クリダステス
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クリダステス
かつて C. liodontus とされた骨格
地質時代
後期白亜紀コニアシアン - カンパニアン, 85?80 Ma Pre??OSDCPTJKPgN
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:爬虫綱 Reptilia
亜綱:双弓亜綱 Diapsida
:有鱗目 Squamata
亜目:トカゲ亜目 Lacertilia
:モササウルス科 Mosasauridae
亜科:モササウルス亜科 Mosasaurinae
:クリダステス属 Clidastes

学名
Clidastes
Cope1868



C. propython Cope, 1869(タイプ種)

C. iguanavus Cope, 1868(以前のタイプ種)

クリダステス(学名: Clidastes)は、モササウルス科に属する絶滅した海生トカゲの属。モササウルスプログナトドンといった属とともにモササウルス亜科に分類される。本属はアメリカ合衆国の後期白亜紀コニアシアンからカンパニアンにかけての堆積層から知られている。

属名は「閉じた脊椎」を意味し、ギリシャ語で「鍵」を意味するκλειδ?(ラテン語で「閉じた」を意味する claudere の類義語) に由来する。これは、脊椎の突起が頭骨の近位部を固定して遊泳時の安定性と強度を増していたことを反映している。

本属は最初期の hydropedal[注 1]なモササウルス科爬虫類であり、ティロサウルスプラテカルプスといった他の初期の hydropedal な属と共に、初期の海洋捕食動物の形態を代表する[1]。本属は浅海に生息する頭足類魚類その他小型脊椎動物を捕食した、機敏な遊泳動物であった可能性が高い。
形態C. propython の復元図

クリダステスは最小のモササウルス科爬虫類の1つ(既知のもので最小のものはダラサウルス)であり、平均的な全長は2 - 4メートル、最大で全長6.2メートルである[2]。属名は、遊泳時の安定性と強度のため、椎骨の突起により軸骨格の近位部が固定されていることを反映している。椎骨は互いに固定されているが、生きていた頃には水平の可動域は広く、浅海域で高度な遊泳を可能にしていたと推測されている[3]。さらに尾椎と背骨全体の強化は、遊泳に役立つ筋肉の附随を可能とした。体は繊細かつスリムで、尾の先端近くでは神経棘が発達し、素早い獲物の追跡も可能になっていた。クリダステスの前肢のイラスト。サミュエル・ウェンデル・ウィリストンの The Osteology of the Reptiles (1925)

標本が十分な代表権をもち、研究も進んだため、Russell (1967)[4]では、本属の明確な特徴が幅広く列挙されている。

前上顎骨歯の前方には小さな吻が突出するか、存在しない。

上顎骨歯は14 - 18本である。

前前頭骨は外鼻孔の後外側境界の一部を形成するし、幅広な三角筋稜が上眼窩翼から側方へ突出する。

前前頭骨と後眼窩前頭骨が眼窩の上で広く分かれる。

前頭骨の側方縁が直線に近く、前方で収束し、中央の背側隆起が弱い。

後眼窩前頭骨の頬骨への腹側突起が、後眼窩前頭骨の広く露出した背側表面と合流する。

頬骨には腹後側突起が存在しない。

頭頂孔が小さく、完全に頭頂骨の中に位置する。

背側頭頂骨表面の縁が互いに平行で、分岐した懸垂状の枝の後側基部へ頭蓋の正中線が伸びる。

方形骨の翼状突起が縮んで内側へ向かい、頭頂骨の枝に触れる。

Otosphenoidal の突起が前耳骨に覆われ、第VII脳神経の外側へ存在する。

翼状骨歯は14 - 16本である。

方形骨の上あぶみ骨突起がやや大く、鼓膜弓が非常に厚い。

あぶみ骨の窪みが楕円形をなす。

歯骨歯は16 - 18本である。

第1歯骨歯の前方に歯骨の小さな突起が存在する。

内側翼が角骨もしくは冠顎骨に触れる。

上角骨の背側縁の非常に薄い薄層。冠顎骨の後側表面の高い位置に前方へ生じる骨に存在する。

関節後突起が三角形で、重厚な背側突起が備わる。

下顎の歯の多くが縮んでおり、二股に分かれ、表面は滑らかなエナメル質である。

ラッセルは C. propython と C. liodontusに基づいて特徴を記述し、C. sternbergii(後にエオナタトルとして独立)や C. iguanavus には必ずしも当てはまらない[4]
歯とその生え変わりサミュエル・ウェンデル・ウィリストンの The Osteology of the Reptiles (1925) より、クリダステスの頭骨

モササウルス科の歯はグロビデンスなど例外はあれど統一された形態を示しており、尖って湾曲した歯冠は骨を含む肉茎の上にある[5]。エナメル質の表面は滑らかで、歯冠は舌側表面と唇側表面に細分される。歯冠の外側表面はエナメル質からなり、内側の層は象牙質からなる[5]。化石標本からは垂直に歯が生え変わる派生的なシステムの根拠が見受けられる。水平面が後側へ傾斜した配置で歯が生え変わる有鱗目はヘビだけであると考えられている。ヘビは通常のオオトカゲ上科の生え変わりパターンから逸脱しており、 傾斜した位置で歯が発達して回転するが、モササウルス科に見られる歯の収容のための窪みを持たない[5]

クリダステスを含むモササウルス科およびヘビは、いずれも槽生歯の特徴を共有し、生え変わり歯が横に位置する点も共通する。しかし、モササウルス科の生え変わり歯は窪みの中で回転することで生え変わっており、この溝は機能的な歯の基部に位置する。ヘビの持つ生え変わり歯は水平に横たわっていて、必要とされた際に機能的な位置へ回転するため、ここがヘビとモササウルス科の歯の生え変わりの相違点である。クリダステスなどのモササウルス科爬虫類では、機能的な歯が失われると、新しい歯の肉茎が成長して置き換わる。モササウルス科は通常哺乳類主竜類に見られる歯周靭帯による繊維質の歯の接触ではなく、真に歯が固着しているため、彼らの槽生歯の歯列パターンとは異なる[6]

クリダステスといったモササウルス上科の辺縁歯は前上顎骨上顎骨歯骨に見られる。歯骨の背側表面には歯骨間の隆起が存在し、これにより歯が唇側へ分けられる。これらの隆起は既に存在する歯の間に次の歯が成長する助けとなる[5]
産出

クリダステスは現在アメリカ合衆国の海成層から産出する。しかし、過去にはスウェーデン[7]ドイツ[8]ロシアメキシコ[9]ヨルダンマーストリヒチアン[10]から本属に割り当てられた標本が発見されている。とはいえ、Lively (2019) では、これらの標本は断片的であり、モササウルス科の他の属種から独立しうる子孫形質を欠いているため、クリダステスに割り当てることに疑問が呈されている[11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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