クロスオーバー(Crossover)とは、ジャンルの垣根を乗り越えて音楽性を融合させるスタイルを指す音楽用語である。 1970年代前半に流行した、電気楽器や電子楽器を取り入れたジャズの演奏スタイルの一種。1960年代後半より、電気楽器やロック風な奏法を取り入れた新しいジャズ・スタイル、ジャズ・ロックやエレクトリック・ジャズ[1]が生まれた。マイルス・デイヴィスらはジャズの停滞状況を乗り越えるべく、新しいサウンドに挑戦していた。アメリカのスタジオ・ミュージシャン達は、ジャズにラテン音楽やロックを融合し、ジャンルの垣根を乗り越えた「クロスオーバー」音楽を生み出していった。 1970年代には、デオダート、ボブ・ジェームスらアレンジャーがアルバムを発表した。1973年には、デオダートが、アルバム『Prelude』を発表。クラシック作品をエレクトリック・ジャズにアレンジした「ツァラトゥストラはかく語りき」がジャズとしては異例のヒットとなった[2]。同曲は「クロスオーバー」の最も初期の有名曲であり、日本でもNHKFMを中心にさかんにオンエアされた。1973年に発表した『Deodato2』でもジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」をカバーした。またデオダートをサポートしていたのがプロデューサー、クリード・テイラーのCTIレコードである。同レーベルではヒューバート・ロウズがイーゴリ・ストラヴィンスキーの春の祭典をアレンジした曲を発表したが、これはヒットには至らなかった。 70年代前半には、チック・コリア、キース・ジャレット、ハービー・ハンコックらも、クロスオーバーの作品を発表した。ハンコックは、「ヘッド・ハンターズ」(1973年)のようなファンク・リズムを取り入れたアルバムも制作した。 ロックのクロスオーバーは、時代や音楽性ごとに細かく区分されている。ブルース・ロックやジャズ・ロック、ラテン・ロック、ファンク・ロックなどが挙げられる。 ロックが1960年代に発展する過程で、ブルースを融合、クロス・オーバーさせたブルース・ロックが登場した。エリック・クラプトン[3]のクリームやジミ・ヘンドリクス、フリートウッド・マック、ポール・バターフィールド、ジョン・メイオールなど、演奏能力に長けたバンドがブルース・ロック・ブームをまき起こした。サンタナはロックにラテンを融合することで、「ラテン・ロック」のアルバムを発表した。さらに、コロシアムやソフト・マシーン、ニュー・クリアスらジャズとロックを融合したジャズ・ロックを生み出し、ロックにクラシック音楽を取り入れたエマーソン、レイク&パーマー[注 1]、イエスなどのプログレッシブ・ロックが発展していった。
ジャズのクロスオーバー
代表的なアルバム
デオダート - 「プレリュード」
ボブ・ジェームス - 「Two」
ジャズ・クロスオーバーの主なアーティスト
デオダート
ボブ・ジェームス
ジャン=リュック・ポンティ
ハーブ・アルパート
スティーリー・ダン
スウィング・アウト・シスター
ロックのクロスオーバー