ギュールズ
[Wikipedia|▼Menu]
左半分が色彩による表現。右半分がペトラ・サンクタの手法による表現。

ギュールズ(: 古仏: Gules、: Gueules)は、紋章学における赤色を表すティンクチャーであり、「原色 (colours) 」と呼ばれる種類のティンクチャーに属する。なお、ティンクチャーとは紋章学における紋様の要素である原色・金属色・毛皮模様の総称である。

古典的な白黒の印刷物や硬貨の刻印をはじめとする彫刻では色を表すことができないため、ペトラ・サンクタの方法 (System of Petra Sancta) と呼ばれる手法では、ギュールズは垂直の縦線の領域として表される。さもなくば gu. 又は g. といった省略形で示されることがある。

ギュールズは、次のものを表現するとされている。

ルビー(宝石)

火星(天体) - 火星はさらに、伝統的な錬金術/神秘学の伝承において金属のと関係している。

解説
語源

ギュールズという言葉は、ラテン語で「(のど)」を意味する gula を語源とする[1]。このラテン語の単語に由来する古フランス語の gole 及び赤い毛皮の襟巻きを意味する gueules から 中英語の goules へ伝わったとする説、同じラテン語の単語を起源とする英語の食道、のど又は咽頭を意味する gullet から来る動物の口を表す言葉に由来しているという説がある。前者のほうが有力であるが、口と喉はいずれも赤であり、それゆえにこれは意味の転換である。紋章学の書物を著した者たちは、長らくこの言葉が赤い花をつけるバラを意味する gul というペルシア語の単語に由来し、十字軍の帰還によってもたらされたか、ムスリム・スペインを通じてヨーロッパにやって来たものであろうと思っていた。しかし、Brault によれば、この起源を支持する証拠はない[2]
適用例アムステルダムの紋章のエスカッシャンは、ギュールズの地を持つ。

ポーランドの紋章学において、ギュールズは紋章の地の色として最も普及しているティンクチャーである。16世紀を通じ、ポーランドのすべての貴族のうちほぼ半分の紋章はギュールズを地とする紋章であり、その上に1つ以上のアージェントチャージがあるものであった。

オランダアムステルダムの紋章は、ギュールズの地にセーブルペイル(紋章学の用語で縦帯のこと)が重ねられ、そこに3つのアージェントのサルタイアー(斜め十字)が描かれている。この配色は、原色に原色を重ねてはならないというティンクチャーの原則に反するものであるが、この斜め十字のおかげで視認性に問題はないとして指摘を免れている[3]。また、中央ヨーロッパの一部地域ではセーブルを原色と見なさないこともあったため、そういった観点からもアムステルダムの紋章には問題がないとする説もある。
脚注[脚注の使い方]^ “ ⇒gules - Definitions from Dictionary.com” (英語). Dictionary.com. Lexico Publishing Group, LLC. 2008年1月6日閲覧。
^ Brault, Gerard J. (1997). Early Blazon: Heraldic Terminology in the Twelfth and Thirteenth Centuries (2nd ed. ed.). Woodbridge, UK: The Boydell Press. ISBN 0-85115-711-4 
^ 河渕慎一郎 (1996年10月20日). “ ⇒TINCTURES”. 2008年1月1日閲覧。

関連項目

紋章学

紋章

赤色

外部リンク.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィクショナリーに関連の辞書項目があります。gules

コウブチ紋章資料館

紋章学総合サイト

中世ヨーロッパの風景 「紋章について」

Dragon's Lair「ヨーロッパ紋章学」










紋章学
用語

コート・オブ・アームズ(紋章)

オーグメンテイション

ケイデンシー

パーティション

ハッチメント

フィールド

ブレイゾン(紋章記述)

マーシャリング

ライン

紋章院

オフィサー・オブ・アームズ(紋章官)

キング・オブ・アームズ

ヘラルド・オブ・アームズ

パーシヴァント・オブ・アームズ

構成要素

エスカッシャン

クラウン

クレスト

コンパートメント

サポーター

ヘルメット

マント

ミューラル・クラウン

モットー

リース

ティンクチャー

金属色

アージェント

オーア

原色

アジュール

ヴァート

ギュールズ

セーブル

パーピュア

毛皮模様

アーミン

ヴェア

ステイン

サングイン

テニー

マレー


チャージ

オーディナリー

クロス

シェブロン

サルタイアー

チーフ

パイル

フェス

ペイル


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:15 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef