カナイオーロ
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「ウーヴァ・デイ・カーニ」はこの項目へ転送されています。同じくウーヴァ・デイ・カーニの別名をもつ黒ブドウ品種については「アリアニコ」を、白ブドウ品種については「ドルペッジョ」をご覧ください。

カナイオーロ
ブドウ (Vitis)
ジョルジョ・ガレシオによるカナイオーロの果房の標本図
色黒
ヨーロッパブドウ
別名カナイオーロ・ネロなど(別名節を参照)
原産地 イタリア
主な産地トスカーナ州
VIVC番号2037
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かつてカナイオーロはキャンティの主要なブレンド用ブドウ品種であった。

カナイオーロ (Canaiolo) (イタリア語: [kana?jo?lo] 別名カナイオーロ・ネロ (Canaiolo nero) またはウーヴァ・カニーナ (Uva Canina) ) は、イタリアの赤ワイン用ブドウ品種であり、イタリア中部の各地で栽培されているが、とりわけトスカーナ州において最もよく知られている[1]。そのほかにカナイオーロの植栽がみられる地域としては、ラツィオ州マルケ州サルデーニャ州などがある[2]。カナイオーロは、サンジョヴェーゼやコロリーノ(英語版)と並んでキャンティのワインに使用されることがあり、ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノにおいてはサンジョヴェーゼに次ぐ2番目に重要な使用品種である[3]。キャンティの歴史においてカナイオーロは、18世紀までは主要な品種としてサンジョヴェーゼを上回る比率で使用されていたようである[1]。人気があった理由のひとつとして、カナイオーロは腐敗させずに半乾燥状態にすることができ、発酵過程の期間を引き延ばすゴヴェルノ (governo) という手法に利用できたことが挙げられる[1]。19世紀にベッティーノ・リカーゾリ(英語版)が生み出したキャンティの製法では、カナイオーロはサンジョヴェーゼを補助する役割を与えられ、ワインのアロマ損なうことなく果実味を足したりタンニンを和らげたりするのに用いられた[4]北米種ブドウの新しい台木にうまく接ぎ木できなかったカナイオーロは、フィロキセラ禍後、次第に人気を失っていった[5]。2010年時点のイタリア国内におけるカナイオーロの栽培総面積は1,068ヘクタールにまで落ち込んでいる[1][6]。現在トスカーナ州のワイン生産者たちのあいだでは、質の高いクローンを選定したりカナイオーロの一般的な使用を復活させようする動きがみられる[2]
起源・歴史

ブドウ品種学者たちは、カナイオーロの原産地はイタリア中部である可能性が最も高く、おそらくはトスカーナ地方であろうと考えている。14世紀初頭には、農学者デ・クレシェンツィがその著作においてウーヴァ・カナユオラ (Uva Canajuola) というブドウに言及し、「とても美しいブドウであり、保護すべき」と評している[7]。カナイオーロはキャンティ地区で広く栽培されていた品種であり、18世紀まではキャンティのワインのブレンドにおいて最も比率の高いブドウ品種であった可能性が非常に高い。イタリアの植物学者コジモ・ヴィッリフランキの著作 (『トスカーナのワイン醸造』Oenologia toscana (1773) ) には、キャンティのワインはカナイオーロ・コローレ (Canaiolo Colore) を主体とし、サンジョヴェーゼ、マッモーロ、マルツェミーノ(英語版)とブレンドしていたと述べられている[7][8][4]

19世紀半ばに第2代リカーゾリ男爵ベッティーノ・リカーゾリは、サンジョヴェーゼを主体とし、果実味を強めサンジョヴェーゼのタンニンを和らげる目的でカナイオーロを加える、新しいキャンティの製法を生み出した[5]。ワイン専門家のヒュー・ジョンソンによると、サンジョヴェーゼとカナイオーロの関係は、カベルネ・ソーヴィニヨンメルローの果実味で和らげるというボルドーの伝統的なブレンド方式といくらか類似しているという[9]。サンジョヴェーゼの増産に殺到するワイン生産者が相次ぎ、サンジョヴェーゼが突出した著名な栽培品種になるにつれ、カナイオーロの生産は衰退していった。

14世紀から続く伝統的な手法である[9]ゴヴェルノにおいて、カナイオーロは陰干し期間中に腐敗しにくいという特性から重宝された[1]。しかし戦後のメッツァドリア制(地主と小作農が出費と利益を折半する制度)の解体と1970年以降のD.O.C.規定による品質管理・規制により、小作農の労働集約的な作業に依拠していたゴヴェルノは廃れ[10]、それとともにカナイオーロの重要性も薄れ、栽培の減少に拍車をかけた[1]
ブドウ栽培

カナイオーロの果房は中程度の大きさで、太めの円錐形をしており、岐肩がある。果粒の着生はやや疎着で、中程度からやや大きめの円形の粒をしている[7]。成熟期は中期で、発芽はサンジョヴェーゼよりも遅いが完熟するのは通常サンジョヴェーゼよりも早く、9月後半から10月上旬に収穫期を迎える[5]

ウイルスに強いブドウ樹の種苗がなく、生育の難しい品種であり、収量も安定しない。また、樹勢は特に強くはないが、果房数を抑制しないとワインの色味が浅くなりがちである[5]。高品質のクローンを選別する研究は行なわれているものの、目立った成果は上がっていない[5][1]

19世紀末にフィロキセラが蔓延し、ブドウ樹に大打撃を与えた際、新しい北米種ブドウ樹の台木に旧来のブドウ樹の穂木を接ぎ木するという解決策がとられたが(19世紀フランスのフィロキセラ禍)、(フランスのカオールにおけるマルベックと同じく)カナイオーロの接ぎ木は困難であるという問題が浮上し、人気低下の一因となった[5]
突然変異体・他品種との関係

カナイオーロ・ローザ (Canaiolo Rosa) はカナイオーロ・ネロの突然変異体である。正確な起源は不明だが、トスカーナ州のモンテカルロルッカ県東南部)かリニャーノ・スッラルノ(フィレンツェ近郊)が原産地ではないかと考えられている[11]。現在はルッカ県とフィレンツェ県でカナイオーロ・ネロと混植されていることが多く、通常は同種と混醸される[12]

ラツィオ州北部のヴィテルボ県にみられるカナイオーラ (Cannaiola) は、カナイオーロ・ネロと同一の遺伝因子型をもつバイオタイプ(生物型)であるが、発芽期や収穫期、樹勢など栽培上の違いのほか、葉の色・果粒の着生疎密度など形態上の違いもある[13]。丘上の水はけがよく日射量の多い砂質土壌の傾斜地が最適のテロワールであり、条件が揃えばカナイオーロ・ネロよりも高い糖度とポリフェノール含有量を蓄えられることが判明している[13]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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