カキノミタケ
分類
カキノミタケ(柿之実茸、Penicilliopsis clavariiformis Solms-Laubach)は、ユーロチウム目マユハキタケ科カキノミタケ属に属する子嚢菌類のキノコの一種である。 子実体は分生子束
形態
無性世代(アナモルフ)
分生子束の主幹は、淡黄色で比較的太い無性菌糸の束からなり、その表面に分生子柄が密生する。分生子柄は長さ400μm程度、ときに短い枝を生じて二叉または三叉分岐し、菌糸は無色または淡黄褐色、少数の隔壁を有し、先端は僅かに膨らんで4-6本のメトレを形成する。メトレは比較的短く、僅かに樽状に膨らみ、その頂端に4-8本ずつフィアライドを着ける。フィアライドは上方に向かって細まったアンプル状をなし、先端から次々と分生子を押し出し、もつれ合った数珠状の分生子の連鎖を作る。分生子は楕円形から卵形または西洋ナシ形、厚壁で表面はほとんど平滑、かすかに黄色みを帯び、油滴などを含まない。 子実体は一種の子座 夏から初秋にかけて、地上に落ちたカキ属(カキ・リュウキュウマメガキなど)の種子に生じることが多く、子実体が形成されていないカキの種子を分離源として培地上に接種するとしばしば分離される。土壌から分離される場合もある[1]。また、ホンドタヌキの糞の中に排泄されたカキの種子の上で無性世代の子実体が形成された例が、数多く見出されている[2]。 種子(胚乳)に含まれるマンナン
有性世代(テレオモルフ)
生態
コンニャクの塊茎を乾燥・粉砕したこんにゃく粉(マンナンを多量に含む)を用いて培養することも可能である。実験室内ではバレイショ・ブドウ糖寒天培地上でもよく生育し、旺盛に分生子を形成するが、完全世代を作ることはなく、また37℃では生育が止まる[4] 。なお、二次代謝産物として、ペニシリオプシン(Penicilliopsin)と呼ばれる黄色色素を産生することが知られている[5]。 原産地 カキノミタケ属の日本産種は本種一種のみであり、他に類似するきのこはなく、カキの種子上に発生する点で容易に同定することができる。同属のペニキリオプシス=プセウドコルディケプス(和名なし)Penicilliopsis pseudocordyceps H. M. Hsieh & Y. M. Ju は台湾から記録された菌であるが、子嚢胞子がはるかに大きく、有性世代の子実体は柄を欠くことで区別されている[9]。
分布
類似種
脚注^ 大谷義雄・伊藤誠哉、1988.『日本菌類誌第3巻子のう菌類,第2号ホネタケ目・ユーロチウム目・ハチノスカビ目・ミクロアスクス目・オフィオストマキン目・ツチダンゴキン 目・ウドンコキン目』.養賢堂、1988年.ISBN 4-8425-8815-2.
^ 横山元、2002.タヌキが生やしたカキノミタケ.千葉菌類談話会会報 19:15-16.
^ 小林義雄、好マンナン菌. 『菌類の世界(講談社ブルーバックス B-270)』、194-198ページ.講談社.ISBN 978-4061178700
^ 宇田川俊一、1978.Penicilliopsis clavariaeformis Solms-Laubach.(宇田川俊一・椿啓介・堀江義一・三浦宏一郎・箕浦久兵衛・山崎幹夫・横山竜夫・渡辺昌平、1978.『菌類図鑑(上)』、417-418ページ
^ Shibata, S., Shoji, J., Ohta, A., and M. Watanabe, 1957. Metabolic products of fungi ]T. Some observation on the occurrence of Skyrin and Rugulosin in mold metabolites, with a reference to structural relationship between Penicilliopsin and Skyrin. Pharmaceutical Bulletin 5 (4):380-382.
^ Udagawa, S., and M. Takada, 1971. Mycological reports from New Guinea and Solomon Islands 10. Soil and coprophilous microfungi. Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo, 14: 501-515.
^ 今関六也・本郷次雄(編著)、1989.『原色日本新菌類図鑑 U』.ISBN 4586300760