カルト宗教
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

「カルト」のその他の用法については「カルト (曖昧さ回避)」をご覧ください。

熱心なファンがいる映画については「カルト映画」をご覧ください。
オウム真理教による地下鉄サリン事件(1995年)

カルト(: cult)は、「崇拝」「礼拝」を意味するラテン語 cultusから派生した言葉である[1]フランス語: culte)では、宗教の宗旨別を意味し、学術用語としてはカリスマ的指導者を中心とする小規模で熱狂的な会員の集まりを指す[2]。現在では、宗教団体を中心に反社会的な組織や団体を指して使用される[2][3][4][5]

ヨーロッパでは、一般的な宗教から派生した団体を「セクト」(: secte)と呼び[6][要ページ番号]、カルトと同義として扱われている[7][要ページ番号]。
概要

「カルト」(英: cult)とは、米国で伝統的に異端的なキリスト教新宗教に対して使われた言葉である。特に1978年に発生した人民寺院事件以降、反社会的な宗教団体に対して「カルト」という言葉がマスメディアで使われ、警戒が呼び掛けられた。日本では1990年頃にこの概念が導入されたが、メディアはこの用語に関して慎重な使い方をしている[8]

精神科医ロバート・J・リフトンは、カルトの特徴として、崇拝の対象となるカリスマ的リーダーの存在、強制的説得と思考改革、リーダーによる一般会員の経済的・性的・心理的搾取の3つを挙げているほか[9]科学史家のマイケル・シャーマーは宗教団体に限定されない以下のカルトの定義を紹介した[10]

集団の指導者に対する崇拝 - 聖人あるいは神格に向けられるものとさして変わらない賛美

指導者の無謬性 - 絶対に間違いを犯さないという確信

指導者の知識の広さ - 哲学的な事柄から日常の些細なことまで指導者の信条や口にすることはなんでも無条件に受けいれる

説得のテクニック - 新たな信徒を獲得し、現状の信仰心を補強するために、寛大なものから威圧的なものまで手段はさまざま

秘密の計画 - 集団は絶対的な真理と道徳観を持ち、信仰の真の目的と計画が曖昧であり、新規入信者や一般大衆には明確に提示されていない

欺瞞 - 入信者や信徒は、指導者や集団の中枢部に関してすべてを知らされるわけではなく、また大きな混乱を招くような不備や厄介事に発展しそうな事件、あるいは状況は隠蔽されている

金銭及び性的な利用 - 金銭およびそのほかの資産を差し出すよう説得される。指導者には一人かそれ以上の信徒との性的関係が許されている

絶対的な真理 - さまざまなテーマにおいて、指導者、あるいは集団が見出した究極の知識に対する自信

絶対的な道徳観 - 指導者、あるいは集団が確立した、組織の内外を問わず等しく当てはまる、思考および行動に関する善悪の基準への盲信。その道徳の基準にきちんと従えば、組織の一員としていられるが、そうでない者は破門されるか罰せられる

日本でカルトとみなされている宗教団体の数は多くない。1995年(平成7年)の地下鉄サリン事件や反対派へのVXガス襲撃事件などのテロを繰り返したオウム真理教は破壊的カルトとみなされている。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)も祟りや因縁を騙り、や印鑑、多宝塔を霊感商法で販売した信者が有罪判決を受けたり、教団の使用者責任・監督責任が裁判所で認定されたこと、性差別的な教義などからカルトとみなされている[8]

その他にも、成田ミイラ化遺体事件を引き起こしたライフスペース、違法行為こそ行っていないがその特異な行動が注目されたパナウェーブ研究所、信者に対する性暴力が問題視された摂理(キリスト教福音宣教会)もカルトとみなされるほか、浄土真宗セクトの親鸞会日蓮正宗分派の顕正会自己啓発セミナーなども布教・教化方法に問題があるとされ、カルト視されることも少なくない[8]

日本においては戦後、政府が特定集団をカルトと名指しする例は一切存在しなかったが、2022年(令和4年)12月9日の参院消費者問題特別委員会において、岸田内閣河野太郎消費者担当相が「(旧統一教会は)カルトに該当する」と発言し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、反社会的な宗教団体である「カルト」に当たるとの認識を示した。岸田文雄首相は「社会的に問題がある団体」との説明にとどめている[11]

また、カルトが行う勧誘やメンバーの支配の手法としてマインド・コントロールが合わせて論じられる。例えば、三菱総合研究所大学生協はカルトによるマインド・コントロールを大学生活で注意すべき危険とし、大学生に向けて注意喚起を行っている[12]
カルトの分類
破壊的カルトジム・ジョーンズ人民寺院の指導者として知られる

破壊的カルトとは、一般にそのメンバーが故意にグループの他のメンバーや外部の人間を傷つけたり殺したりしたグループのことを指す。宗教的寛容を啓蒙するオンタリオ州の団体は、この用語の使用を「メンバーまたは一般大衆の間に生命の損失を引き起こした、または引き起こす可能性がある」宗教団体に特に限定している[13]。 反カルト団体である国際カルト研究協会の事務局長である心理学者のマイケル・ランゴンは破壊的カルトを「メンバーや勧誘を利用し、時には身体的・心理的に損害を与える高度に操作的な団体」[14]として定義している。

精神科医のジョン・ゴードン・クラークは、全体主義的な統治システムと金儲けの強調が破壊的なカルトの特徴であると主張している[15]。『カルトと家族』で著者は破壊的カルトを精神病質症候群として定義するシャピロを引用し、その特徴は以下のようなものであると主張する。「行動や人格の変化、個人的アイデンティティの喪失、学業活動の停止、家族からの疎外、社会への無関心、カルト指導者による顕著な精神支配と奴隷化」[16]である。

ラトガース大学社会学者ベンジャミン・ザブロッキの意見では、破壊的カルトはメンバーに対する虐待が生じるリスクが高く、それはメンバーがカリスマ的リーダーを崇拝し、リーダーが権力によって堕落することに一因があると述べている[17]。 バレットによれば、破壊的カルトに対してなされる最も多い告発は性的虐待であるという。神学者のクラネンボーグによれば、メンバーに標準治療を利用しないように指導するグループは危険である[18]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:154 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef