クラリネット
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クラリネット
各言語での名称

clarinet
Klarinette
clarinette
clarinetto
單簧管, ?簧管


B♭クラリネット
ベーム・システムおよびエーラー・システム
分類

木管楽器
 - クラリネット属
音域
記譜音
演奏者


クラシック

ジャズ

クラリネットは管楽器の一種で、1枚の簧(リード)を振動源として音を出す単簧(シングル・リード)の木管楽器である[1][2]
概要

クラリネットは、ドイツニュルンベルクヨハン・クリストフ・デンナーが、1700年頃にシャリュモー: chalumeau)を改造して製作したのが始まりとされる[3]。シャリュモーはフランスの古楽器であって、シングルリードの円筒形木管楽器であり、18世紀の後半頃までオーケストラに使用されていたといわれている。しかし、現存する楽器は作者不詳のものが多く、関連資料もわずかしか残っていないので、製作年代はよく分かっていない。

パンフルートと同様に閉管構造の楽器であって、全長のほとんどを占める管体の太さはほぼ一定(円筒形)である。閉管なので、同じ長さの開管楽器よりも最低音が1オクターヴ低い。偶数倍音がほとんど発生しない[2]ので、音波の波形は矩形に近く、独特の音色をもっている。

本体は大きく4つに分割することができ、吹口の側からマウスピースバレル(俵管)、管体、ベルと呼ぶ。マウスピースには、リードリガチャーによって固定されている。単にクラリネットと言った場合はソプラノ・クラリネットを指し、変ロ調(B♭)管とイ調(A)管が一般的である。両者は吹口の部分が共通なので、この部分だけを差し替えることもできる。B♭管の場合、全長670 mm、内径15 mm程度である。ソプラノ・クラリネット以上の大きさのものでは、管体をさらに上部管(上管)と下部管(下管)に分割できるものが多い[注 1]。少数ではあるが、ソプラノ・クラリネットでも一体型の管体のものがある。

クラリネットには同属楽器が多く、クラリネット属と総称する。音域を変えるために管の長さを変えたものであり、運指などはほとんど同じである。ハ調のソプラノ・クラリネット以外は、移調楽器として扱われる。同属の中のバセット・ホルン1770年頃にバイエルンのマイヤーホーファー (Mayerhofer) によって作られ、バス・クラリネットなどの低い音域のクラリネットの原型は1838年頃にベルギーアドルフ・サックスによって作られたといわれている[1][3]
音域と音色

以下の説明文で、イロハ音名での表記は記譜音を指す。

クラリネットの音域は、記譜で中央ハ音の下のホから上に約4オクターヴ弱である。フルートなど開管の木管楽器では第2倍音である1オクターヴ上の音が、同じかまたは似た運指となる。しかし、閉管のクラリネット属では第2倍音が使えないので、第3倍音である1オクターヴと完全5度上の音が類似の運指となる。すなわち、最低音のホですべての側孔を閉じ、ヘ-ト-イ-ロ-ハ-ニ-ホ-ヘ-ト-イと変ロまで順次開けて行き、1オクターヴと完全5度上のロで再びすべての側孔を閉じる。このとき第3倍音を出しやすくするためにレジスター・キー(他の楽器でのオクターヴ・キーに相当)の孔だけ開く。上のロの直下の変ロおよびイの音域は頭部の短い部分だけで共鳴するので、「喉の音」(スロート・トーン)と呼ばれ、他の音域とは異なる音色となる(木管楽器#音の高さを変える方法も参照)。

クラリネットのヴィブラート奏法はクラシック音楽では少ないが、ジャズなどでは少なくない。

クラリネットの音域は、次の4つの領域に分けられる[1]
シャリュモー音域
(記譜でE3-F#4)最も低い音域は基音によって出す領域でシャリュモー音域と呼ばれ、音は太く丸く、よく通る。この呼び名は、もととなったフランスの古楽器である前述のシャリュモーにちなむ。シャリュモー音域の中の低音域は野性的な響きを併せ持ち、怪しげな雰囲気を醸し出すことも可能である。
ブリッジ音域
(記譜でG4-Bb4)シャリュモー音域のすぐ上はブリッジ音域と呼ばれ、いわゆる「喉の音」の領域である。シャリュモー音域と同様に基音であるが、デンナーがシャリュモーを改良した際に、シャリュモー音域とクラリオン音域(次項)の間を"橋渡し"するためにキーを取り付けた領域なので"ブリッジ"音域と呼ばれるのである。この音域は倍音に乏しく、暗くくすんだような音色になりがちである。標準の運指では、上の音域との間を行き来する場合、たくさんの指を一度に動かす必要があるので運指が難しく、また共鳴する管長が著しく変化するため呼気のコントロールも難しい。
クラリオン音域
(記譜でB4-C6(C#6))ブリッジ音域のすぐ上は第3倍音によって出す領域で、クラリオン音域と呼ばれる。明るく開放的で艶があり、金管楽器のクラリオンを彷彿させる。「小さな(接尾辞et)クラリオン(clarion)」という意味の「クラリネット(clarinet)」という名称もこの音色からきている。
アルティッシモ音域
(記譜でD6-A6)最も高い音域(シャリュモー音域の3オクターヴ上)は、第5、7、9倍音によって出す領域で、アルティッシモ音域と呼ばれる。比較的細目で極めて通りの良い音である。しかし、音程はとりにくく、上がるにつれて鋭さが勝ってくる。
キー・システム

キーと穴の配置が異なるクラリネット

ベーム式クラリネット

エーラー式クラリネット

アルバート式クラリネット

リフォーム・ベーム式クラリネット

クラリネットの前身楽器であるシャリュモーが一般化しなかったのは、前述のように第2倍音が使えないので、1オクターヴと完全5度の音のために異なる指穴を開けなければならない。それでは穴が多すぎる上、間隔も広すぎて人間の手指では押さえきれないので、狭い音域しか実用にならなかったためである。しかし、キー装置が開発されたことにより、必要なとき以外は常に閉じておいたり、指の届かないところに開けた穴を開閉したりすることもできるようになった。これによって、初めて1オクターヴと完全5度の指穴に対応し、基音と第3倍音との間に隙間のない、連続した広い音域を持った楽器が作れるようになったのである。

指穴の配列並びにキー・システムは、現在までさまざまなものが開発されている。
ベーム式(フランス式)
最も一般的なシステム。1843年にフランスのビュッフェ(L. A. Buffet 1885年没)とクローゼ(H. E. Klose 1808年-1880年)によって、1832年のベーム式フルートのキー・システムを応用して開発され[4]1844年に特許を得た。機構は複雑であるが、運指が比較的単純で機動性が高く、初心者にも扱いやすい。日本では、ほとんどの奏者がベーム式の楽器を使用している。
エーラー式(ドイツ式)
1812年にミュラー(I. Muller)が開発した13キーのクラリネットを元に、ベーム式クラリネットの発明から約60年後にオスカール・エーラーによって開発されたシステム。ベーム式の利点も取り入れられ、音色もよいことから、特にドイツのクラシック演奏者はエーラー式を好んで使っている。吹奏楽ではあまり使われず、オーケストラで用いられる。
その他
オーストリアではウィーンアカデミー式(ウィーン式)という楽器が使用されている。アルバート式は、音量は大きいが、音色がベーム式やエーラー式とは明らかに異なる。古いスタイルのジャズでよく使われたが、最近はあまり用いられていない。リフォーム・ベーム式は、エーラー式用の管体に、ベーム式キー・システムを実装したものである。エーラー式の音色のよさとベーム式の機動性とを兼ね備えている。

かつては木材や象牙でキーを製造した時代もあった。しかし、現在はほとんどが金属製で、主に洋白が用いられており、表面にメッキあるいはニッケルメッキを施されているのが一般的である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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