カリヨン
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この項目では、西洋の鐘の一種について説明しています。

投資銀行については「カリヨン (投資銀行)」をご覧ください。

エドワード・エルガーの楽曲については「カリヨン (エルガー)」をご覧ください。

ワシントン公園のカリヨン。フランス・ペルピニャンのサン=ジャン=バプティスト教会でのブライアン・スウェイガーによるカリヨン演奏。

カリヨン(: carillon、アメリカ: [?kar?l?n] KERR-?l-on or イギリス: [k??r?lj?n] k?-RIL-y?n;[1][2] フランス語: [ka?ij??])は、調律した鍵盤を組み合わせて演奏する有音程打楽器であり鍵盤楽器[3]体鳴楽器。日本語では組み鐘と訳される[4]。音色を揃え調律した青銅製の鐘を複数組み合わせ、鍵盤を使ってメロディーと和声を演奏する。多くは塔状の建築物に納めた鐘を、塔内にあるコンソールから演奏する。現在の形態に近いものは15世紀にオランダで開発され[4]、19世紀までネーデルラント(現在のベルギー、オランダ、フランスの一部)を中心に広まり、現代では世界中に分布している。
概要

カリヨンは鐘楼などの塔状の建築物として設置される楽器であり、歴史的には時報を流す目的で設置されてきた[5]。その多くは教会学校地方自治体などの団体が保有している。演奏にはバトン式鍵盤とペダルを用いるため鍵盤楽器であり、鐘を叩くことで発音するため体鳴楽器である。

カリヨンはタワーベルと同じくスイングベルから派生した楽器である。カリヨンの練習用の楽器からグロッケンシュピールが作られた。また、カリヨンの持つ自動演奏の仕掛けはオルゴールの元となった[6]。1999年にはベルギー、フランスの古いカリヨンが当時の技術、景観、あるいは重要な建築であると評価され、ベルギーとフランスの鐘楼群が世界遺産に登録されている。

カリヨンを含めて、調律した鐘を並べて演奏する楽器には音色、サイズ、重さ、形状において多彩なバリエーションがある。カリヨンと演奏方法やアクション機構が同じでも鐘が23個(2オクターブ)以下のものはカリヨンではなくチャイムと呼ばれる[7]

カリヨンは大まかに伝統的カリヨンと非伝統的カリヨンの2つに分類される。伝統的カリヨンとは、人がバトン式鍵盤を用いて演奏し、電気式や電子式、コンピューターによるアクションの伝達を行わないものである。伝統的カリヨンは700ほどあると考えられており[8]、その多くはヨーロッパのネーデルラント周辺と、アメリカ合衆国にある。非伝統的カリヨンとは、鍵盤を持たず、人が演奏できないか、人が演奏してもその動力を電気式や電子式で鐘に伝えるようになっているものである[7]。500個ほどの存在が知られており、その多くは西ヨーロッパにあると考えられている。数は少ないものの、演奏の仕組を小型化・軽量化して台車に乗るようした移動式のカリヨンもあり、トラベリングカリヨンと呼ばれている。

伝統的カリヨンと非伝統的カリヨンの境界について、楽器によっては両方の特徴を持つものもあり、文献、団体などによって境界が異なる[9]。本記事では北アメリカ大陸カリヨン連盟(GCAN)の定義に従い、単にカリヨンと記載した際には「人が演奏可能なバトン式鍵盤を持ち、機械式のアクションで人力を伝達して2オクターブ以上の調律した鐘を叩いて演奏する楽器」を中心に記載する。

楽器の数が限られているため、演奏者の数は少ない。カリヨン奏者となるためには、ベルギーやオランダにあるカリヨン専門の学校や、北アメリカの複数の大学のカリヨン奏者の育成コースで演奏方法を学ぶことができる。専門の学校を卒業するか、ギルド認定試験に合格することで認定カリヨン奏者になれる。

日本国内にはカリヨンと呼ばれる楽器あるいはモニュメントが1993年時点で300箇所以上ある[10]。そのほぼ全ては鍵盤を持たない自動演奏のみが可能なものか、鍵盤があっても動力を電気式で伝える非伝統的カリヨンであり、この項目でいうカリヨンには該当していない。日本国内でカリヨンに当てはまるものは4つ、そのうち3つが世界カリヨン協会にカリヨンとして登録されている[11]。また、いくつかの歴史的カリヨンの存在が確認されている。2021年時点で日本出身で認定を受けたカリヨン奏者は数人のみ知られており、2019年に日本カリヨン協会[12]、2020年に日本カリヨン演奏家協会[13]が設立されている。
名称と語源

カリヨンという語は、18世紀ごろに古フランス語の carignon (または quarregon と綴る。「4個組みのベル」の意)から造られた。quarregon はラテン語の quaternionem(クワテルニオ、「4個組」を意味する)、これはさらにラテン語のquater(「4回」を意味する)から来ている[14]。最も初期のカリヨンは、4つの鐘を組み合わせてウエストミンスターの鐘のようなメロディーを奏でていたためこう呼ばれた。 carillon という語はかつて楽器ではなく、複数の鐘で演奏するメロディーを指していた可能性がある[1]。ドイツ語では、フランス語の carignon を使うかドイツ語で Glockenspiel (「鐘の演奏」を意味する)と呼ぶ。これは楽器名のグロッケンシュピール(glockenspiel)と同じ綴りだが区別する必要がある[15]。オランダ語では beiaard と呼ばれており、その語源はよくわかっていない[16]

カリヨンの演奏者をカリヨン奏者と呼び、英語圏ではフランス語から carillonneur (アメリカ: [?k?r?l??n??r] KERR-?-l?-NUR, イギリス: [k??r?lj??n??r] k?-RIL-y?-NUR[17])、日本語でもこれを英語風に読んでカリヨネアと呼ぶことがある。カリヨン、カリヨネアは18世紀のスペイン継承戦争後にこの楽器がイギリス軍に紹介されてから英語話者の間で使われるようになった[18]。フランス語の carillonneur はカリヨンを演奏する男性にのみ使われる言葉であり、フランス語で女性のカリヨン奏者を表すcarillonneuse は英語圏、日本語圏では使われていない。英語圏では他にカリヨン奏者を表す言葉として carillonist も使われている。carillonist のほうがスペルがわかりやすく発音も明快であるため、一部のカリヨン奏者は carillonneur を carillonist で置き換えることを望んでいる[19]。2018年に、世界カリヨン連盟は会話で使用するのに好ましい用語として carillonist を採用した[20]
特徴
構造
鍵盤フンンス、メーヌ=エ=ロワール県の聖心教会のカリヨンコンソール

カリヨンは鍵盤楽器であり、人間が演奏可能なバトン状の鍵盤を持つ。鍵盤の形状はピアノやオルガンとは大きく異なるものの、鍵盤の配列はよく似ている[21]。他の鍵盤楽器のキーに当たるものは丸みを帯びた木の棒(=バトン)で作られており、長さは20cm弱、太さ2cm弱の独特の形状をしている。鍵盤の構成は他の鍵盤楽器同様、ピアノの白鍵にあたる全音階のバトンが横一列に並び、その5cm?10cmほど上にピアノの黒鍵に相当する半音階のバトンが並ぶ[21]。バトンのサイズはピアノやオルガンの鍵盤よりも大きく、隣り合うバトン同士は5cmほど離れている。奏者は手を握り、拳の小指側でバトンを叩くようにして演奏する[22]。そのため片方の腕で出せる音は基本的には一度に1音のみとなり、両手両足を用いても一度に4音となる。低音側の1.5オクターブから2オクターブはペダルにも割り当てられ、鍵盤でもペダルでも音を出すことができる。ペダルと鍵盤は接続されており、ペダルを踏むと同じ音の鍵盤側のバトンも下がる挙動となる[21]。カリヨンのペダルはオルガンほど長くはなく、短く太く、間隔が広く作られている[23][注釈 1]

20世紀以降、カリヨンの鍵盤とペダルには、北アメリカカリヨンギルド (GCNA) による規格と、北ヨーロッパ規格の二つが存在していた。二つの規格は外側のペダルが内側に向けて曲がっているかどうか、キーのストロークなど幾つかの点で違いがあった[24]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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