クラスター爆弾
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代表的なクラスター爆弾の一つ、CBU-87/B(模擬弾) ウェリントン宣言(灰色の国が未署名で、所有又は所有予定の国)

クラスター爆弾(クラスターばくだん、英語: cluster bomb)は、容器となる大型の弾体の中に複数の子弾を搭載した爆弾である。クラスター弾、集束爆弾(しゅうそくばくだん)とも呼ばれ、昔は親子爆弾[注釈 1]とも呼ばれた。
定義

2008年5月28日ダブリンで行われた「クラスター弾に関する外交会議」(Diplomatic Conference for the Adoption of a Convention on Cluster Munitions)で採択された「クラスター弾に関する条約」(Conventions on Cluster Munitions)におけるクラスター弾の定義は以下の通り(第2条)。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}「それぞれが20キログラムを超えない爆発性子弾を散布または放出するよう設計された通常弾で、それらの爆発性子弾が含まれるもの」[1]
概要

米国ロシア中国北朝鮮韓国イスラエルイランサウジアラビアトルコシリアイラクウクライナギリシャアラブ首長国連邦エジプトヨルダンイエメンジョージアアゼルバイジャンコソボカザフスタンポーランドルーマニアアルメニアベラルーシラトビアブータンベトナムタイインドミャンマーパキスタン台湾などは、クラスター弾に関する条約に署名していない。古典的な収束爆弾の一種である、ソ連空軍の「モロトフのパン籠」と、内蔵する小型焼夷弾を手にしたフィンランド兵

主に航空機や地対地ロケット弾砲弾などに搭載される。通常の空対地爆弾とほぼ同サイズのケースの中に、小型爆弾や地雷で構成される数個-数百個の子弾を内蔵する。このケースが発射、投下の後に空中で破裂することで子弾を散布し、多数の小規模な爆発を引き起こすなどして広範囲の目標に損害を与える。子弾1つは小型の爆発物であり、鉄筋コンクリートビルやトーチカのような強固な建造物に対する破壊力は低いが、一度の投下で広範囲に散布できるため、単弾頭の航空爆弾より広い範囲に被害を与え、面制圧兵器として使われる。

フィンランドにおける冬戦争では、ソ連空軍が空中で回転しながら遠心力で60発の小型焼夷弾を散布する収束爆弾コンテナを実戦使用している。また、第二次世界大戦中のドイツ空軍は対人馬用収束爆弾として、重量2 kgの小型爆弾SD2 92発をコンテナに収容したものを運用。アメリカ陸軍航空軍は、ドイツ軍がロンドン爆撃で使用した焼夷弾を参考に開発した38ないし48発の焼夷弾をコンテナに収容し、高度700 mで爆散させ、高密度に焼夷弾を降らせる集束焼夷弾E46日本への空襲に使用している。

ベトナム戦争では、ケースに野球ボール大の子爆弾を300個ほど内蔵し、その子爆弾ひとつの炸裂で600個ほどの金属球を飛散させる「ボール爆弾」が使用された。この子爆弾は、手榴弾や指向性の無い散弾地雷のように、炸裂周辺の人員や通常の車両など、非装甲標的に被害を与えるもので、加害面積は親弾の炸裂高度によって変化する。観測機を伴ったB-1 ランサー戦略爆撃機が、クラスター爆弾を投下する様子。黒い棒状の物体が親弾で、左下の親弾は子弾を放出している

クラスター爆弾には様々な種類の子弾が存在する。歩兵や軽車両を対象とする場合、小型爆弾のほか対人地雷を搭載した物もあり、爆弾本体ではなく子弾がオタワ条約の対象とされる事もある。装甲の厚い兵器を対象とした物では、対人・対装甲車両用の子弾を202発収めた米軍のCBU-87/B、戦車などを目標とする対装甲用子弾を10発収めた CBU-97/B、対装甲用成形炸薬子弾を247発収めた CBU-59 ロックアイIIなどがある。成形炸薬子弾の場合、装甲の薄い車両上面に適切な角度で接触・起爆するよう、リボンや小型のパラシュート、羽根が取り付けられ、姿勢を垂直に向けて落下するように設計されている。

爆発性が無いためクラスター弾に関する条約の条件には合致しないが、炭素繊維ワイヤーを放出して送電施設をショートさせ、停電を引き起こすBLU-114/Bのような非致死性兵器も存在し、これは、停電爆弾と呼ばれる。
在来型航空爆弾との比較ベトナム戦争で使用された米軍のCBU-24対人・対物クラスター爆弾(ボール爆弾)

クラスター爆弾は、在来爆弾に比べて総合的な費用対効果に優れると考えられている。

重量に対する制圧面積が広く、少ない航空機数で従来型の航空爆弾と同様の爆撃面積を得られるため、爆撃機数の削減が可能になる[注釈 2][注釈 3]

2乗3乗則 - 在来型の航空爆弾は、大型化するほど重量あたりの殺傷面積効率が低下する。在来爆弾で爆発による殺傷半径を2倍にするには、爆発時に生じる高圧ガス球体積=爆弾の重量を8倍にする必要がある。

地上部隊に対して短時間で面的制圧を行えるため、国境線が長かったり、障壁となる地形が乏しいなどの事情を持つ地域では、対人地雷と同様に戦術上有効とされる。

不発弾処理

戦車用の成形炸薬弾型など、爆発指向性があるものは、弾頭部が下を向くようパラシュートリボンなどで落下姿勢を調整するが、これが対地落下速度を低め、落下場所によっては信管に十分な衝撃が加わらなかったり、リボンやパラシュートがや建物に引っ掛かって不発となる場合がある。

種類や小弾の性質・運用状況にもより不発率の実績は40%近くに達する場合もあれば数%しかない場合もあり大きく異なる。ウクライナ侵攻ではロシア軍が使用したクラスター弾の不発率は約30-40%にも上る一方で、米国は2.35%以下に抑えられる種類のクラスター弾をウクライナに供与する方針を示した[2]
戦闘後の被害

国際連合レバノン南部地雷活動調整センターは、2006年8月までにレバノンで使用された旧式のクラスター爆弾で、子爆弾の4割が不発のまま残ったとしている。この戦闘ではイスラエル軍によりヒズボラに対して子爆弾644発を積載したクラスター爆弾が最低でも1,800発使用されたが、これの不発分が市街地などに散乱しており、全ての撤去には1年以上かかるとされている。

残留した不発弾が戦後復興に影響する場合もあり、レバノンでは戦闘中に避難していた市民乗用車で戻ってきたところ、その車列で爆発が発生、驚いた市民らが車から降りて更に爆発が発生し、30分で市民15人が死傷したケースもあると2006年9月20日の朝日新聞が報じている。中にはに引っ掛かった状態の子爆弾もあり、2006年10月23日の朝日新聞報道では、果樹園で取り入れを手伝っていた子供の死亡事例が多いと報じている。


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