燃料電池(ねんりょうでんち、英: fuel cell)は、電気化学反応によって燃料の化学エネルギーから電力を取り出す(=発電する)電池を指す。燃料には方式によって、水素、炭化水素、アルコールなどを用いる。 燃料電池は、補充可能な何らかの負極活物質(水素などの燃料)と正極活物質となる空気中の酸素等を常温または高温環境で供給し反応させることにより継続的に電力を取り出すことができる発電装置
目次
1 概要
2 方式
2.1 固体高分子形燃料電池 (PEFC)
2.2 りん酸形燃料電池 (PAFC)
2.3 溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)
2.4 固体酸化物形燃料電池 (SOFC)
2.5 アルカリ電解質形燃料電池 (AFC)
2.6 直接形燃料電池 (DFC)
2.7 バイオ燃料電池 (BFC)
3 4方式の比較
4 歴史
4.1 黎明期
4.2 2000年代
5 規制
6 国際標準化
7 普及への課題
8 実用化
9 用語
10 脚注
10.1 注釈
10.2 出典
11 参考文献
12 関連項目
13 外部リンク
概要
熱機関を用いる通常の発電システムと異なり、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換途上で熱エネルギーや運動エネルギーという形態を経ないため、熱機関特有のカルノー効率に依存しないことから発電効率が高い。また、システム規模の大小にあまり影響されず、騒音や振動も少ない。そのため、ノートパソコン、携帯電話などの携帯機器から、自動車、鉄道、民生用・産業用コジェネレーション発電所、軍事兵器まで多様な用途・規模をカバーするエネルギー源として期待されている。
燃料電池は電池本体の外部から正極材、負極材を投入するという点に着目すればレドックス・フロー電池に類似している。 燃料電池の場合、一般的に正極材(酸化剤)は空気中の酸素であり、反応後の物質は水蒸気や二酸化炭素として排出される一次電池的な利用となる。一方、レドックス・フロー電池の場合は正極材、負極材ともに液体であり、放電により排気ガスが出ることなく反応後の液体はタンクに戻される。電池に逆電圧をかけることで逆反応を起こすことができ、正極材、負極材として復活させることができる。このようにレドックス・フロー電池は二次電池的な利用が主となる。[1]
燃料電池は、方式ごとに水素や水素原料となる化石燃料等の利用が検討されている。直接水素を用いる場合は化石燃料を改質することにより取り出した水素を利用する。
水素を反応させ電気を取り出す仕組みとしては、水の電気分解の逆反応である 2H2 + O2 → 2H2O による場合が多い。反応時に熱を伴うだけでなく、発電効率の高いものほど反応に高温を必要とする傾向があり、1,000℃近くの環境を必要とする方式もある。反応によってできる物質は水であるが、生成されるのが高熱環境下であるため、実際に排出されるのは水蒸気または温水である。
各国で研究開発が進められており、電気化学反応と電解質の種類によって幾つかの方式に分けられる。
方式 主要な燃料電池のV-I特性
使用する電解質の種類によって主に4種類の燃料電池の方式が研究されている。アルカリ電解質形燃料電池(AFC)は、従来方式であり今後の利用は限定的だと考えられている。バイオ燃料電池は、他方式と全く異なっており不明な点が多い。
固体高分子形燃料電池 (PEFC)詳細は「固体高分子形燃料電池」を参照
固体高分子(膜)形燃料電池(PE(M)FC, Polymer Electrolyte (Membrane) Fuel Cell)は、イオン交換膜を挟んで、正極に酸化材を、負極に還元材(燃料)を供給することにより発電する。イオン交換膜としてナフィオンなどのプロトン交換膜を用いた場合は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC, Proton Exchange Membrane Fuel Cell)とも呼ばれる。起動が早く、運転温度も80-100℃と低い。