この記事には参考文献や外部リンクの一覧が含まれていますが、脚注による参照が不十分であるため、情報源が依然不明確です。適切な位置に脚注を追加して、記事の信頼性向上にご協力ください。(2023年3月)
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}
この項目では、地質学上のクラトンについて説明しています。インドネシア・ジャワ島の各地にあるスルターンの王宮については「クラトン (王宮)
(英語版)」をご覧ください。クラトン(英語: Craton、ドイツ語: Kraton)とは、大陸地殻のうち、カンブリア紀以前に安定化した部分を指す。安定陸塊(あんていりくかい)、安定地塊(あんていちかい)、剛塊(ごうかい)とも呼ばれる。楯状地、プラットフォーム(卓状地)とほぼ一致し、造山帯、付加体に対立する概念である。
代表例としては、カナダ楯状地を包含する北アメリカ・クラトン、ダルワール・クラトン、東ヨーロッパ・クラトン、東南極クラトンなどが挙げられる。これらは、最低でも過去5億年、大陸の合体や超大陸の分離(ウィルソンサイクル)の影響をほとんど受けなかった大陸地殻の古い安定な部分であり、中には30億年以上存在してきた物も存在する。このためクラトンの地表部分では侵食が進み、台地や準平原、構造平野などを形成している。 クラトンは、通常は大陸の内部で見つかる。特徴として、花崗岩など低比重の珪長質の火成岩から成る、古代に形成された結晶質の基盤岩の地殻を有する。これらは、厚い地殻と、マントル の中、200 kmの深さまで及ぶ根(下部リソスフェア)を持っている。 クラトンという用語は、安定な大陸の内陸部分を、沈み込み帯などに伴って形成される、帯状の堆積物が成す地向斜性トラフ(つまり付加体)などから区別するのに使われる。 散在する各大陸の中央クラトンは、楯状地とプラットフォームおよび結晶質基盤岩とほぼ一致する。楯状地はクラトンの一部であり、通常は先カンブリア時代の岩盤が、地表に散発的に露出している場所である。これに対して、プラットフォームは基盤岩が水平、または、ほぼ水平な堆積物の層によって覆われた場所である。 クラトンという用語は、ドイツ人の地質学者 L. Kober により、1921年に「安定な大陸の台地(陸塊)"Kratogen"」として導入された。また同時に、"orogen" が、山あるいは造山帯を指す用語として導入された。後代の著作者達が、前者を kraton と縮め、これがさらに craton と変化した。 各クラトンは、地質学的にさらに細かい地質学的区域 ただし、地質学的区域は、論議の文脈や背景によって、幾つかの異なる意味を持ち得る。 大陸クラトンは、マントルの中まで達する深い根(下部リソスフェア)を持っている。マントルの地震波トモグラフィーによる解析では、クラトンがリソスフェアに相当する、異常に温度の低いマントルの上に乗っており、このリソスフェアは約100 kmの厚さを有する事を示している。さらに、充分に古い海洋性リソスフェア、あるいは、非クラトン性大陸リソスフェアと比較して、少なくとも、2倍以上の厚さを持つ事も示している。したがって、幾つかのクラトンは、最深部においてアセノスフェアに錨着しているのではないかとの論議が有る。 クラトンが有するマントル中の根は、化学的にマントルと区別されなければならない。なぜなら、マントルに対して、クラトンの根は、中立か正の浮力を持つはずであり、そのためには、地熱反応による体積減少に伴う密度増加を相殺する程度に、本来の密度が低くなければならないからである。 マントル中の根の岩石サンプルは橄欖岩を含んでおり、これらは、キンバーライト・パイプ
概要
地質学的区域
構造
斜方輝石橄欖岩(英語版)(harzburgite)は橄欖岩の1種であり、玄武岩やコマチアイトなどから、融解成分を取り除いた結晶質の残滓である。
アルプス型橄欖岩は、最上部マントルのスラブ(多くは海洋リソスフェア)を起源とし、やはり部分融解成分が抽出された残渣であるが、事後的に海洋地殻と一緒に、衝上断層に沿ってアルプス山脈まで押し上げられた岩石である。エクロジャイトと呼ばれる、橄欖岩に付随する一群の内容物は、成分で見れば海洋地殻に対応する岩石から構成されているが、深いマントル中の高温高圧環境で変成作用を受けた岩石である。含有される元素の同位体の含有比率などによる研究は、多数のエクロジャイトの内容物は、古代の海洋地殻が、数十億年前に、キンバーライトのダイヤモンド領域に当たる、150 km以上の深さに沈み込んだ物であると明らかにした。これらは、深部で発生したマグマ噴出活動によって地表に運ばれるまで、浮遊状態のプレートの中に固定されたままであった。もしも、橄欖岩とエクロジャイトから成る内容物が、同時期に形成されたのであれば、橄欖岩も、数十億年前に海底を拡張した海嶺か、あるいは、海洋地殻の沈み込みの影響を受けたマントルに起源を有する事を意味する。
地球は、その形成後の初期の年代において今よりも高温であった。このため、海底を拡張する海嶺では、現在よりも大量の融解が発生して、20 kmを超える厚さの地殻を持った海洋リソスフェアを生成した。そして、その分だけ、マントルの厚さは減殺された。よって、クラトンが有するマントル中の根は、浮力を持ったまま沈み込んだ海洋リソスフェアで構成されていると考えられる。これらの深部のマントル中の根は、クラトンの安定性、錨着力、存在の持続性を増大させ、プレート相互の衝突による、プレートの肥厚化や、堆積物の沈み込みに伴う破壊に対する、クラトンの感受性を大幅に低下させる働きを持つ。 地球の初期に存在した岩石からクラトンが形成されたプロセスは、クラトン化
クラトンの形成
その頃のプレート運動および火山性活動は、現在より相当活発であったと考えられており、マントルは現在よりも流動性が相当大きく、地殻はもっと薄かったとされる。これは、海嶺とホットスポットにおける海洋地殻の急速な形成、および沈み込み帯における海洋地殻の、急速なリサイクリングの原因となっただろう。当時の地球の表面付近は、恐らく、小さな多数のプレートに分断され、これに伴う火山島や弧状列島が大量に存在しただろうと考えられている。地殻性の岩石が、ホットスポットで融解と凝固を繰り返し、また沈み込み帯でリサイクルを繰り返すうちに、幾つかの始原大陸が形成された。こうして形成された始源大陸が、クラトンだとされる。
太古代初期においては、大きな大陸は存在しなかったと考えられている。おそらく、中太古代 (Mesoarchean) においては、高頻度の地殻変動が、より大きなユニットへの合体化を妨げたため、小さな始原大陸が普通であったであろう。