クローズドキャプション
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英語圏でクローズドキャプションを表す「テレビ枠内にCC」の図象

クローズドキャプション(closed captioning、CC)とは、テレビビデオほか映像ディスプレイに文字表示を出して追加補足情報を提供する字幕の一種。ここでは主に英語圏での状況について説明する。

主に聴覚障害者難聴の人がテレビ放送映像ソフトを楽しむためアメリカ合衆国で開発された米国方式のキャプション表示技術であり、視聴者側の設定で表示・非表示を切り替えられるのが特徴である。通常は番組内の音声箇所の文字起こしで使われ、たまに音声以外の説明が入ることもある。他の用途としては、映像に収録済みの主音声内容を代替言語で文字翻訳して提供するものがある。

現在最も親しまれているロゴは、テレビの枠内にクローズドキャプションの頭字語「CC」が入った図象である[注釈 1]

日本字幕放送文字多重放送とは異なる技術となっている。
用語

クローズドとは、視聴者リモコンやメニュー画面で「表示」を選択しない限りキャプションが表示されないものを言う。対して、視聴者全員が見ることになる表示形式をオープンキャプションと呼ぶ。

HTML5は、字幕とキャプションを次のように定義している。字幕とは、視聴者にとって「音声は聞こえるが内容を理解できない(例:外国語会話)場合を想定して、発話を文字起こししたり翻訳したもの」である。キャプションとは「音声が利用不能だったり明瞭に聞きとれない(例:音声がミュートだったり、視聴者が聴覚障害者難聴である)場合を想定して、発話のほかに、効果音、流れる音楽、その他関連する音声情報を文字起こししたり翻訳したもの」である[2]

アメリカ合衆国やカナダでは上述の使い分けをしているが、日本やイギリスほか多くの国では両者を区別せずに「字幕」を一般的な用語として使っている。上述のキャプションに相当するものは「聴覚障害者用の字幕」と呼ばれている[注釈 2]。なお、クローズドキャプションという用語はNTSC互換ビデオで使用される北米のEIA-608エンコード方式を指すのにも使われている。

大半の欧米市場では、テレビ、DVD、類似デバイス用のリモコンに字幕/キャプションの表示を制御するボタン(SUBやSUBTITLE)がついている。日本では「字幕」ボタンがあるリモコンを使うことで、上述のキャプションにあたる字幕放送を視聴可能である[3]。ただし日本では、こうした字幕対応の番組が放送時間全体の5割前後(2014年時点)に留まる[3]
歴史
オープンキャプション

オープンキャプション付きの定例放送は、1972年に米公共放送サービス(PBS)の番組『The French Chef』で始まった[4]。その後すぐにWGBH-TVが『Zoom』『ABC World News Tonight』『Once Once a Classic』の番組でオープンキャプションを始めた。
クローズドキャプションの技術開発

クローズドキャプションは、1971年にナッシュビル (テネシー州)で行われた聴覚障害者向けテレビについての第1回全国会議で初めて実演された[4]。1972年2月15日に二度目の実演がギャローデット大学で行われ、 ABC国立標準局が『モッズ特捜隊』の通常放送に組み込んだ形のクローズドキャプションを実証した。

クローズドキャプション方式は、1973年にPBS系列局WETA-TVの協力で導入放送された[4]。これら試験の結果として、1976年に連邦通信委員会(FCC)は、クローズドキャプション送信用に21局線を確保した。PBSの技術者が、事前収録済み番組のキャプションに使用されるキャプション編集機器を開発した。

イギリスの英国放送協会(BBC)は、1979年に事前収録済み番組のテレテキスト(文字放送)を基本とするクローズドキャプションを導入した最初の放送局である[5]

リアルタイムキャプションは、1982年に米国立キャプション研究所 (National Captioning Institute) により開発された[4]。リアルタイムキャプションにおいて、字幕速記者はステノタイプで毎分225語を超える速さでの入力を訓練し、生放送のニュース、スポーツ、娯楽番組でも視聴者が即時見られるようになった。結果、視聴者は会話の2-3秒以内に喋っている内容のキャプションを見られるようになっている。

米国では主にWGBH-TV、VITAC、CaptionMax、国立キャプション研究所がキャプション製作を行っている。イギリスやオーストラリア周辺地域ではRed Bee MediaやIndependent Media Supportなどが販売元として知られている。

音声認識技術の向上が、生放送キャプションを完全または部分的に自動化させている。BBCスポーツ放送では、喋っている解説を自動化された文字生成システムに(慎重な発音と若干の単純化そしてマークアップ言語を使って)繰り返し吹き込む「リスピーカー」という訓練済みの人材を使っている。これは一般に信頼性が高いが、失敗がないとは言い切れない[6]
全面的なクローズドキャプション

米国立キャプション研究所は、商用テレビ放送網と連携をとる目的で1979年に設立された[7]

米国のテレビで、定例予定が組まれたクローズドキャプションの初使用は1980年3月16日のことである[8]シアーズが標準的なテレビに接続可能な字幕表示機器テレキャプション・アダプターを開発して販売した。キャプション付きで視聴できた最初の番組は、 NBCでは『ディズニー・ワンダフル・ワールド』提供の映画版『Son of Flubber』、『ABCサンデーナイトムービー』で放映した『Semi-Tough』、公共放送のPBSでは『マスターピース・シアター』だった[9]

イギリスのBBCは、主要なBBC One、BBC Two、BBC Three、BBC Four、CBBC、Cbeebies、BBC Newsの放送7チャンネル全てで100%キャプション付きの放送サービスを提供した。放送チャンネルで提供されるのと同等のキャプションを満たす、主要放送局の発信による初のキャプション付きビデオ・オン・デマンドサービスとして、2008年にBBC iPlayerが開設された。
米国での法整備

1990年のテレビデコーダ回路法案(Television Decoder Circuitry Act)が可決されるまで、テレビのキャプションは三洋電機が製造して米国立キャプション研究所が販売するセットトップボックスにより変換表示されていた(当時この機器は約200ドルでテレビと同等の価格だった)。製造側との討議を通じて、単体の箱よりもテレビに適切な回路を組み込むほうが安価になるであろうことが確約され、当時三洋の従業員だったロナルド・メイが三洋とギャロデット大学の代表者として専門家証人の証言を出し、法案の可決を後押しした。1991年1月23日にこの法案が議会で可決され[4]連邦通信委員会(FCC)にクローズドキャプションの実装に関する規則を制定する権限を与えた。この法律は、1993年7月1日までに販売・製造された13インチ以上の画面を持つ全てのアナログテレビ受信機にクローズドキャプションの表示機能を備えるよう義務付けるものだった[10]

また1990年に、障害を持つアメリカ人法(ADA)が可決されて障害者の平等な機会が保証された[7]。ADAは公共の場や商業施設での障害者差別を禁止しており、同法の第3編が病院、バー、ショッピングセンター、博物館といった公共施設(映画館は除く)のテレビ、映画、スライドショーに発話情報を表示することを義務付けている。

FCCは、英語やスペイン語の音声がある素材のキャプションを番組の発信側全員(委員会規則79.1(d)の特殊例外を除く)[注釈 3]に義務付けている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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