クモ膜下出血
典型的クモ膜下出血の頭部CT画像。ペンタゴン(鞍上槽への出血)がはっきりと認められる。
概要
診療科救急医学, 神経学, 脳神経外科学
分類および外部参照情報
ICD-10I60
クモ膜下出血(クモまくかしゅっけつ、蜘蛛膜下出血、英: Subarachnoid hemorrhage; SAH)は、ヒトの脳を覆う3層の髄膜のうち、2層目のクモ膜と3層目の軟膜の間の空間「クモ膜下腔」に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入した状態をいう。脳血管障害の8%を占め、突然死の6.6%がこれに該当するといわれる[1]。50歳から60歳で好発し、男性より女性が2倍多いとされている。脳動脈瘤の破裂が主な原因で、日本では年間1万人程度の死亡原因となっている[2]。 多くは脳動脈瘤の破裂(約80%)によるもので、その他に脳動静脈奇形、もやもや病、頭部外傷、脳腫瘍や脳動脈解離の破裂によるものなどがある[3][4]。 内因性のクモ膜下出血の多くを占める。脳動脈瘤は動脈の一部位が膨らみ、その血管壁が脆弱となったものである。その種類により袋型(嚢状動脈瘤)と紡錘型がある。動脈瘤の原因については「脳動脈瘤」を参照 脳動脈瘤を持つ人において、運動、怒責、興奮などによって脳への血圧が上昇すると動脈瘤の一部が破れて出血を起こす[5]。出血自体はほんの数秒であるが血液は急速にクモ膜下腔全体に浸透し、頭蓋内圧亢進症状や髄膜刺激症状を起こす。 また、脳を栄養すべき血流が出血へと流れてしまうことにより、一過性の脳虚血を起こす。後述のHunt and Hess分類は、その虚血の重篤度を表すものであるとも考えられる。意識消失はごく短時間の大きな虚血によるものであり、心肺停止は数秒以上の全脳虚血によって迷走神経優位(迷走神経反射)による洞停止と推定されるからである。 脳動静脈奇形は脳の動脈と静脈が先天的にシャントを形成している奇形で、脆弱な静脈壁に大きな血圧がかかることから出血を起こしやすい。若年性のクモ膜下出血では最も多い原因である。詳細は「脳動静脈奇形」を参照 脳は脊髄液の中に浮いた状態で存在しており、脳全体の比重は脳脊髄液よりわずかに重い。このため、頭部に衝撃を受けると脳は頭蓋内で力の作用点に対して寄る形で移動する。この時、作用点の反対側では脳と硬膜を結ぶ静脈が切れて出血する。 喫煙、高血圧[6]、アルコール多飲歴[7]などがリスク因子として存在する。隔世遺伝性の病気であり、祖父母の代で発症した者がいる場合は発症する確率が上がる。 突然始まる、強い持続性の頭痛が主たる症状である。 嘔吐を伴うこともある。頭痛は「金属バット、ハンマーで殴られたような」などと表現される。少量の出血(マイナーリーク)の場合は、頭痛はそれほど強くないことが多い。頭痛の発症は「突然」起こることが特徴である。この頭痛は数時間で消失することはなく、数日間持続する。その他の神経症状がないことも珍しくなく、脳内血腫を伴わなければ片麻痺、失語などの脳局所症状はみられない。なお、出血が高度であれば意識障害をきたし頭痛を訴えることはできない。神経症状として髄膜刺激症状が認められることが多い。
原因
脳動脈瘤の破裂
脳動静脈奇形の破裂
外傷による出血
リスク因子
症状
中枢症状
激しい頭痛
悪心・嘔吐
神経原性肺水腫
身体所見
髄膜刺激症状
項部硬直(首の硬直): 首の屈曲テスト (neck flexion test) で判断。自発的に頸部を前屈させ、下顎が胸まで十分に近接するようであれば正常。前屈が困難であれば異常。
ケルニッヒ徴候 (Kernig's sign)
ブルジンスキー徴候
頭部を振った際の頭痛増悪 (jolt accentuation of headache) : 子どもが「イヤイヤ」をするように、素早く頭部を左右に振り、頭痛が増悪するようであれば異常。2-3回/秒の早さで頭を水平方向に回してみて、頭痛が増悪すれば陽性とする[8]。
検査所見
多様な心電図変化が見られることが知られている[9]。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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