カナディアン・ウイスキー
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さまざまなカナディアン・ウイスキー

カナディアン・ウイスキー(: Canadian whisky)とは、カナダ国内で、カナダの法律に従って作られるウイスキーである。かつては「one day whisky」とも呼ばれる劣悪な蒸留酒であったが、隣国アメリカ禁酒法の時代に生産を伸ばし、カナダで法律が整備された近年では、どの銘柄も一定以上の品質のウイスキーとなっている[注釈 1]。なお、今日のカナダは世界的に見てウイスキーの生産量の多い地域の1つであり、日本においては、カナダをウイスキーの五大産地の1つとし、カナディアン・ウイスキーを世界五大ウィスキーの1つとして数えることが一般的となっている[注釈 2]
歴史

カナディアン・ウイスキーの誕生は、一説によればアメリカン・ウイスキーの誕生よりもやや遅く(やや歴史が浅く)、1769年であったとされる[1]。しかしながら、カナダで最初の蒸留器を備えた酒の醸造所が、ウィスキーの輸入の削減を目的として、現在のモントリオール付近に建設されたのは、1668年のことであり[2][3]、カナダで蒸留酒の生産が始まったことをカナディアン・ウイスキーの誕生と考えるならば、17世紀後半にはカナディアン・ウイスキーが誕生していたともいえる。いずれにしても、カナダでのウイスキーの生産が本格化したのは、アメリカ合衆国の独立戦争後に、アメリカ合衆国の独立に批判的なイギリス系の農民が、当時はまだイギリスの植民地であったカナダに移住し、そこで穀物の生産を開始した頃であるとされている[4]

カナダでは18世紀の後半に穀物が過剰生産となり、その余剰穀物を使って、製粉所が蒸留酒の製造を始めた[4]。当時の製粉業者は、製粉業が本業であったが、そのほとんどが副業として蒸留酒作りを行い、中には蒸留酒作りを本業にする業者も現れた[2]。一説によれば1787年には、ケベックで3箇所、モントリオールで1箇所、蒸留酒の製造を専門に行う蒸留所があったとも言われる[5]。また、一説によれば、1840年代には200以上の蒸留酒の蒸留所が稼動していたとも言われる[1]

そこで生産される蒸留酒は、その多くはアメリカ合衆国向けであった[1]。ただし、この頃の製品は「one day whisky」とも呼ばれる粗悪品で、蒸留を行うと、ほぼそのままで(事実上熟成を行わずに)、1日後か2日後には製品として出荷するといった具合であったと言われる[1]。なお、この蒸留酒は今日のカナダでは、同国の法律の関係で「ウィスキー」と名乗ることはできない。

カナダ・ウイスキーの代表的銘柄である「カナディアン・クラブ」は1856年にその蒸留所をオンタリオ州のウォーカーヴィルで創業している[6]。当時、カナダでのウイスキーは樽での販売が普通だったが、「カナディアン・クラブ」は、ボトリングし(瓶に詰めて)、さらに製造保証書を付けて販売したという点で、カナダのウィスキー史の中では特筆に価する[6]

カナダでのウィスキーは、19世紀の後半までは、ライムギを原料としたものが主流であった[4]。しかし、1850年代には連続式蒸留機が導入されたり[5]、また、この19世紀の後半からはトウモロコシなども原料として使われたりするようになった[4]ことで、カナダのウィスキーは味などが変化した[4]。今日のカナディアン・ウィスキーは、ライムギ以外にもトウモロコシがしばしば使用され、また、その蒸留過程において連続式蒸留機を使うのが普通である[7]。したがって、今日のカナディアン・ウィスキーの特徴は、この頃に獲得されたと言える。

カナディアン・ウィスキーにとっての次の転機は、1920年1月16日から1933年12月5日にかけて、隣国アメリカ合衆国禁酒法の時代に入ったことである[3][8][7][4][5]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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