カワニナ
分類
カワニナ(川蜷、学名: Semisulcospira libertina)は、カワニナ科に分類される巻貝の一種。東アジアの淡水域に棲む細長い巻貝で、ゲンジボタルやヘイケボタルといった水生ホタル幼虫の餌としても知られている。
なお「カワニナ」という語はカワニナ科 Pleuroceridae に分類される貝類全体や、さらにはオニノツノガイ上科に分類される貝類のうち淡水?汽水に生息する複数の科、すなわちカワニナ科、トゲカワニナ科 Thiaridae、Pachychilidae、Paludomidae などの貝類の総称としても用いられることがあるが、その場合は「カワニナ類」の意である。これらカワニナ類のうち日本には2科が分布し、琵琶湖水系からは独特な種分化を遂げた十数種ものカワニナ科の固有種が知られ(後述)、南日本の汽水域にはタケノコカワニナなどトゲカワニナ科(トウガタカワニナ科)の複数種が分布するが、外見が似ていて同定が難しいものも多い。
以下はカワニナ科の一種カワニナ Semisulcospira libertina という種について述べる。 成貝は殻長30mm・殻径12mmほどで、全体的に丸みを帯びた円錐形をしている。螺層(巻き)がよく残った個体では10階を超えるが、通常は殻頂が浸食によって失われ、下の3-4階だけが残る。殻本体の色は白いが、表面にオリーブ色や淡褐色の厚い殻皮を被り、時に色帯をもつ。多くは鉄分の付着により黒っぽく見える。類似種としてはチリメンカワニナ・クロダカワニナがある。また殻の模様や形、大きさなどからオオカワニナ、ミスジカワニナ、スジマキカワニナ、シマカワニマ等々の名で呼ばれたものもあるが、いずれも個体変異や地方変異、あるいは生態型とみなされている。 日本・朝鮮半島・中国・台湾まで、東アジアの亜熱帯域・温帯域に広く分布する。 川・用水路・湖沼などの淡水底に生息するが、都市部の河川など汚染の進んだ水域では見られない。落ち葉などが積もるような流れが緩い区域に多く、流れが速い渓流には少ない。主に落ち葉、付着珪藻、デトリタスなどの有機物を餌としている。ゲンジボタル幼虫・ヘイケボタル幼虫の他にも、コイ、モクズガニ、サワガニなどの天敵が存在する。 繁殖期は春と秋で、雌は卵ではなく微小な仔貝を300-400匹ほど産み落とす。なお産卵前の仔貝は胎児殻と呼ばれ、その形態や数は種の識別の目安にされる。 肉は食用になるが一般的ではない。また、肺吸虫 種としてのカワニナは一部地域で食用とされる他、ビオトープなどに持ち込まれることもある。しかしホタル類幼虫の餌としての利用が圧倒的に有名である。 ゲンジボタルの繁殖促進の試みは日本各地で行われており、特に都市近郊の公園などではそういった活動が盛んである。その一環で餌となるカワニナを増やす試みが行われる。本種は清流にすむと思われがちであるが、実際はある程度の有機物のある川に多産する。そのため、山間部では本種を増やすために野菜くずなどを川に投入し、成功を収めた例もある。 「新日本製鐵株式会社 環境報告書 平成11年度」のP19によれば、大分製鉄所でスラグに含まれる酸化カルシウムとケイ酸がカワニナの生育に有効であることを利用して、カワニナの増殖に成功している。それらの性質を利用してカワニナやそのエサのケイソウが増殖するコンクリート擁壁の特許も公開されている。(特開平11-247207、特願平10-48001) 他方、面倒なので業者から購入しているという自治体や自然保護団体もある。しかしこういった人為的移入は地域的なカワニナの特徴・遺伝的相違を攪乱する遺伝子汚染となる。また、移入したカワニナにタイワンシジミやコモチカワツボなどの外来種が付着して進入する可能性もあり、安易に他所のカワニナを移植してはならない。 カワニナ科 Pleuroceridae には多くの種類があり、カワニナの種内でも多くの変異(かつては亜種とされたものもある)が知られる。また琵琶湖・淀川水系では独自の種分化を遂げたビワカワニナ種群(Biwamelania 亜属)が知られている。カワニナの類似種であるチリメンカワニナやクロダカワニナもゲンジボタル幼虫の餌となる。 カワニナ属 Semisulcospira
特徴
利用
分類 カワニナ属の一種。大阪市水道記念館飼育個体
カワニナ Semisulcospira libertina - 模式種
チリメンカワニナ チリメンカワニナの這いずり痕