カー・パリネロ法
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カー・パリネロ法(カーパリネロほう、: Car?Parrinello method、CP法)は、1985年、カー(R. Car)とパリネロ(M. Parrinello)によって考案されたバンド計算の手法である[1]。従来用いられていた行列要素の対角化を行わずに固有値(及び固有ベクトル)を求めることにより、計算を大幅に高速化した。これにより、系の電子状態と共に、その構造の最適化(この部分は古典的分子動力学法を用いる)も可能とした。
名称に関して

本手法は、第一原理分子動力学法(first-principles molecular dynamics, FPMD, またはab initio molecular dynamics, AIMD)などとも呼ばれる。それぞれ微妙に異なるものを意味している場合もある。現在では、カー、パリネロによるオリジナルな手法が用いられることはほとんどなく、より効率化、高速化を図った手法に置き換わっている。ただし、これら現在主流となっている手法も広い意味でのカー・パリネロ法の範疇にあると言える。
カー・パリネロ法使用の利点

計算量の減少 : 対角化を使用しないため、計算量のオーダーをN3から最大 N log N 程度まで減らすことができる。N は使用する基底関数の展開数。

メモリの節約 : 同様にして必要なメモリも大体N2から、NMのオーダーにすることが出来る。M はバンドの数。ここで基底関数の数は、バンド数より一桁以上大きいことが前提(←平面波基底の場合、N ≫ M)

系の構造の分子動力学計算や最適化が電子状態計算と同時に行える。

ラグランジアンが出発点 L = ∑ i , k → ∫ m 。 ψ ˙ i , k → ( r → ) 。 2 d r → + ∑ I 1 2 M I R I → ˙ 2 − E tot [ ψ i , k → , R → I ] + ∑ i , j , k → Λ i , j , k → ( ∫ ψ ∗ i , k → ( r → ) ψ j , k → ( r → ) d r → − δ i , j ) {\displaystyle L=\sum _{i,{\vec {k}}}\int m|{\dot {\psi }}_{i,{\vec {k}}}({\vec {r}})|^{2}d{\vec {r}}+\sum _{I}{1 \over 2}M_{I}{\dot {\vec {R_{I}}}}^{2}-E_{\text{tot}}[{\psi _{i,{\vec {k}}}},{{\vec {R}}_{I}}]+\sum _{i,j,{\vec {k}}}\Lambda _{i,j,{\vec {k}}}\left(\int {\psi ^{*}}_{i,{\vec {k}}}({\vec {r}})\psi _{j,{\vec {k}}}({\vec {r}})d{\vec {r}}-\delta _{i,j}\right)} i {\displaystyle i}  : バンドの指標 k → {\displaystyle {\vec {k}}}  : k点 m {\displaystyle m}  : 波動関数に対する仮想質量 ψ {\displaystyle \psi }  : 波動関数 M I {\displaystyle M_{I}}  : イオン芯(原子核)部分の質量(Iは指標) R → I {\displaystyle {\vec {R}}_{I}}  : イオン芯の座標の位置ベクトル E tot [ ⋅ ] {\displaystyle E_{\text{tot}}[\cdot ]}  : 系の全エネルギー Λ i , j , k → {\displaystyle \Lambda _{i,j,{\vec {k}}}}  : ラグランジュの未定係数

ドットは時間微分を表し、上付きの"*"は複素共役を表す。 ∫ ψ ∗ i , k → ( r → ) ψ j , k → ( r → ) d r → = δ i , j {\displaystyle \int {\psi ^{*}}_{i,{\vec {k}}}({\vec {r}})\psi _{j,{\vec {k}}}({\vec {r}})d{\vec {r}}=\delta _{i,j}} 規格直交性(基底関数に対する制約) d d t ( δ L δ ψ ∗ ˙ i , k → ) = δ L δ ψ ∗ i , k → {\displaystyle {\frac {d}{dt}}\left({\frac {\delta L}{\delta {\dot {\psi ^{*}}}_{i,{\vec {k}}}}}\right)={\frac {\delta L}{\delta {\psi ^{*}}_{i,{\vec {k}}}}}}  波動関数部分 d d t ( ∂ L ∂ R → I ˙ ) = ∂ L ∂ R → I {\displaystyle {\frac {d}{dt}}\left({\frac {\partial L}{\partial {\dot {{\vec {R}}_{I}}}}}\right)={\frac {\partial L}{\partial {\vec {R}}_{I}}}} ← イオン芯部分


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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