クロスバー交換機
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クロスバースイッチ

クロスバースイッチは、縦方向に並行した複数の通信路と横方向の同様な通信路の交点にスイッチを設け、これらのスイッチ群を制御することで、対向する通信路との専有経路を動的に構築する構造である。クロスバー電話交換機で金属棒が交差している状況から「クロスバー」スイッチと呼ばれるようになった。

このスイッチは、主に以下のような機器で使用されている。

クロスバー電話交換機で使われるスイッチ

スイッチングハブに使われるスイッチングアレイ

マルチプロセッシングでのプロセッサ間通信(Inter Processor Communication)に使われるスイッチ

クロスバー交換機クロスバー交換機ラインリンク架 (電電公社CA400号)クロスバースイッチの動作原理

クロスバー交換機は、電話網においてクロスバースイッチを用いる自動電話交換機である。電話通信に携わる者を中心に「クロスバ交換機」とも表記された[1]
歴史

1926年にスウェーデンでエリクソン製のものが世界で初めて使用開始された。1938年にアメリカ合衆国のベルシステムによって完成された1XB(英語版)(1号クロスバー交換機)が都市ブルックリンで実用化された。これが当時のアメリカ電気学会 (AIEE) 誌で発表されると日本の技術者も注目し始めた[2]

日本では1955年に日本電信電話公社(電電公社)が群馬県高崎局、安中局、倉賀野局においてアメリカ合衆国のケロッグ社 (Kellogg Switchboard and Supply Company) 製7号クロスバー交換機を試験的に導入し、運用を開始した。特に日本ではステップ・バイ・ステップ交換機が普及していたことから、この既存設備からの移行が容易なクロスバー交換機を開発する必要があった。1953年より郵政省電気通信研究所と日本電気が日本国内での製品化に向けて共同開発を進め、1956年に栃木県の三和局へ導入された第二種クロスバー自動交換機(後のC2形)を始めに、改良と並行して他の電話局にも順次導入された[2]

市内系だけでなく市外系(中継交換)でも使われた。1995年3月24日、宮崎県の木城交換所で最後の運用を停止し、制御部にコンピュータを用いた電子交換機に置き換えられた。
特徴

ステップ・バイ・ステップ交換機と比較して、クロスバースイッチは交点がダイヤルパルスに縛られることもなく接点数を増やすことができ、摺動部分も無いことから次のことが可能となった。

伝送路の有効利用で、市外通話ダイヤル自動即時化が可能となった。

通話料金の広域時分制が可能となった。

制御回路の配線を変更することで、付加機能の変更が可能である。

電話機側のダイヤルの高速化が可能となり、日本ではそれまでの10pps(パルス毎秒)のものから、20ppsの物が採用された。ただし、10ppsの電話機も従来通り接続できる。

プッシュ交換化(DTMF対応)が可能となった。

制御方式は布線論理(ワイヤードロジック)であり、全ての動作ロジックはハードウェアで決定されている。ダイヤルパルスDTMFなどの電話番号情報のアナログ信号を一時的に記憶し、共通制御回路で通話路制御などを行っている。

料金・サービスなどの変更の際、全ての交換機の配線変更が必要で、非常に時間と手間とがかかるものであった。
日本のクロスバー交換機形式東京・西大森局のC400形クロスバー交換機

日本では日本電信電話公社がクロスバー交換機の仕様を標準化し、複数の電機メーカーが部品単位で製造していた。形式はC1からC4が加入者線交換機(端局相当)、C5からC8が中継線交換機(集中局相当)、C9は特番受付用で、その中でも接続方式によって分かれている[2]。これらは1960年代にかけて高密度化、低廉化、建設や運用の容易化、プッシュ式ダイヤルなどの新サービスへの対応のため改良が続けられた。

初期のクロスバー交換機は導入費用がステップ・バイ・ステップ交換機に劣っていたため、1965年にC400形が開発されるまで、加入者数が多い都市圏への導入は進まなかった。

1963年12月から電電公社と電機メーカー4社が共同開発したC400形クロスバー交換機は、優れた経済性から市内電話交換機の完成形とされ[3]、1966年3月に西大森局で使用開始、その後は標準形として全国的に導入された[4]

日本のクロスバー交換機開発当初のラインナップ[要出典]機種適用階梯フレーム最大収容加入者数
または
最大トラヒック容量
線式段
C1加入者21(2)240
C2加入者22端局800
従局1000
C3加入者245320
C4加入者231000以上
C5中継2213600HCS
C6中継2460000HCS
C7中継42
C8中継44120000HCS
C9特殊22

日本のクロスバー交換機の方式限界[要出典]機種最大端子数総呼量加入者呼量
アーランHCSアーランHCS
C11192×216×216×20.0833
C228006724000.0833
C46012600538193600.044?0.211.59?7.56
C400614402752660720.045?0.271.62?9.68

脚注[脚注の使い方]^ “ ⇒"意外と知らない!電話・通信の仕組み|Voice from NTT東日本"”. 東日本電信電話株式会社. 2016年12月7日閲覧。
^ a b c 日本電信電話公社電信電話事業史編集委員会『電信電話事業史 第3巻』電気通信協会、1960年、65-74頁。 
^ “『電話加入の積滞解消を実現した高機能クロスバ交換機』として 「C400形クロスバ交換機」が国立科学博物館「未来技術遺産」に登録 。ニュースリリース 。NTT”. group.ntt (2017年9月5日). 2023年3月5日閲覧。
^ 『通信工業20年の歩み』通信機械工業会、1968年、168頁。 

外部リンク

2 章 電話交換システム - 電子情報通信学会知識ベース (PDF)

"日立評論1967年2月号 C400形自動交換機" (PDF)

"日立評論1963年10月号 改良形C41 51形クロスバ交換機" (PDF)

"日立評論1963年10月号:AX2D形クロスバ交換機の標準化" (PDF) 構内交換機の説明だがクロスバー交換機の接続の実際についての図表がある。

"NTT技術資料館 ノードの技術(交換、ソフトウェア)"

関連項目

交換機

電話交換機

甲府信金OL誘拐殺人事件 - 犯人が脅迫電話をかける際に使った公衆電話を割り出すため、通話を終えクロスバー交換機が回線を解放する際に出るパルスノイズのパターンを総当りで探査する手法が取られた。

マトリックススイッチャ










テレコミュニケーション
通信

通信工学

無線工学

電波工学


交換工学

トラヒック理論


電磁気学

マクスウェルの方程式

電磁波

電波/光波

周波数/波長


アンテナ(空中線)


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