カー・ニューマン解(カー・ニューマンかい、Kerr‐Newman metric、Kerr‐Newman solution)あるいはカー・ニューマン・ブラックホール解とは、一般相対性理論のアインシュタイン方程式の厳密解の一つで、回転する電荷を帯びたブラックホールを表現する軸対称時空の計量 (metric)である。このため、カー・ニューマン計量とも呼ばれる。ニュージーランドの数学者ロイ・カー (Roy Kerr)によるカー解の発見の2年後の1965年に、アメリカのニューマン (Ezra T. Newman) らによって発見された。質量・角運動量・電荷の三つのパラメータを持つブラックホール解として、一般相対性理論の描く時空の姿の理解に広く使われている。
カー・ニューマン計量は、次のように書ける。
d s 2 = − Δ ρ 2 ( d t − a sin 2 θ d ϕ ) 2 + sin 2 θ ρ 2 [ ( r 2 + a 2 ) d ϕ − a d t ] 2 + ρ 2 Δ d r 2 + ρ 2 d θ 2 {\displaystyle ds^{2}=-{\frac {\Delta }{\rho ^{2}}}\left(dt-a\sin ^{2}\theta d\phi \right)^{2}+{\frac {\sin ^{2}\theta }{\rho ^{2}}}\left[\left(r^{2}+a^{2}\right)d\phi -{a}dt\right]^{2}+{\frac {\rho ^{2}}{\Delta }}dr^{2}+\rho ^{2}d\theta ^{2}}
ここで、
Δ ≡ r 2 − 2 M r + a 2 + Q 2 {\displaystyle \Delta \equiv r^{2}-2Mr+a^{2}+Q^{2}}
ρ 2 ≡ r 2 + a 2 cos 2 θ {\displaystyle \rho ^{2}\equiv r^{2}+a^{2}\cos ^{2}\theta }
a ≡ J M {\displaystyle a\equiv {\frac {J}{M}}}
であり、 M {\displaystyle M\,} は、ブラックホールの質量 J {\displaystyle J\,} は、ブラックホールの角運動量 Q {\displaystyle Q\,} は、ブラックホールの電荷
である。ここでは、光速と万有引力定数を1とする幾何学単位系( c = G = 1 {\displaystyle c=G=1\,} )を用いている。
電荷がゼロ ( Q = 0 {\displaystyle Q=0\,} ) の場合、この解はカー解を再現する。角運動量がゼロ ( J = 0 {\displaystyle J=0\,} ) の場合、この解はライスナー・ノルドシュトロム解 (Reissner-Nordstrom解) を再現する。そして、電荷も角運動量もゼロの場合、シュヴァルツシルト解 (Schwarzschild解) を再現する。カー解と同様に、この計量がブラックホールとして理解されるのは、パラメータが a 2 + Q 2 ≤ M 2 {\displaystyle a^{2}+Q^{2}\leq M^{2}\,} のときである。その他、計量としての特徴は、カー解の項を参照されたい。
ブラックホール脱毛定理 (no-hair theorem) において、すべての現実的なブラックホールは、いずれ、角運動量・質量・電荷の3つの物理量のみを持つカー・ニューマンブラックホールに落ち着くと考えられている。また、「アインシュタイン・マクスウェル方程式での軸対称定常解は、カー・ニューマン解に限られる」というブラックホール唯一性定理 (uniqueness theorem) も存在する。
参考文献
Newman, E. T.; Couch, R.; Chinnapared, K.; Exton, A.; Prakash, A.; Torrence, R. (1965). “Metric of a Rotating, Charged Mass.”. J. Math. Phys. 6: 918-919. doi:10.1063/1.1704351
背景
相対性原理
特殊相対性理論
基礎
相対運動
基準系
光速
マクスウェルの方程式
公式
ガリレイ相対性(英語版)
ガリレイ変換
ローレンツ変換
結果
時間の遅れ
相対論的質量(英語版)
E = mc2
長さの短縮(英語版)
同時性の相対性(英語版)
相対論的ドップラー効果(英語版)
トーマス歳差(英語版)
相対論的ディスク(英語版)
時空
ミンコフスキー時空
世界線
ミンコフスキーダイアグラム(英語版)
光円錐
一般
相対論
背景
一般相対論の数学
関連文献
基礎
特殊相対性理論
等価原理
世界線
リーマン幾何学
ミンコフスキーダイアグラム(英語版)
現象
二体問題(英語版)
重力レンズ
重力波
慣性系の引きずり
測地的効果(英語版)
事象の地平面
重力の特異点
ブラックホール
方程式
線形化重力(英語版)
PPN形式
アインシュタイン方程式
測地線
フリードマン方程式
ADM形式(英語版)
BSSN形式(英語版)
ハミルトン=ヤコビ=アインシュタイン方程式(英語版)
発展
理論
カルツァ=クライン理論
量子重力理論
ブランス=ディッケ理論(英語版)
解(英語版)