キマイラ_(ギュスターヴ・モロー)
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『キマイラ』フランス語: La Chimere
英語: The Chimera

作者ギュスターヴ・モロー
製作年1867年
種類油彩キャンバス
寸法33 cm × 27.3 cm (13 in × 10.7 in)
所蔵フォッグ美術館マサチューセッツ州ケンブリッジ
最も初期の素描『キマイラ』。1856年。個人蔵。

『キマイラ』(: La Chimere, : The Chimera)は、フランス象徴主義の画家ギュスターヴ・モローが1867年に制作した絵画である。油彩アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジハーバード大学付属フォッグ美術館に所蔵されている[1][2][3]。また同年に制作されたほぼ同サイズのヴァリアントが個人蔵に[2]、円形のトンドとして描かれた水彩画[4][5]および水彩画習作がギュスターヴ・モロー美術館に所蔵されている[3]
主題

ギリシア神話によるとキマイラライオンの頭と山羊の胴体、の尾を持つ怪物で、ペーガソスに騎乗した英雄ベレロポーンによって退治された。フランス語ではキマイラを指す語「シメール」(Chimere)は転じて「幻想」を意味する[2][3]
作品

怪物キマイラが翼を広げて今まさに断崖から空に飛翔しようとしている。しかしモローの描いた怪物はキマイラと呼ぶには少々奇妙であり、人間の顔と上半身、馬の身体、背中に一対の翼を持つ姿は有翼のケンタウロスといった風情である。怪物の首には美しい裸婦が両腕を回してしっかり抱きついており、怪物は彼女もろともに空に飛翔しようとしている。画面右下では1羽の鳥が飛翔している。

この作品の最初期の構想は1856年の素描(個人蔵)までさかのぼる。この素描では怪物は両翼を後方に広げているが、基本的な図像はこの段階で完成されており、以降の作品に大きな変化はない[2]。怪物のポーズはモロー家にあった1660年版のオウィディウスの『変身物語』の挿絵に描かれたケンタウロスに由来することが指摘されている[2]。対して裸婦像はアンリ・レーマンが1850年のサロンに出品した『プロメテウスが縛られた岩の下で嘆くオケアノスの娘たち』(Desolation des Oceanides au pied du roc ou Promethee est enchaine)中の、画面中央で飛び上がる女性像との類似が指摘されている[2][3]

1856年の素描や、本作品と同年制作のヴァリアントでは、右下の空間には何も描かれていないが、本作品では鳥が描き加えられている。さらにギュスターヴ・モロー美術館所蔵の水彩画ではこれを円形の画面に描いて同様の位置に鳥を描き加えているほか、1879年頃の水彩画習作では鳥の代わりに岩山を配置している。おそらくこれらの変更は画面に空白の部分があることを考慮して、バランスを取るために描き加えられた結果と考えられる[3]
解釈1884年の大作『キマイラたち』。略奪される女性像の集大成とも言うべき作品であったが、未完に終わった。ギュスターヴ・モロー美術館所蔵。

おそらくモローはギリシア神話とフランス語の両方の意味を掛け合わせて本作品を描いている[2][3]。モローの図像学において、半獣半人の怪物はしばしば精神性に対する物質性、肉体的な官能性を象徴している。したがって怪物に抱きついて自らも飛翔しようとする裸婦像は自らをも破滅させる欲望に身を任せていると解釈でき[2]、おそらくそこにはデイアネイラエウロペなど、獣の性質を備えた略奪者によって誘拐される女性のイメージが重ねられている[3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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