この項目では、衝突地形について説明しています。その他の用法については「クレーター (曖昧さ回避)」をご覧ください。
アポロ11号が撮影した月面のクレーター
クレーターとは、質量衝突によって作られる円形に窪んだ地形。英語のcraterに由来するが、英語の場合は衝突・火山活動・爆発・陥没など成因を問わず『円形に窪んだ地形』すべてを指し、質量衝突によるものは"impact crater"(衝突クレーター)と表記される。
クレーターは典型的には、隕石・彗星・小惑星・微惑星などの天体衝突によって円形の盆地とそれを取り囲む円環状の山脈であるリムが形成される。実際にはさまざまな形態がある。天体衝突によるクレーターは英: Astrobleme、隕石によるクレーターは隕石孔(いんせきこう、英: meteorite crater)とも表記される。
"crater"の語源はギリシャ語で「ボウル」「皿」を意味する語で、コップ座の学名はCrater(クラテル)で、同じ語源である。
1609年にガリレオ・ガリレイが、月面を天体望遠鏡で観察し、多数の円形の凹地を確認したが、ガリレオは「小さな斑点」と呼んでいる。 この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方)
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出典検索?: "クレーター"
クレーターにはさまざまな形があり、主に以下の要素により決定される。
天体の運動エネルギー。運動エネルギーは質量と相対速度で決まる。当然、運動エネルギーが大きいほど、クレーターは大きく、深くなる。
天体の入射角。極端に角度が浅いときは楕円形のクレーターができる。
表面重力。
大気の有無、あればその密度。
衝突地点の地質。
侵食の有無、性質、期間。
エネルギーさえ同じであれば、重い天体がゆっくり衝突しても軽い天体が高速で衝突しても、組成が岩石でも氷でも、あるいは衝突でなく核爆発でも、ほぼ同じクレーターができる。入射角も影響せず、非常に浅い場合を除き常に円形のクレーターができる。クレーター研究の初期にはこのことが十分に理解されておらず、月のクレーターが全て円形であることが、それらの原因が天体衝突でないと主張する根拠にもなった。
構造
クレーター底
クレーターの内部の平らな部分。非常に小さなクレーターは、平らな底を持たない。
縁(クレーターリム)
クレーターの周囲を取り囲む盛り上がった部分。大きなクレーターでは山脈と認識される。
クレーター壁
クレーターの底から外部へ向かう時の急激な立ち上がり部分。縁の内壁。
中央丘
クレーター中央部に見られる丘状の凸部。大きなクレーターに見られることが多い。
光条(レイ)
クレーターから放射状に延びる明るくアルベドの高い(白い)筋状の構造。月など大気のない天体に多い。
洪水溶岩
大型のクレーターの底が溶岩で埋まって平原となったもの。氷衛星では岩石の代わりに氷で埋まる。
2次クレーター
衝突の噴出物が落下したことによる2次的なクレーター。
堆積物
地球や火星では、底が堆積物に埋没することがある。
形態詳細は「天体衝突構造(英語版)」を参照単純クレーター(上)と、中央丘を持った複雑クレーター(下)。
クレーターはその直径によって異なった形態を示す[1]。
最も小型のクレーターは、断面が単純なお碗形をしており、単純クレーターと呼ばれる。単純クレーターの直径と深さには比例関係があり、岩石天体の場合は直径のおよそ0.2倍、氷天体の場合は0.1倍の深さになる。
衝突の規模が大きくなるとクレーターの形態は複雑クレーターという埋め立てられた平らな底部を持つクレーターに変化する。このサイズのクレーターは中心に中央丘を持つことが多く、中央丘クレーターとも呼ばれる。クレーターの規模が大きくなると共に中央丘はより顕著になり、次第にリング状の構造を示しはじめる。このようなクレーターは中央リングクレーターと呼ばれる。さらに、最大規模の衝突では同心円状の複数のリング構造を持った多重リングクレーターが形成される。
クレーターの形態はある一定の直径を境に単純クレーターから複雑クレーターに変化するが、その値は月の場合は15 - 20km、水星では10km、火星では5km程度である。重力が強い天体は一般的に複雑クレーターが形成されやすくなる。また、地表を構成する物質の性質によってもこの値は変化し、氷天体では同程度の重力を持つ岩石天体と比較して複雑クレーターが形成されやすい。
なお、隕石が非常に浅い角度で衝突すると、楕円状や涙滴状のクレーターが形成される。地球ではアルゼンチン・コルドバ州のリオクアルトクレーター(Rio Cuarto craters)が知られており、月の豊かの海にあるクレーター、メシエ(Messier)や火星のクレーターOrcus Pateraもその一例である。 クレーターの成因については、様々な説が唱えられた。1787年にウィリアム・ハーシェルはクレーターは火山の火口であるという論文を発表した。それに対し、1829年にフランツ・フォン・パウラ・グルイテュイゼン(Franz von Paula Gruithisen)は、クレーターは天体の衝突によって生じたという説を発表した。 当初は火山説の方が有利であった。これは、 などが理由としてあげられる。 1960年頃から、地球のクレーターで隕石の衝突を裏付ける高圧で変成された岩石が発見されたり、アポロ計画での月面で採取された試料の分析が行われたり、より正確な衝突条件を反映した高速衝突実験が行われて、衝突説を支持する結果が多く得られた。現在では月のクレーターの大部分は衝突によって生じたものと考えられている。 上記の火山説を支持する証拠に対しては と反論できる。 衝突説を支持する証拠としては以下のようなものがある。
月面にある多重リングクレーター(英語版)である東の海
ボイジャー1号が撮影した木星の衛星カリスト上の多重リングクレーター、ヴァルハラクレーター(英語版)
成因論
月のクレーターはほとんどが円形であるが、泥に石などを衝突させる実験などでは真上からの衝突で無い限り楕円形のクレーターしかできないこと。
月の海(いわゆるうさぎ模様の部分)にはクレーターがあまり存在せず、分布に著しい地域性があること。これは地球の火山帯に対応していると考えられた。
クレーターの重なり方が大きなクレーターの上に小さなクレーターが重なっているものばかりであり、これは徐々に月の内部が冷却して火山活動が弱まっていった結果として説明しやすい。
当時の衝突実験では衝突させた石の速度は、隕石の月面に対する相対速度(数十km/sに達する)よりもはるかに遅く、実際に起こっている衝突を反映しているものとは言えない。高速衝突実験においては衝突時の衝撃波で衝突物の直径の10倍以上の範囲の地面が掘削されてクレーターは円形となることが分かっている。楕円形のクレーターは入射角が10度以下になるような限られた場合しかできない。
アポロ計画で採取された岩石の年代測定の結果、月の海ができた時期は衝突が多数起きた時代よりも新しい(月の海も参照のこと)。
重なり方の傾向は、小さなクレーターの上に大きなクレーターを作る衝突が起こると衝突による地殻変動が周辺にも及び小さなクレーターの構造は完全に破壊されてしまうためと考えても説明可能。
アポロ計画で採取されたクレーター周辺の石から高圧で変成された岩石が見つかっている。
アポロ計画で採取された石から直径1mm以下のクレーターが見つかっている。
大きなクレーターでは月全体に噴出物が撒き散らされているが、月の質量ではそのような規模の爆発を起こすだけの火山を生成できない。
月の岩石から生成する溶岩の粘性は地球上のそれに比べて著しく低いために、火口には明瞭な盛り上がった縁ができない。(なお、月には少数ながらも縁の盛り上がりの無いクレーターがあり、これらは溶岩の噴出で生じたものと考えられている)
クレーターが円形であるにもかかわらず、一方向だけに光条が延びる現象は斜め方向からの高速衝突実験で確認されている。
月のクレーターの直径と深さの間には一定の関係式が成立する。