ガウス単位系
[Wikipedia|▼Menu]

ガウス単位系(ガウスたんいけい、英語: Gaussian units)とは、歴史的に用いられていた一貫性のある電磁気量の単位系の一つである。ガウス単位系は力学単位としてCGS単位系に基づいており、CGS-ガウス単位系(Gaussian-cgs units)とも呼ばれる。CGS単位系に基づく複数の電磁気量の単位系があるが、そのの中でもガウス単位系は主流の単位系であったため、単にCGS単位系という呼び方でガウス単位系を指すこともある。現在ではほぼ完全に国際単位系(SI)へと置き換えられており、ガウス単位系が用いられることは殆どない。
量体系の違い

歴史的に用いられてきた電磁気量の単位系に共通する特徴として、現在主流な単位系であるSIと、基づく量体系が異なることが挙げられる。ガウス単位系が基づく量体系も同様であり、SIが基づく国際量体系(ISQ)と異なっている。すなわち、各々の量体系で電磁気量の定義が異なっており、これに伴って各々の量体系でマクスウェル方程式のような電磁気量の関わる量方程式系も異なっている。
有理化詳細は「電磁気量の単位系#有理化」を参照

ガウス単位系は歴史的に旧い単位系のため、有理化されていない非有理系の量体系に基づいている。有理化とは、いくつかの方程式に含まれる無理数の係数 4π の有無であり、現在主流となっている ISQ では、マクスウェル方程式に係数 4π が現れないが、非有理系では無理数の係数が現れる。一方で、 ISQ では逆二乗則であるクーロンの法則ビオ・サバールの法則の分母に係数 4π を現れるが、非有理系では現れない。

これらは同じく旧い単位系である電磁単位系(EMU)と静電単位系(ESU)でも同様である。
静電気量の次元

ガウス単位系は、静電気量の単位に静電単位系と同じ単位を用いている。ガウス単位系(および静電単位系)が基づく量体系では、クーロンの法則が係数を含まないように、電気定数が ε0 = 1 に選ばれている。すなわち、ガウス系(および静電系)において、クーロンの法則が F = Q g Q ′ g r 2 {\displaystyle F={\frac {Q^{\text{g}}Q'^{\text{g}}}{r^{2}}}}

となる。これは電荷の次元が [力]1/2 [長さ] であり、力学量の次元と独立ではないことを意味している。ガウス単位系が力学単位としてCGS単位系に基づくことから、単位の一貫性により直ちに電荷の単位フランクリン(Fr)が、CGSにおける力の単位ダイン(dyn)と長さの単位センチメートル(cm)によりFr = dyn1/2 cm

と表される。

一方で、国際量体系では、電磁気量に力学量の次元とは独立の次元を与えており、力学単位で表されることはない。
磁気量の次元

ガウス単位系は、磁気量の単位に電磁単位系と同じ単位を用いている。静電気量と磁気量で異なる単位を用いると言うことは、静電単位系とも電磁単位系とも異なる量体系に基づいていると言うことである。電磁単位系では、ビオ・サバールの法則が係数を含まないように、磁気定数が μ0 = 1 に選ばれている。しかし、静電単位系と電磁単位系の基づく量体系(および国際量体系)では、電気定数と磁気定数とが ε0 μ0 = c−2 により光速度 c と関係付けられており、ε0 = 1 と μ0 = 1 が両立しない。これらを両立させるために、ガウス単位系の基づく量体系では種々の方程式に光速度 c を挿入することで解決している。

そのため、静電気量と磁気量で同じ次元を持つ量がある。例えば電場の強度と磁束密度が同じ次元を持つ。
方程式の比較

以下では、ガウス系と国際単位系(ISQ)との方程式系の比較を列挙する。
マクスウェルの方程式

マクスウェル方程式[1]名称ガウス系ISQ
運動方程式 div ⁡ D g = 4 π ρ g {\displaystyle \operatorname {div} {\boldsymbol {D}}^{\text{g}}=4\pi \rho ^{\text{g}}} div ⁡ D = ρ {\displaystyle \operatorname {div} {\boldsymbol {D}}=\rho }
rot ⁡ H g − 1 c ∂ D g ∂ t = 4 π c j g {\displaystyle \operatorname {rot} {\boldsymbol {H}}^{\text{g}}-{\frac {1}{c}}{\frac {\partial {\boldsymbol {D}}^{\text{g}}}{\partial t}}={\frac {4\pi }{c}}{\boldsymbol {j}}^{\text{g}}} rot ⁡ H − ∂ D ∂ t = j {\displaystyle \operatorname {rot} {\boldsymbol {H}}-{\frac {\partial {\boldsymbol {D}}}{\partial t}}={\boldsymbol {j}}}
拘束条件 div ⁡ B g = 0 {\displaystyle \operatorname {div} {\boldsymbol {B}}^{\text{g}}=0} div ⁡ B = 0 {\displaystyle \operatorname {div} {\boldsymbol {B}}=0}
rot ⁡ E g + 1 c ∂ B g ∂ t = 0 {\displaystyle \operatorname {rot} {\boldsymbol {E}}^{\text{g}}+{\frac {1}{c}}{\frac {\partial {\boldsymbol {B}}^{\text{g}}}{\partial t}}=0} rot ⁡ E + ∂ B ∂ t = 0 {\displaystyle \operatorname {rot} {\boldsymbol {E}}+{\frac {\partial {\boldsymbol {B}}}{\partial t}}=0}
ポテンシャル表示 E g = − grad ⁡ ϕ g − 1 c ∂ A g ∂ t {\displaystyle {\boldsymbol {E}}^{\text{g}}=-\operatorname {grad} \phi ^{\text{g}}-{\frac {1}{c}}{\frac {\partial {\boldsymbol {A}}^{\text{g}}}{\partial t}}} E = − grad ⁡ ϕ − ∂ A ∂ t {\displaystyle {\boldsymbol {E}}=-\operatorname {grad} \phi -{\frac {\partial {\boldsymbol {A}}}{\partial t}}}
B g = rot ⁡ A g {\displaystyle {\boldsymbol {B}}^{\text{g}}=\operatorname {rot} {\boldsymbol {A}}^{\text{g}}} B = rot ⁡ A {\displaystyle {\boldsymbol {B}}=\operatorname {rot} {\boldsymbol {A}}}

電磁気力

電磁気力名称ガウス系ISQ
ローレンツ力[1] F = q ( E g + v c × B g ) {\displaystyle {\boldsymbol {F}}=q({\boldsymbol {E}}^{\text{g}}+{\frac {\boldsymbol {v}}{c}}\times {\boldsymbol {B}}^{\text{g}})} F = q ( E + v × B ) {\displaystyle {\boldsymbol {F}}=q({\boldsymbol {E}}+{\boldsymbol {v}}\times {\boldsymbol {B}})}
クーロンの法則 F = Q g Q ′ g r 2 {\displaystyle F={\frac {Q^{\text{g}}Q'^{\text{g}}}{r^{2}}}} F = 1 4 π ϵ 0 Q Q ′ r 2 {\displaystyle F={\frac {1}{4\pi \epsilon _{0}}}{\frac {QQ'}{r^{2}}}}
ビオ・サバールの法則 d F d L = 2 c 2 I g I ′ g r {\displaystyle {\frac {dF}{dL}}={\frac {2}{c^{2}}}{\frac {I^{\text{g}}I'^{\text{g}}}{r}}} d F d L = μ 0 2 π I I ′ r {\displaystyle {\frac {dF}{dL}}={\frac {\mu _{0}}{2\pi }}{\frac {II'}{r}}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:32 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef