ガンジス川
[Wikipedia|▼Menu]

ガンジス(ガンガー)
ヨガ聖地リシケーシュを流れるガンガー
延長2525 km
平均流量18,490 m³/s
流域面積1730000 (840000) km²
水源ヒマラヤ山脈
河口・合流先ベンガル湾
流路 インド
バングラデシュ
流域 インド
バングラデシュ
ネパール
中国*
ブータン*
*ブラフマプトラ川水系のみ
テンプレートを表示

ガンジス川(ガンジスがわ、ヒンディー語: ????)は、ヒマラヤ山脈の南側、インド亜大陸の北東部を流れる大河である。長さは約2525km[1]、流域面積は約173万km2(ただしブラフマプトラ川水系を除くと約84万km2)。
名称

ヒンディー語サンスクリットではガンガー(????、Ga?g?)と呼び、これはヒンドゥー教川の女神の名でもある。また漢語ではこれを音写し恒河(ごうが、中国語音は Henghe)と呼ぶ。英語では the Ganges と呼び、これは和名の由来でもある。「the Nile(ナイル川)」などと同様、それだけで完結する固有名であり、本来は Ganges River のような言い方はしない。
流域の歴史紀元前600年頃の十六大国

インダス文明末期の紀元前1900年から紀元前1300年ごろに、インダス川流域からの植民者がガンジス川とヤムナー川の河間地方(ドアーブ)へとすみついた。やがてインダス文明が崩壊すると、インドの文明の中心はインダス川流域からガンジス川流域へと移動した[2]紀元前1000年ごろに先住のドラヴィダ人にかわってアーリア人がガンジス川流域に住み着いた。

やがてガンジス流域を中心に十六大国と呼ばれる諸国が成立し、互いに覇権を競うようになった。このころの時代をヴェーダ時代と呼ぶが、最も古いヴェーダであるリグ・ヴェーダにおいて神聖な川とされているのはシンドゥ七大河インダス川サラスヴァティー川であり、ガンジス川は含まれていなかった。しかしそれに続く後期ヴェーダ時代に編まれた『サーマ・ヴェーダ』・『ヤジュル・ヴェーダ』・『アタルヴァ・ヴェーダ』の3つのヴェーダにおいては、ガンジス川は神聖な地位を獲得することとなった[3]。十六大国は抗争を繰り返すが、やがてその中から現在のビハール州を本拠とし、ラージャグリハを首都としたマガダ国と、現在のウッタル・プラデーシュ州北東部を本拠としたコーサラ国が強大化していった。

このころ、当時支配的だったバラモン教に対する批判として、ブッダによって仏教が起こされ、またジャイナ教もこの地域で起こった。やがてパータリプトラに首都を移したマガダ国がコーサラ国を破ってガンジス流域を統一した。

マガダ国ではいくつもの王朝交代があったが、紀元前317年頃に成立したマウリヤ朝アショーカ王の時代にインドをほぼ統一し、初の統一王朝となった。この後は王朝分立が続いた後、330年ごろにパータリプトラにてグプタ朝が成立し、再びガンジス流域を統一した。

その後、ガンジス流域を統一したのはデリーに本拠を置いたデリー・スルターン朝及びムガル帝国である。ムガル帝国の衰退後はアワド太守ベンガル太守が自立し各地を治めたものの、やがて河口部のコルカタに本拠を置いたイギリス東インド会社1765年に下流域であるベンガルの支配権を獲得して以後領域を拡大し、インド大反乱で支配権を取り上げられて以後は全域がイギリス領インド帝国領となった。

その後、1947年インド・パキスタン分離独立を経て、東パキスタンとなっていた下流域がバングラデシュ独立戦争の結果1971年バングラデシュとして独立し、現在の政治領域が確定した。
流域の地理.mw-parser-output .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .trow>.thumbcaption{text-align:center}}アラクナンダー川(英語版)ガンゴートリーを流れるバギーラティー川デーヴァプラヤーグ(英語版)でアラクナンダー川(英語版)(右)とバギーラティー川(英語版)(左)が合流し、この地点からガンジス川と呼ばれるようになる。聖地ハリドワールを流れるガンガーイラーハーバードの聖地サンガム(英語版)で最大の支流ヤムナー川と合流する。聖地であるヴァーラーナシーを流れるガンジス川ガンジス川沿いのラームナガル城パトナにあるガンジス川に架かるマハトマ・ガンジー橋ガンジス川デルタにあるスンダルバンス国立公園世界遺産シュンドルボンマングローブの群生地帯(世界遺産
上流域ヒマラヤ山脈のふもと、ガンジス源流域であるウッタラーカンド州Garhwal地方のガンジス支流図。山、湖、町には標高が記されている。

ガンジス川本流の最上流部はバギーラティー川と呼ばれており、ヒマラヤ山脈の南麓ガンゴートリー氷河を水源とする。水源では氷河の下から雪解け水が音を立てて流れ出しており、ゴームク(英語版)(牛の口)と呼ばれている。ゴームクの標高は3,892mである[4]。上流部ではバギーラティー(英語版)(???????)の名がある。デーヴァプラヤーグ(英語版)付近で支流の1であるアラクナンダー川(英語版)と合流する。そこから下流側がガンガー(????)と呼ばれている。なお、ここまでの流路はガンジス川の本流とされているバギーラティー川よりも、支流のアラクナンダー川の方が長いものの、ヒンドゥー教文化や神話においては、バギーラティー川こそが真のガンジスの源流であると見なされている[5][6]

ガンガーはこの後狭いヒマラヤの峡谷を約250km南下し、リシケーシュで断崖から河谷へと出る。さらにその約25km南にあるハリドワールで大平原へと出る[4]。ここまでがガンジス川の上流部である。なお、ハリドワールにはガンジス運河の頭首工があり、運河に豊富な水を供給している。
中流域茶色がガンジス川の流域、紫色がブラフマプトラ川の流域、緑色がメグナ川の流域。

ここからは河口部まで急流もなく、北インドの平原地帯(ガンジス平野の名がある。ヒンドゥスターン平野の一部)を流れる。ヤムナー川とガンジス川の間の河間平野はドアーブ(2つの川)地方と呼ばれる穀倉地帯となっている[7]

ハリドワールからはガンジス運河(英語版)が開削され、カーンプルで再びガンジス川に合流するまでドアーブ地方(英語版)を貫流し、この地方に灌漑用水をもたらしている。アラーハーバードで最大の支流ヤムナー川と合流する。ヤムナー川はガンジス川よりも流量が大きく、合流点の流量2950 (m3/s)[8] のうち58.5%はヤムナー川からの水が占めている[9]。イラーハーバードでガンジス川は東へと向きを変え、北のヒマラヤ山脈や南のヴィンディヤ山脈からさらに多くの河川を集める。特に北のヒマラヤから流れ込むうちでも、ネパール西部から流れ込むガーグラー川(カルナリ川)、ネパール中部からのカリ・ガンダキ川(英語版)(???? ???)、そしてネパール東部からのコシ川(英語版)は特に大きな支流であり、ガンジス本流の流量の70%はこの3支流からの水であるとされる[10]

ガーグラー川はガンジス本流に注ぎ込む中では最大の支流であり、流量は2,990 (m3/s)にのぼる。さらに南から流れ込むソーン川(英語版)から1,000 (m3/s)、カリ・ガンダキ川から1,654 (m3/s)、コシ川から2,166 (m3/s)が流れ込む。コシ川はガーグラー川とヤムナー川に次いで3番目に大きな支流である。このほかにも中流域には網の目のように支流が走っており、さらにその支流から運河が各地に建設されて灌漑に利用されているが、流路が安定しているために周囲の交通網の整備が容易であり、また流量の季節変動が大きく渇水期には大きく流量が減少する上に、周囲での灌漑の進展によってさらに流量が減少したことや開発によって河道にシルトが堆積したことなどから交通路としての利用は鉄道や道路の整備によって少なくなった。パトナを過ぎ、ビハール州北東部にてデカン高原の北東端にあたり、そこからは南東へと流れを変える。ここまでの約2200kmがガンジス川の中流域であり、これより下流の約600kmは下流域とされる。
下流域ガンジス川デルタは、世界最大の総面積100万haのマングローブ大森林地帯である。

下流域ではチベット高原からアッサム州を流れてきたブラフマプトラ川と合流し、さらにその下流でバングラデシュ北東部を流れるメグナ川と合流する。また多くの分流を作り、バングラデシュへ入り、ベンガル湾へ流れ込む。下流部ではブラフマプトラ川、メグナ川および分流により広大な三角州地帯を形成する。

分流のうち代表的なものには、コルカタ付近を流れるフーグリー川バングラデシュに流れるポッダ川(英語版)がある。流量が最も多いのはポッダ川であり、現在ではこの川が本流となっている[11]。フーグリー川はガンジスからの水のほか、西のジャールカンド州から流れてきた最大支流ダーモーダル川をもあわせ[12]サーガル島付近でベンガル湾へと注ぎこむ。16世紀まではフーグリー川がガンジスの本流であった[13]。ガンジス川デルタは、ほとんどが標高数mしかない低地であり、自然堤防をなす河川間の小高い土地でも標高50mは越えない。ガンジス川の本流・支流がデルタに運んでくる土砂は毎年25億トンにものぼる[14]。下流域においては勾配が少ないことと3大河川が合流することによる流量の巨大さ、さらに主にブラフマプトラ川によるチベット高原からの膨大な量の土砂の堆積によって流路が安定せず、そのため鉄道や道路の整備が困難であるため、この地域ではガンジス本支流の水運が重要な役割を果たしている。バングラデシュ国内だけで河川水路は3100kmにのぼり、国内の物資、人員の移動の4分の3を占めるまでになっている。また、流量の変動が著しいことと勾配がほとんどないこと、流路の不安定さから特に下流域においては洪水が多発し、バングラデシュの問題の1つとなっている。

しかし、ガンジス川の最下流部では少し様相が変わって、流路は比較的安定している。氷河期にはベンガル湾の水位は現在より135m以上低かったとされており、この関係で、当時はその低くなっていた海面に各支流が注ぎ込んでいたため、現在の海岸部近くでは、河道は深くなっている[15]。このような理由で、河道が現在の海水面よりも深く刻み込まれているため、デルタの上流部に比べれば河道変更は起こりにくい。ただし、今度はガンジス川下流デルタは低平であるため海から満潮時には潮汐が起こることがあり、ガンジス・ブラフマプトラ川合流点から上流30kmあたりの地点までは潮汐が観測できる。特に海岸部近くでは潮汐の影響を強く受け、乾季には塩害が起こることも多い。また、サイクロン時には高潮の被害もしばしば受ける。なお、ベンガル湾に近いデルタ地帯は世界遺産に登録されているシュンドルボン(ベンガル語で「美しい森」の意。)として知られる世界最大級のマングローブ林で、ベンガルトラの生息地の1つである。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:71 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef