この項目では、航空機やオートバイなどのパーツについて説明しています。不動産サービスのカウルについては「ハウスマート」をご覧ください。
カウル(英: cowl)は、航空機やオートバイなどで走行風を整流するために、エンジンや車体を覆う部品、あるいは構造である。カウリング(英: cowling)やフェアリング(英: fairing)とも呼ばれる[1]。
航空機ラングレー記念航空研究所でNACAカウルを装備したカーチス AT-5A[2]零式艦上戦闘機のカウル
レシプロエンジン搭載の飛行機において、エンジンを覆うカバーをエンジンカウル(英: engine cowl)や、カウリング(英: cowling)、カウルなどと呼ぶ。大型ジェット機など、主翼の下にジェットエンジンを吊り下げる機体では「エンジンナセル(英: engine nacelle)や「エンジンポッド(英: engine pod)」と呼ばれる。フェアリングと言う場合には、エンジンだけでなく脚(きゃく)などの整形覆いも含まれる。
まだ複葉機が主流であった時代、飛行機の速度が低かったころはエンジン本体は剥き出しであったが、第一次世界大戦後の1920 - 30年代から空気抵抗(抗力)を低減する方策の1つとしてエンジンが覆われるようになった。他の方策としては、機体全体を流線形で設計、主翼を単葉にする、引き込み式の降着装置や操縦席の風防(ウィンド・シールド)の採用などがある。
空冷エンジンを搭載した機種では、空気抵抗低減のほかにエンジンを冷却する空気の流れを整えて冷却効果を向上させる目的もあり、流路の出口に設けられる可動式の板を開閉することで冷却空気の流量を調整できるカウルフラップ(英: cowl flap)と呼ばれる機構を備える機種もある。 NACAカウルは国家航空宇宙諮問委員会 (NACA。のちのNASA) によって1927年に開発され、星型エンジンを搭載した航空機で使用されたカウルの一種である[3]。空気抵抗の低減に伴う燃費向上により、開発や導入にかかる費用に対してより多くの利益がもたらされた[4]。NACAカウルが開発される以前から、当時主流であったロータリーエンジンに流体力学等のカウルが取り付けられることがあった。ロータリーエンジンではカウル内でシリンダーが回転するため問題とはならなかったものの、それらは流体力学等の科学的根拠のないものであった。[3]。1920年代に入るとシリンダーが固定された星形エンジンが普及して冷却の問題が浮上し、冷却性能と空気抵抗の低減を両立した実用的なカウルの開発が求められた[3]。実験機のカーチス・ホーク
NACAカウル
オートバイハーフカウル(ホンダ・CB1300 SUPER BOL D'OR)フルカウル(スズキ・GSX-R1000)ビキニカウル(カワサキ・ZRX1200 DAEG)
空気抵抗を減らし、乗員を走行風から保護する目的で、車体や乗員を覆う風防を指す。主に合成樹脂で作られており、視界を確保する部分はウインドシールド(英: wind shield)やウィンドスクリーン(英: wind screen)と呼ばれ、透明な材料が用いられている。適切に設計されたカウルは高速走行時にダウンフォースを発生し、走行安定性を高める効果がある。ロードレース用のオートバイやこれを模したスーパースポーツに分類される車種、ツーリング向けのツアラーに分類される車種で装備される例が多い。これに対し、カウルを装備していないオートバイを、ネイキッドという。
一般向けの量産市販車で最初にフルカウルを装備したのは1976年のBMW・R100RSであった[7]。日本製の車種では1970年代末に、輸出向けの一部でビキニカウルと呼ばれる小型のカウルを装備された[7]。1980年代からはツアラーとして快適性を重視した大柄なカウルを装備する車種が増え、1982年にはホンダ・CB1100Rがロードレース用のイメージを持つカウルを装備して登場した[7]。一方、日本国内向けでは型式認定を得るのが難しく、1982年のホンダ・VT250Fまで導入されることがなかった[7]。認可が下りなかった理由としては、空力的な付加物は暴走行為を助長しかねないという観点が影響したともみられている[7]。VT250Fに装備されたのは「メーターバイザー」と名付けられた小さな風防であったが、これをきっかけとして1983年にはスズキ・RG250Γがロードレース風のハーフカウルを装備、翌年には同車がフルカウルを装備して、日本内外の市場にカウルを装備した車種が短期間で増えた[7]。
カウルを分類して、次のように呼びわける場合がある。