カタストロフ
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カタストロフィー理論(カタストロフィーりろん、カタストロフ理論、: catastrophe theory)は、力学系分岐理論の一種を扱う理論。

不連続な現象を説明する、画期的な理論として一時注目を浴び、盛んに研究、議論された。

カタストロフィーとは周期的な秩序だった現象の中から不意に発生する無秩序な現象の総称。

ルネ・トムの『構造安定性と形態形成』[1]により提唱された。
目次

1 ルネ・トムの提唱した7つのカタストロフの種類

1.1 折り目・カタストロフ(Fold catastrophe)

1.2 カスプ・カタストロフ(Cusp catastrophe)

1.3 ツバメの尾・カタストロフ(swallowtail catastrophe)

1.4 蝶・カタストロフ(butterfly catastrophe)

1.5 双曲的臍・カタストロフ(Hyperbolic umbilic catastrophe)

1.6 楕円的臍・カタストロフ(Elliptic umbilic catastrophe)

1.7 放物的臍・カタストロフ(Parabolic umbilic catastrophe)


2 脚注

3 関連項目

ルネ・トムの提唱した7つのカタストロフの種類
折り目・カタストロフ(Fold catastrophe) 安定と不安定な極値のペアは、折り目分岐で消滅する V = x 3 + a x {\displaystyle V=x^{3}+ax\,}

aが負の値をとるとき潜在的に2つの極値があり、1つは安定であるがもう1つは不安定である。パラメータaをゆっくりと増加させていくと、系は安定した最小の点に追従することができる。しかしa = 0では安定の極値と不安定の極値が一緒になり消滅する。ここが分岐点である。a > 0では安定する解は存在しない。物理的な系が折り目分岐を追従した場合、aが0に達するとa < 0での解の安定性が突如失われ、系が新しく全く異なる挙動に突然移り変わることがわかる。パラメータaのこの分岐値は「ティッピングポイント」と呼ばれることもある。
カスプ・カタストロフ(Cusp catastrophe) V = x 4 + a x 2 + b x {\displaystyle V=x^{4}+ax^{2}+bx\,}

カスプ・カタストロフの図。パラメータaのいくつかの値に対し連続的に変化するパラメータbについて描かれたパラメータ(a,b)で、dV/dx = 0を満たすxの曲線(茶、赤)を示している。分岐点のカスプ軌跡(青)の外側ではパラメータ空間内の各点(a,b)に対してxの極値が1つしかない。カスプの内部では各(a,b)についてV(x)の極小値を与える2つの異なるxの値があり、極大値を与えるxの値で分けられる。
カタストロフ点近くのパラメータ空間(a,b)におけるカスプの形。1領域から2つの安定した解を分ける折り目分岐の軌跡を示す。 表面b = 0におけるa = 0のときのピッチフォーク分岐

カスプ幾何学は、第2のパラメータbが制御空間に追加された場合に折り目分岐に何が起こるかを探る上で非常に一般的なものである。パラメータを変えると安定性が失われた(a,b)空間に点の「曲線」(青色)が現れ、安定解が突如別の結果にジャンプすることがわかる。

しかしカスプ幾何学では分岐曲線はそれ自体でループし、代替解自体が安定性を失っている第2の分岐を与えることで元の解集合に戻る。bを繰り返し増加させその後に減少させることで系が交互に1つの解に追従し、もう1つにジャンプし、そこでの解に追従し、最初の方にジャンプするというヒステリシスループを観測することができる。

但しこれはパラメータ空間a < 0の領域においてのみ可能である。aが大きくなるとヒステリシスループは小さくなり、aが0以上になると完全に消滅し(カスプ・カタストロフ)1つの安定解しかなくなる。

bを一定にしaを変えたときに何が起こるかを考えることもできる。b = 0の対称的な場合、aが小さくなるとピッチフォーク分岐が観測され、物理系がカスプ点(0,0)を通りa < 0になると1つの安定解が突如2つの安定解と1つの不安定解に分割される(自発的対称性の破れの例)。カスプ点から離れると物理的な解に突然の変化はない。折り目分岐のカーブを通過するときに起こるのは、代わりの2番目の解が得られることだけである。

提案された有名なものとしてカスプ・カタストロフがストレスを受け、おびえたり怒ったりすることで応答する可能性のある犬の行動をモデル化するために使用できるということがある[2]。この提案は適度なストレスでは(a > 0)、犬はどのように刺激されるかに依存しておびえから怒りという滑らかな反応の移行を示すというものであり、しかし高いストレスレベルは領域移動に対応し(a < 0)、このとき犬がおびえると「折り目」点に達するまではこれ以上いらいらしてもおびえたままであり、そこに達すると突如不連続的に怒りモードに突入する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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