カスパーゼ
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カスパーゼ(Caspase)とは、細胞アポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、一群のシステインプロテアーゼである。システインプロテアーゼは活性部位にシステイン残基をもつタンパク質分解酵素であり、カスパーゼは基質となるタンパク質アスパラギン酸残基の後ろを切断する。Caspaseという名はCysteine Aspartate-specific Proteaseを略したものであり、アスパラギン酸特異的システインプロテアーゼとも呼ばれる。

カスパーゼは他のカスパーゼを切断し活性化するというカスケード(連鎖的増幅反応)の形で機能する。またある種のカスパーゼはサイトカインインターロイキン-1β)の活性化を通して免疫系の調節にも関与している。アポトーシスは正常な発生のほか、がんアルツハイマー病などの疾病にも関係があることから、1990年代半ばに見出されて以来、治療のターゲットにもなりうるものとして注目されている。
発見、機能.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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出典検索?: "カスパーゼ" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2022年9月)

カスパーゼがアポトーシスやプログラム細胞死に重要であることは、線虫 C.elegans の発生過程で起こる細胞死にced-3 遺伝子が必要であることを発見したロバート・ホロビッツらによって初めて確認された。ホロビッツらは1993年に、ced-3 遺伝子にコードされるタンパク質が、哺乳類のインターロイキン-1-β転換酵素(ICE、現在はカスパーゼ-1とも呼ばれる)に似た性質をもつシステインプロテアーゼであることを見出した。続いて哺乳類や他の動物(ショウジョウバエなど)でも他の種類のカスパーゼが見つかった。同じ分子に別の研究者が別の名を付けることが多くなったため、この分野の研究者が1996年にカスパーゼの命名法を決定した。カスパーゼは発見順に番号が付けられ、最初に発見されたICEはカスパーゼ-1となった。しかし線虫でアポトーシスに関わるced-3 遺伝子に似ているのに、ICEの主機能はアポトーシスでなく炎症の誘導とされている。
構造と分類カスパーゼの構造と分類
黒い矢印(↓)は活性化によって切断される部位。p20の右端近くの黄色い丸は活性中心のシステイン残基。括弧書きで示したカスパーゼ-11と12はヒトではまだ見つかっていない。

カスパーゼは、線虫から哺乳動物にいたる多細胞動物に存在するタンパク質である。哺乳動物ではカスパーゼ-1からカスパーゼ-14までの14種類が見つかっており、これらはカスパーゼファミリーと総称される。このうちカスパーゼ-11と12はマウスのみで発見され、カスパーゼ-13はウシでのみ見つかっている[1]

大部分のカスパーゼはアポトーシスの誘導に関与しており、これらはアポトーシスの誘導の比較的初期に関わるイニシエーター・カスパーゼと、アポトーシスの実行そのものに関わるエフェクター・カスパーゼの2つのタイプに大別される。イニシエーター・カスパーゼには、カスパーゼ-8-9などが該当し、アポトーシスのシグナル伝達経路の上流からの開始シグナルを受け取って活性化され、不活性型のエフェクター・カスパーゼを活性化する役割を持つ。エフェクター・カスパーゼには、カスパーゼ-3、-7などが該当し、イニシエーター・カスパーゼなどによって活性化され、細胞内の他のタンパク質を分解してアポトーシスを起こさせる。また、カスパーゼ-1、-4はむしろサイトカインの活性化を通じて炎症誘導に働くのが主な役割だと考えられている。

カスパーゼ-14は、皮膚の保湿に重要な役割を果たすフィラグリンを幾つかのペプチド(タンパク質断片)に分解し[2]角質細胞ではセラミドによって発現が刺激される[3]。カスパーゼ-14は、炎症性サイトカインによってmRNAが減少する。アトピー性皮膚炎や乾癬、接触性皮膚炎では発現が減少している[4]。カスパーゼ-11は、グラム陰性細菌に対してTRIF経路を介して活性化され、NLRP3と共同してカスパーゼ-1の調節とカスパーゼ-1依存細胞死(pyroptosis)に関与する[5]。また、レジオネラ属レジオネラ(Legionlla pneumophila)がいる食胞に限ってリソソームとの融合を促進し、感染防御に働く[6]。カスパーゼ-11のヒトでのホモログ、カスパーゼ-5も同様の働きをする。

カスパーゼファミリーは、分子量約30,000?60,000程度のタンパク質である。これらはいずれも、細胞内では、まず酵素活性を持たない不活性型の前駆体(プロカスパーゼ)として合成され、その後、他のプロテアーゼの働きによって切断される。すなわち翻訳後修飾を受けているタンパク質である。この切断部位はいずれのカスパーゼにも2箇所存在しており、この部位を境として、N端側から、プロドメイン、p20、p10、と呼ばれる3つの領域に分けられる。このうち、p20とp10がカスパーゼのタンパク分解酵素活性を担っており、これらが切断された後で2個ずつ会合したもの(ヘテロ四量体)が、活性型のカスパーゼとして働く。


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