カラーコレクション
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カラーコレクション(Color Correction、カラコレ)とは、映画などの映像作品において、映像の色彩を補正する作業である。フィルム時代には、原版のフィルムに切れ込みを入れそのタイミングにあわせてフィルタを入れ替えることによって実現していたため、「タイミング」とも呼ぶ。

作品全体を通してのトーンを決めたり、前後のカットの色味を合わせたりする。また、1カットを合成する際、それぞれの素材の色味を統一させることもカラーコレクションと呼ぶ。昼間撮影したシーンを夕暮れ時のように見せかけることもできる。

この作業を専門に行うオペレーターは「カラリスト」と呼ばれる。(表記は「カラリスト」であるが、発音は「カラーリスト」という場合が多い)また、色変更を専門に行う機械のことをカラーコレクタという。

昔の映画製作においては撮影フィルムをフィルムスキャナー(英語版)で取り込み、デジタル編集した後にフィルム・レコーダーで書き出していた (デジタル・インターミディエイト)。映画館によって採用されているシステムが異なっており、様々な特性のカラーフィルムへと書き出していた。近年はデジタル映画カメラデジタルシネマが普及し映像制作がフルデジタル化されたものの、デジタルで撮影された映像を意図的にフィルム調の色合いや24fpsのフレームレートにしてフィルムルック(英語版)を作ることなどが一般的に行われるようになった。また、カラリストのスタイルによるが、カメラマンや監督に対して作品のトーンやルックを提案をする場面も多く、単なる「補正(コレクション)」の範疇を超える処理が行なわれるようになったため、それら様々な色調調整を総称して カラーグレーディング (Color grading) または、略してグレーディングということが多くなった。海外や特に北米においては映画やドラマのポストプロダクションにおけるカラーグレーディング、仕上げ作業のことをDI(元はDigital Intermidiateの省略)と呼ぶことが一般的である。
カラリスト

カラリストとは、主にカメラマンや監督と共に、映像作品の色に関する雰囲気を変えたり、実際の製品と同じ色にするなどの色調整を専門的に行うオペレータである。また、カラーマネジメントに精通しており、グレーディングされた映像を多様なディスプレイやスクリーン上で演出意図通りに表示するための責任者でもある。

職業としてはカラリストと呼ぶことが一般的だが、映画などのスタッフロールでは、DIカラリストとしてクレジットされることも多い。

DIカラリストというのは、主に北米を中心とした海外にて映画のグレーディングを担当したカラリストがクレジットされる名称で、これはカラーグレーディングを含めた仕上げ作業をDIと呼ぶことが定着したことから付けられた(英語表記はDigital Intermidiate Colorist)。また、ハリウッドにおいては、映画のカラーグレーディングを担当出来るのは、カラリストの中でも一流の者だけという意味でこのように呼称している背景がある。しかし日本や他の国々では、単にハリウッドのクレジットロールに準じて呼称している。

また、カラーグレーダーという呼び名もある。これはカラーグレーディングをする人という意味であるが、DI黎明期にアメリカでカラリストのバックグラウンドを持たない者がカラーグレーディングを担当した際に呼称したのが始まりで、現在では海外作品のクレジットロールでも見かけることは稀であり、一般的ではない呼称である。日本においては敢えてカラリストとの差別化を図る意図で呼称している様であるが、基本的に役割は同じである。
カラリストの仕事

カラリストに求められることは主に以下である。
適正な色の再現
これは、撮影された時の色が正確に表現されるよう、時にその時に撮影したカメラマンが同席し、カラリストに指示をしながら、色を変更していく。この時の色は「ノーマル」ともといわれる。また、CM等で商品が映っているカットは、商品の色が適切に再現されているかも重要である。
カットごとの調整(カラーマッチ)
時間がバラバラに撮影される映画・CMなどでは、太陽の傾きや雲の変化などにより前後のカットで色が異なってしまう。またスペクトル特性の異なる複数のカメラやレンズが撮影に使われることもあり、それによっても色が異なってしまう。そのままではおかしいため、一連のカットを同じ色調・明るさになるように調整する必要がある。カラーマッチでは撮影時に
カラーチャートを映しておくことで半自動的な処理が可能となる (DaVinci ResolveのColor Match Palette機能など)。また、AIでカラーマッチを行うソフトウェアも登場している (Adobe Premiere Pro 12.1以降[1]、DaVinci Resolve 16以降[2]など)。
撮影時間・状況の変更
撮影は時間的にタイトであり、必ずしも狙った画が撮れるとは限らない。たとえば、脚本では夕暮れのシーンだが、役者・スタッフのスケジュールや、撮影場所の時間的制約から日中に撮影せざるを得ない場合は、カラーコレクションで夕方にする場合がある。また、雨のシーンでは、撮影時に人工的に雨を降らせ、カラーコレクションで色の輝度を抑え、雨のシーンを再現することがある。しかし、どれくらい再現できるかはその状況に左右される。
記憶色の再現
人間の視覚はハント効果により輝度が高いほど色合い (鮮やかさ) が高くなる (色の見えモデル(英語版)参照) ものの、表示における最大輝度は環境によって異なっている (HDTV向けのマスターモニターが100nit[3]、一般的SDRディスプレイが250-300nit[4]、一般的なデジタルシネマが48nit[5]など)。またフィルムエミュレーションやガンマカーブなどで意図的に輝度を変化させることも行われる。最終的な輝度によって記憶色とのズレが大きくなるため、必要に応じて部分的に記憶色へ近づけることが行われている。
イメージの再現
カメラマン・監督が考える抽象的なイメージを、具体的に色として再現する。寒いから青く、熱いから赤くといった基本的なものから、寂しい・切ない・嬉しい・悲しいといった感情的なもの、ほのぼの・やわらかい・スッキリ・カッコ良いといった見た目的なものまで、表現は多彩である。故に芸術的センスを求められる一面もある。
おいしさの表現
CMで多いが、肉に滴る肉汁をおいしそうに見せたり、コーヒーの香り立つ感じ、ビールCMでの水しぶきを強調し切れ味があるような感じを表現する。このようなカットのことをシズルカットといい、よく表現できていることを「シズル感が出ている」等と表現する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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