カーボンブラック
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カーボンブラックの外観

カーボンブラック(carbon black)は、工業的に品質制御して製造される直径3-500 nm程度の炭素の微粒子[1]化学的には単体の炭素として扱われるが、表面には様々な官能基が残存した複雑な組成を持ち、いわゆる無定形炭素と呼ばれるものに含まれる。目次

1 概要

1.1 総称としてのカーボンブラック


2 用途

3 種類

3.1 製造法別

3.2 堅さ別


4 生産量

4.1 国別カーボンブラック生産量、生産能力


5 メーカー

5.1 日本

5.2 海外

5.2.1 中国

5.2.2 その他



6 発がん性

7 法規制

8 脚注・出典

9 関連項目

概要

化学業界ではカー黒(かーくろ)の俗称も使用される。一般的には石炭乾留で副生されるクレオソート油石油精製等で副生される重質芳香族油など、油やガスを不完全燃焼させて得るか、アセチレンなどといった炭化水素熱分解して製造する。不完全燃焼で生じる炭素の微粒子として、広義の用語であるスス(煤)は一般に工業的に品質制御して製造されていない副生物を指して呼ぶが、伝統的な製法で作られるの材料のススは、品質制御して作られており、カーボンブラックの一種と考えられる。

粒子径(粒の大きさ)、ストラクチャー(粒子のつながり)、表面性状(官能基)をさまざまに変えることにより特性が大きく変わり、これらは製造法によりある程度コントロールできる。黒度や塗料との親和性を変えたり、導電性を持たせたることも可能である。
総称としてのカーボンブラック詳細は「黒#黒の色料」を参照

黒色顔料を指す語としての「カーボンブラック」はふつう冒頭で定義した炭素の微粒子を指す。広義には炭素からなる黒色顔料の総称である。
用途

粒子表面の官能基を制御することにより、ゴムとなじみがよい性質を持たせやすい。このため、ゴム製品に補強材として添加される用途が使用量の90%を超えている[2][3]。カーボンブラックを補強材として含む製品としては車のタイヤがよく知られており、カーボンブラック需要の約70%を占める(タイヤが黒いのはそのためである)[3]。それ以外にも、黒い色を利用して黒色顔料としても使われ、カラー用カーボンと総称される。顔料としてのカーボンブラックの C.I. Name[4]はPigment Black 7で、塗料印刷インキ用の着色顔料として使用される。他にも電子・電気材料に導電性を持たせたり、紫外線を吸収させるような機能性を持たせる用途がある。

一般には黒色粉末であるが、工業用にはプラスチックやゴムと予備混合したマスターバッチやなどにコロイドとして分散させた液状品も販売されている。粉末品は袋に入れる他、タンクローリーで輸送される例がある。

具体的な用途は広範にわたり、下記のようなものが代表例である。

タイヤ、ベルト、ゴムシート、緩衝材・防舷材、機械部品等のゴム製品の補強材(上述)。タイヤやベルトにはハードカーボンと呼ばれる耐摩耗性の高いタイプを使用する。

塗料印刷インキ墨汁、着色顔料(上述)。液体中に分散させる他、直接プラスチックと混合して[5]、着色させる用途にも用いられる。

静電コピー機トナー:着色プラスチックを粉砕して微粒化して用いられる。

電線の被覆材:合成樹脂に配合して使用。紫外線の吸収性が高い性質を利用したものである。

導電性付与剤:導電性ゴムを含む電子部品の成型材料に添加したり、乾電池に使用する。

フロッピーディスクなどの磁気記録媒体への添加剤

化粧品マスカラアイライナーへの添加材:染料との併用。

食品着色料。

種類
製造法別

炭素微粒子は製造法により特徴が大きく変わるため、製造法の名でしばしば分類される。主な製造法(呼称)を挙げる。
ファーネス法(ファーネスブラック)
油やガスを高温ガス中で不完全燃焼させてカーボンブラックを得る製造法。燃焼させる原料により、オイルファーネスとガスファーネスに細分化される。大量生産に向き、粒子径やストラクチャーをコントロールしやすい。カーボンブラック製造法の主流はオイルファーネス法で、通常カーボンブラックとして流通している殆どがこのファーネスブラックである。
チャンネル法(チャンネルブラック)
天然ガスを燃焼させ、チャンネル鋼に析出させたものを掻き集めて得る、超微粒のカーボンブラック。ガスブラックとも呼ばれる。
アセチレン法(アセチレンブラック)
アセチレンガスを熱分解して得る。導電性が高く、不純物が少ない。
サーマル法(サーマルブラック)
蓄熱した炉の中でガスの燃焼と分解を繰り返して製造する。粗粒子のものが得られる。
堅さ別

粒子の堅さによってハードカーボンとソフトカーボンに分けられる[3]。主な品種に下記がある。

タイヤ用カーボンブラックの品番と物性例タイプ種別略称意味ASTM
コード[6]粒子径
nm引張強さ
MPa相対的
耐摩耗性
(実験室)相対的
耐摩耗性
(路面)
ハード
カーボン超耐摩耗性SAFSuper Abrasion FurnaceN11020?2525.21.351.25
準超耐摩耗性ISAFIntermediate SAFN22024?3323.11.251.15
高耐摩耗性HAFHigh Abrasion FurnaceN33028?3622.41.001.00
良加工性チャンネルEPCEasy Processing ChannelN30030?3521.70.800.90
ソフト
カーボン導電性XCFeXtra Conductive FurnaceN40026?30------
良押出性FEFFast Extruding FurnaceN55039?5518.20.640.72
汎用性GPFGeneral Purpose FurnaceN60049?60------
高応力HMFHigh Modulus FurnaceN68349?7316.10.560.66
中補強性SRFSemi-Reinforcing FurnaceN77070?9614.70.480.60
微粒熱分解FTFine ThermalN880180?20012.60.22--
中粒熱分解MTMedium ThermalN990250?3509.80.18--

生産量

2006年より中国が生産量、生産能力ともに世界一となっている。主要国の生産量と生産能力は下表の通り。
国別カーボンブラック生産量、生産能力

2012年
生産順位国名2012年
生産量(万トン)
[7]2012年
世界シェア2012年
能力順位2012年
生産能力(万トン)[8]2012年
稼働率(%)
1 中国430.837.7%1601.071.7%
2 アメリカ合衆国146.612.8%2169.886.3%
3 インド73.06.4%3100.972.3%
4 ロシア70.06.1%475.093.3%
5 日本62.55.5%572.786.0%
6 韓国52.34.6%660.286.9%


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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