この項目では、動物について説明しています。その他の用法については「カニ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
カニ
様々な種類のカニ
分類
カニ(蟹)は、十脚目短尾下目(たんびかもく、Brachyura、別名:カニ下目)に属する甲殻類の総称。タラバガニやヤシガニなどは十脚目異尾下目(ヤドカリ下目)に属するが、これらも漁業・流通等の産業上「カニ」として扱うことがある[1][2]。また分類学において、本分類以外の水産節足動物で「カニ」の名を与えられているものも多い。 熱帯から極地まで、世界中の海に様々な種類が生息し、一部は沿岸域の陸上や淡水域にも生息する。成体の大きさは数mmしかないものから、脚の両端まで3mを超すタカアシガニまで変化に富む。箱形にまとまった頭胸部に5対の歩脚(胸脚)があり、このうち最も前端の1対が鉗脚(かんきゃく:はさみ)となる。触角は2対あるが、どちらもごく短い。腹部は筋肉が発達せず、頭胸部の腹面に折り畳まれる。ただしそれぞれ例外もある。 なお、食用の「カニ」としてタラバガニやヤシガニ等も知られるが、これらは正確には短尾下目ではなく異尾下目に分類される。よく見ると歩脚が3対6本しかないように見えるが、これは第5歩脚が甲羅内の鰓室(鰓がある空間)に折り畳まれているためである[1][2]。 大部分が頭胸部からなる体は、背面全体が堅いキチン質の頭胸甲(甲羅)で覆われている。頭胸甲の前縁から一対の柄の付いた複眼が突き出し、通常はすぐ外側の溝(眼窩)に倒して収納できる。触角は2対あるがいずれも短い。第一触角は前に突き出して上に折れ、先端に小さな二枝
概要
特徴
5対10本の胸脚の内、第1歩脚は鉗脚(はさみ)に変化していて、餌を掴んだり敵を威嚇したりするのに用いる。シオマネキのオスでは片方の鋏が巨大化するが、大きな鋏は求愛行動のみに使い、採食にはもう片方の小さな鋏を用いる。他4対の胸脚は鉗脚ではなく、歩くための「歩脚」となる。但し例外もあり、ムツアシガニ科は名の通り歩脚が3対6本しかない。カイカムリやヘイケガニ等では第5脚あるいは第4・第5脚が小さな鉗脚、あるいは鉤状に変化し、これで海綿や貝殻を背負って身を隠す。ワタリガニ科では第5脚、キンセンガニ科では4対の脚全てが鰭状に変化している為、歩きより泳ぎの方が得意である[1][2][4]。このような鰭状の遊泳に向く脚を遊泳脚と呼ぶ[5][6]。
多くのカニが「横歩き」をするが、ミナミコメツキガニは前歩き、アサヒガニ科やカラッパ科のカニは後ろ歩きをする。クモガニ科とコブシガニ科のカニは七個の節からできている脚の各節が管状で、前後左右へ自由自在に動くことができる[7]。また横歩きしか出来ない種類でも回転で弱らせると暫く縦歩きをする。
エビ類やヤドカリ類と違って腹部の筋肉は発達せず、また尾部先端の「尾扇」もない。腹部はアサヒガニ等一部の分類群を除いて頭胸甲の下側に折り畳まれる。その形状から俗に「ふんどし」とも呼ばれる。オスの腹部は幅が狭く、1対の交尾器があるが、メスの腹部は抱卵する為に幅が広く、卵を保持する為の腹脚が発達する[1][2]。
呼吸は頭胸甲の両側にある鰓で行う為、生存には水が不可欠である。鰓は、「ガニ」ともいい、俗に有害であるといい、「カニは食っても(食うても)ガニ食うな」といましめられる。陸上生活にある程度適応したアカテガニやオカガニ類等も、たまに水分補給をする必要がある。水揚げしたカニが「泡を吹く」のは、限られた水を繰り返し使っているうちに水分の蒸発や鰓の粘膜成分が混じる等が原因で粘着性が出て泡となったものである。但し陸生種は長時間の乾燥に耐えうるので泡を吹くことは少ない。また水中に居るカニは泡を吹かない。また、茹でると殻が赤くなるのは、甲羅の中で通常蛋白質と結び付いているアスタキサンチンという色素が、加熱により蛋白質と分離するからである。
発生となる。これは陸上生活に適応したアカテガニやオカガニ類とて例外ではなく、初夏の新月の夜など特定の時期に一斉に海岸に集まり、それぞれに水中で産卵(実際には卵の中で育った幼生を放出)して、再び内陸へと戻ってゆく行動が見られる。海棲のカニでは普通、初めにゾエアという幼生の時期があり、次いでメガロパ期にややカニらしくなり、やがて稚ガニとなって底生生活にはいる。但しサワガニとヤマガニは幼生期を卵の中で過ごす為、一生を海と無縁に、淡水中で過ごす[1][2]。
生息環境ケガニズワイガニ
淡水・汽水・沿岸域から深海や洞窟まで、様々な水域に色々なカニが生息する。陸上、純淡水に生息する種は少なく、汽水域、海岸線から海中に大部分が集中する。マングローブ林では木に登っているものもある。干潟では小動物として数が多く、もっともよく目立つものである。巣穴を深く掘るものが多く、底質の構造に大きな影響を持ち、水鳥の餌としても重要である[1][2][3][4]。
他の動物の体を生息場所にするものもあり、サンゴやウニ、ウミシダなどに生息するものも知られるが、寄生か共生かは判別し難い。カキやアサリなど貝類の体内に生息する物もおり、それらを使った料理から出てくることもある[1][2]。