナマ病により絶滅した例がある。 植物については、古くから挿し木などのクローン技術が農業、園芸で利用されている。体細胞を材料とするクローンはメリクロン栽培として実用化されている。また、遺伝子をクローニングすることは、インスリン等さまざまな有用物質を生産する遺伝子工学や生物工学において、不可欠の技術となっている。 植物とは異なり、動物では、プラナリアやヒトデなどのごく一部の例外を除き、分化の進んだ体細胞や組織を分離してその細胞を動物個体に成長させることは、未だにできていない。分化の進んでいない(つまり多分化能を維持した状態の)受精卵ではそれが可能である。現在の技術では、胚や体細胞から取り出したDNAを含む細胞核を未受精卵に移植する「核移植」によってクローンを作成する。 人工的な動物個体のクローンは、ウニの胚分割により1891年に初めて作成された。さらに、胚細胞核移植およびに体細胞核移植によるクローンは、カエルのものが初めて作成された。哺乳類のクローンは、ヒツジのものが1996年に始めに作られた。細胞融合を必要とする体細胞核移植では、1998年にウシにおいてもクローンが作成された。細胞融合を必要としない体細胞核移植であるホノルル法によって、1997年にマウスのクローンが作成された。現在は、ホノルル法を用いて、ネコ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ブタ、ラット、ラクダ、サルなど多くの哺乳動物で、体細胞由来のクローン作成の成功例が報告されている。
クローンと進化
クローン技術
植物
胚分割
受精卵を分割して、それぞれから正常な個体クローンを作成する方法を胚分割という。この方法により初めての人工的なクローン動物が作成された。
核移植
クローン元の動物の細胞核を未受精卵に移植することによりクローンを作成する方法を核移植という。クローン元の動物の細胞核が、生殖細胞(胚細胞)由来の場合は胚細胞核移植、体細胞由来の場合は体細胞核移植という。分化した体細胞からクローンを作製するには、分化した核を飢餓状態に置き、細胞周期を停止させる。その後、核を除去した未受精卵と電気的刺激を与えることにより細胞融合を起こさせ、その後発生を促すことにより体細胞由来のクローンの胎子を作ることができる。1998年に若山照彦らは、体細胞を核を除去した卵子に直接注入することにより、細胞融合を行わずクローン個体を作製するホノルル法
クローン動物
ウニ
1891年にハンス・ドリーシュは、ウニの受精卵を分割して、それぞれから正常なウニの幼生を発生させることに成功した。これは初めて人工的に作製された動物個体のクローンであった。
カエル
未受精卵に胚細胞の核を移植する方法(胚細胞核移植)による最初のクローン動物は、1952年にロバート・ブリッグス