クリスマス・プディングの冒険
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クリスマス・プディングの冒険
The Adventure of the Christmas Pudding
著者
アガサ・クリスティー
発行日1960年
1960年(早川書房
発行元
早川書房ほか
ジャンル推理小説
イギリス
前作鳩のなかの猫
次作「二重の罪」ほか

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『クリスマス・プディングの冒険』(クリスマス・プディングのぼうけん、原題:The Adventure of the Christmas Pudding)は、1960年に刊行されたアガサ・クリスティ推理小説の短編集、および収録されている短編のタイトル。最初の5編はエルキュール・ポアロ、最後の1編はミス・マープルが主人公で構成される。
概要

本短編集で完全に新作なのは「クリスマス・プディングの冒険」と「グリーンショウ氏の阿房宮」だけで、以下に挙げるように他は再収録作品およびそれに類する作品である。

「スペイン櫃の秘密」(The Mystery of the Spanish Chest) - 「
バグダッドの大櫃の謎」(The Mystery of the Bagdad Chest)の改編。

「負け犬」(The Under Dog) - 短編集 "The Under Dog and Other Stories"(1951年刊行)収録

「二十四羽の黒つぐみ」(Four-and-Twenty Blackbirds) - 短編集 "Three Blind Mice and Other Stories" (1950年刊行)収録

「夢」(The Dream) - 短編集 "The Regatta Mystery"("The Regatta Mystery and Other Stories"とも、1939年刊行)収録

そのため、早川書房クリスティー文庫(ハヤカワ・ミステリ文庫)版では重複を避けるために、該当する短編集から話が削除されている。
黄色いアイリス』(1980年)
底本は『The Regatta Mystery』(レガッタ・デーの事件、1939年)。「夢」を削除。
愛の探偵たち』(1980年)
底本は『Three Blind Mice and Other Stories』(「三匹の盲目のねずみ」ほか、1950年)。「二十四羽の黒つぐみ」を削除。
教会で死んだ男』(1982年)
底本は『The Under Dog and Other Stories』(「負け犬」ほか、1951年)。表題作「負け犬」を削除。
各話あらすじ
クリスマス・プディングの冒険

(原題: The Adventure of the Christmas Pudding)(1923年)主人公:エルキュール・ポアロ

ある東洋の国の将来王となる見込みで近々結婚を控えている人物が、ロンドンで怪しい女と浮気をして由緒あるルビーを持ち逃げされてしまう。事件の捜査を依頼されたポアロは、あるカントリーハウスでのクリスマスに招待される。そこには屋敷の主であるレイシー大佐夫妻、夫妻の孫娘サラ、孫コリン、コリンの学友マイケル、コリンとマイケルと同い年でレイシー夫人の大姪ブリジット、レイシー夫人の若い従妹ダイアナ、家族の友人デイヴィッド・ウェルウィンが滞在している。レイシー夫妻は、サラがデズモンド・リー=ワートリーという若い男爵と交際していることに不安を感じており、彼がサラにふさわしくない人物であることを証明するために、彼をも招いており、彼は病み上がりの妹と一緒に滞在している。

一同は盛大なクリスマス・ディナーを行うが、クリスマス・プディングを食した際、大佐は自分のプディングに入っていた赤いガラスのかけらを喉に詰まらせそうになり、ポアロはそのかけらを預かる。

コリン、マイケル、ブリジットは、ポアロの探偵能力を試すために一計を案じ、ブリジットが雪の中の死体を演じるが、倒れていたブリジットを検分したポアロは、彼女が本当に死んでいると言い、コリンとマイケルはショックを受ける。そこに加わったリー=ワートリーにポアロは脈を確認するように言い、死んだ少女の手にはプディングから出てきたルビーのようなガラスのかけらが握られていることを指摘する。リー=ワートリーは唖然とするが、そのかけらを拾って警察を呼びに行く。

ポアロは皆を家に連れて行き、リー=ワートリーが犯罪者であり、いくつかの事件に関与していることを明かす。彼の「妹」は東洋の王子からルビーを奪った若い女性で、二人はこの地まで追跡されたのだった。ポアロは子どもたちの計画を知ってブリジットにさらなる演技を頼み、彼女が握っていたのはポアロが持ち込んだルビーのイミテーションだった。本物のルビーはリー=ワートリーと「妹」が新年に食べるはずのプディングに隠したが、偶然クリスマスに供されてしまったのだった。
スペイン櫃の秘密

(原題: The Mystery of the Spanish Chest) (1939年)主人公:エルキュール・ポアロ

ポアロは新聞で「スペインの謎」の最新記事に目を止め、ミス・レモンに事件の概要を調べてもらう。事件当時、チャールズ・リッチ少佐が自宅アパートで小さなパーティーを開いていた。招待客はクレイトン夫妻、スペンス夫妻、マクラーレン中佐である。直前になって、エドワード・クレイトンは仕事でその晩スコットランドに出張しなければならなくなり欠席した。彼はパーティーの少し前にマクラーレンとクラブで会って欠席することを説明し、駅に向かう途中でリッチの自宅に詫びに立ち寄った。リッチはあいにく留守だったが、下男のバージェスが彼を家に入れ、メモを書き残そうとするクレイトンを居間に残して自分は台所に戻った。10分ほど後にリッチが帰宅し、バージェスは用事で外出したが、リッチはクレイトンを見かけなかったし、バージェスもクレイトンを居間に残した後見ていなかった。その晩のパーティーはつつがなく行われたが、翌朝バージェスは部屋の隅にあるスペイン製の櫃から血痕のようなものが染み出てラグを汚しているのに気付き、驚いて櫃を開けるとクレイトンの刺殺死体があった。

警察はリッチを容疑者として逮捕するが、ポアロはリッチが犯人であれば死体の近くで平然と一夜を過ごしたことに納得がいかない。クレイトン夫人に会った彼は、彼女の美しい純真さに心を打たれ、(彼女自身は否定するが)彼女がリッチ少佐に惹かれていることに気がつく。パーティーの関係者たちは、誰もがクレイトン夫人の魅力と対称的な夫の感情の無さに同意する。ポアロは事件現場で櫃を調べ、背面と側面にいくつかの穴を見つけ、殺人のあった夜、衝立が櫃の前に置かれていて人目から隠されていたことを知る。スペンス夫人が使った『オセロ』の言葉を思い出し、ポアロは真相に気づく。クレイトンはオセロで、彼の妻はデズデモーナであり、マクラーレン中佐がイアーゴーなのだ。マクラーレン中佐はクレイトン夫人を愛しており、彼女がリッチ少佐に惹かれていることに嫉妬して、クレイトンが死に、リッチが殺人犯として告発されるという一石二鳥の完全犯罪を計画したのである。彼はクレイトンに夫人の不貞を何度もほのめかし、ついにクレイトンはスコットランドへの出張と偽ってリッチのアパートに忍び込み、櫃からパーティーの様子を観察することにした。マクラーレンは、人々がダンスをするようにレコードをかけ、その間に衝立の裏に行ってクレイトンが櫃の穴から外を覗いているところを刺したのであった。ポアロは、マクラーレンにこの推理をぶつければ、彼は自白すると確信する。
負け犬

(原題: The Under Dog) (1926年)主人公:エルキュール・ポアロ

ルーベン・アストウェル卿が別荘モン・レポで撲殺され、甥のチャールズ・レヴァーソンが逮捕される。ルーベン卿の妻アストウェル夫人は、真犯人は秘書オーウェン・トレフシスだと直感で確信し、コンパニオンのリリー・マルグレイブを通じてポアロに捜査を依頼する。ポアロは、リリーが何か隠している様子であることにも興味を持ち、引き受ける。

モン・レポに到着したポアロは、アストウェル夫人と話し、ルーベン卿の弟でビジネスパートナーのヴィクターもこの家の客であることを知る。兄弟そろって短気な性格で、屋敷内では何度も口論があり、チャールズ・レヴァーソンもしばしば巻き込まれ、ルーベン卿は使用人に怒りをぶつけることもあった。執事のパーソンズによれば、真夜中近くにレヴァーソンが帰宅し、レヴァーソンが叔父を怒鳴りつける声や、泣き声、鈍い音がしたという。翌日、ルーベン卿は遺体で発見された。秘書トレフシスは、日頃ルーベン卿から冷酷ないじめを受けていたことを認める。ポアロは事件現場を観察し、なぜ文机に血痕があるのに死体は床で発見されたのかと不思議に思う。

ポアロはリリー・マルグレイブの神経質な態度に疑念を抱いて彼女にかまをかけると、彼女は近くのホテルに宿泊しているハンフリー・ネイラー大尉の妹であると白状する。ネイラーはかつてアフリカの金鉱をルーベン卿にだまし取られており、彼女はその証拠をつかむためにルーベン卿の屋敷に入り込んでいたのだった。事件当夜、彼女はルーベン卿の書斎で証拠の書類を盗み出し、その際に床に横たわった死体を発見したが、自分が殺したのではないと主張し、ポアロはそれを信じる。また、レヴァーソンは問題の夜に酔って帰宅しており、彼は叔父の死体を発見して動揺し、自分が疑われないために叔父との口論を演じたのであった。

ポアロはアストウェル夫人に催眠術をかけさせ、殺人のあった夜の出来事を思い出させ、彼女と夫が口論していたときに、螺旋階段のカーテンの陰に誰かがいたことがわかる。ポアロは、螺旋階段で犯人のてがかりを見つけたと言い、それを自分の部屋の箱に入れたまま一旦ロンドンへ行く。帰ってきた彼は、トレフシスが真犯人だが、犯行は計画的なものではなかったと告げる。うっかりルーベン卿と夫人の口論を目撃してしまったことでルーベン卿から罵声を浴びせられ長年受けてきた屈辱に耐えかねて殴り倒してしまったのだった。ポアロが階段で手がかりを見つけたというのは嘘だったが、ジョージはポアロがいない間に、トレフシスがそれを盗みに来るのを目撃していた。アストウェル夫人は自分の直感が正しかったことが証明されて喜ぶ。
二十四羽の黒つぐみ

(原題: Four-and-Twenty Blackbirds) (1940年)主人公:エルキュール・ポアロ

ポアロは友人のヘンリーと外食をしていて、人の習慣に話が及ぶ。そのレストランでいつも食事をしているヘンリーは、自分の推理の証拠として白ひげの男を挙げる。この髭の男は、水曜日と土曜日に同じ食事をし、3品のコース料理にほとんど同じものを注文しているという。ヘンリーが髭の男をじっと見ているのに気づいたウェイトレスが、先週にかぎって彼は月曜日にも来店し、今まで注文したことのないものを注文したと言う。それを聞いたポアロは好奇心を刺激される。

3週間後、ポアロとヘンリーは地下鉄の列車で出会い、会話の中でヘンリーが髭の男が1週間姿を見せないことを口にする。ヘンリーの推理では、彼は死んだのであり、問題の月曜日に習慣が変わったのは、医者から悪い知らせを告げられた結果だという。ポアロは確信が持てず、調査を開始する。彼は最近の死亡者リストからその男の名前を簡単に見つけ、もっともらしい紹介でその男の担当医に会う。その男は一人暮らしで、自宅の階段から誤って転落死し、牛乳瓶のそばで発見された。死んだのはその日の午後10時頃で、その2、3時間前に例のレストランで食事をしていた。ポケットには手紙が入っていた。ポアロが親族について質問すると、この男には双子の弟アンソニーがおり、長い闘病生活の末、弟と同じ日の午後に死んだこと、そして彼らの唯一の生存する親族は甥のジョージ・ロリマーであることを告げられる。ポアロは死んだ男の歯に興味を持ち、年の割に非常に白い歯であることが確認される。

何度か電話をかけて調査をした後、ポアロはロリマーに会い、彼が殺人犯であると告発する。それに対するロリマーの反応は、ポアロの推理が正しかったことを示す。

ヘンリーと再会したポアロは説明する。アンソニーは巨額の財産を弟に残していた。ロリマーはいずれこの財産を相続する立場にあったが、お金がなくて焦っていたため、叔父を殺害し、変装してレストランで彼になりすました。しかし、叔父の食生活を真似ることを忘れ、デザートにブラックベリーのタルトなど、普段選ばれているものとは違うものを注文してしまった。


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